楽園(2019)のレビュー・感想・評価
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やっと本物の映画を観られた
期待していたが期待以上だった。心抉られると宣伝しているが、そんなキャッチーな言葉はいらない程良かった。タイトルでも書いた通りやっと本物の映画を観られたという気持ちが強い。他の作品に対する評価を変えたくなる程全てにおいて圧倒的に素晴らしかった。誰にいつ起こってもおかしくない話で考えさせられた。映画に答えを求める作品ではなく自分で答えを出す作品。それこそが日常に溢れた問題に対しての光明になる事を期待した作品だろう。明るい作品ではないが劇場を後にする時、暗い気持ちのままという程ではなかったので、他人に勧められる作品だった。
追記
元々もう一度観に行こうと思っていたが、現役東大院生芸人さんの映画楽園YouTube解説動画を見て見落としがあった事に気づいたのでそこに注目して観てこようと思った。
配役は良い、脚本はもうひとひねり
原作は未読。他の吉田修一原作の映画も「悪人」「怒り」の二作しか観たことがありません。しかし、そのダークでディープな人間模様を描きながらもほのかに切ないテイストが両作とも好きで、監督が違うとはいえ、今作も楽しみにしていました。
しかし、観終えてみて、ストーリーを理解するのがやや難解に感じた。というのも、各登場人物の心情の掘り下げ方がやや曖昧・抽象的で、「この時このキャラクターはこう感じている」とはっきり表現しているような描写は少ない。ストーリーを深く理解するには、キャラクターのセリフのみならず、表情や演出、あらすじ全体像から自分でイメージすることが要求されるのではないか、というハードルを感じた。もちろん、原作を読めばはっきりわかる部分もおそらく多いものと思われます。
ただ、キャスティングは素晴らしい。イケメンキャラな印象が強い綾野剛は、情緒不安定な在日外国人というなかなかイメージが難しそうな役でもハマっていて、不器用さ、暗鬱さといったものが内から滲み出るようであったし、彼の母親役の黒澤あすかのやや狂気をはらんだような演技も相変わらず圧巻、佐藤浩市はさすがベテランの味が出ていてもはやどんな役でも安定して馴染んでいますね。
役者の素晴らしい演技によって、個人的にはもう一歩工夫が欲しいと思ったストーリー構成が何割増も魅力的なものに昇華されているのは間違いないと思いました。
楽園とは
吉田修一さんのファンで、映像化されたものは全て見てきましたが、今までで一番心えぐられたように思います。綾野さんがインタビュー等で何度も託す、という言い方をされていた意味がよく分かりました。
綾野さん、浩一さんはもちろんのこと杉咲花さんの演技がとても素晴らしかったです。彼女の目の演技、圧巻でした。同世代敵なしなのでは…。重いテーマでの彼女の演技をもっと見てみたいと思いました。瀬々監督、素晴らしい逸材を教えてくださりありがとうございました。
それぞれの楽園
澄み渡る青空の下、緑生い茂る田園風景
そこにただ雑然とあるY字路、まるで人生の岐路の選択を迫る様に、いつまでも変わらずにそこにある。その存在感は何かとても大きなものを感じる。
この作品は1度観ただけでは、ちょっと理解できないと思う。1つの事件がきっかけになって、いろいろなことが絡み合い、それぞれの人達に心の変化だったり、人間のいい部分と、悪い部分を両方見せつけられる。2つの接点のない原作が不思議なことに1つの作品に仕上がる。そこにあるテーマは同じで…
さすが瀬々監督の手腕は素晴らしいと思った。
村や集落、現代で言えば学校、会社なども同じで集団心理の恐ろしさもまじまじと感じた。
最初はウエルカムムード全開だったのに、ちょっとしたことで次の日から急に村八分だったり、弱者に全て罪をなすりつけて、追い詰めるといういじめと同じ構図。
そんな中で楽園とは?となる。私はこの作品で感じた『楽園』は、自分が生きやすい場所、居心地がいい場所なのかなと思う。楽園を見つけられた人、作れた人、なかった人、これから見つける人、この作品にも人生においても、同じなのではないかと思います。
豪士にとっての楽園は、愛華ちゃん、紡に出会ったことによって、自分が生きていること、存在を認めてもらえた、それこそが彼の『楽園』だったんではないでしょうか。
役者陣皆さん、迫真の演技で素晴らしかったのですが、なかでも綾野さん、佐藤さんの追い詰められ、絶望で張り裂けそうな状態で死を覚悟するという演技、言葉にならなかったです。
ぜひ、理解できるまで何回もご覧になって頂きたいです。
二つの物語の対比
ファーストシーンの、美しく揃いすぎている水田から引き込まれました。(俯瞰の空撮から始まる映画が好きなので嬉しい)
てっきりY字路の物語だと思っていたので、途中から善次郎が出てきて、なんだかテーマが分散したイメージでしたが、
エンドロールを見たら、二つの短編の映画化だったのですね。失礼しました。σ^_^;
それを踏まえて見たほうが良いかもしれません。
あえて二つの短編を絡めたことで浮かび上がるのは、閉ざされたコミュニティ。
人々の距離が近くて、皆んなが知り合い。
そんな中で起きた未解決の事件は、誰だか得体の知れない者が村に入り込んだという恐怖で、村人達を疑心暗鬼にしてゆく…
村の顔役達は、面倒見が良くて頼れる存在だが、誰も彼らには逆らえない…
暴走してゆく村人達には集団の狂気を感じますが、
自然豊かな農村に限らず、都会でも学校や職場という閉ざされた社会の中では同じ事が起きているのではないでしょうか?
息苦しさから、若者たちが外へ出て行ってしまうのも分かる気がするし、一度狂った歯車から逃れられずに自滅してしまうよりは、新たな世界で一歩を踏み出す方が良い時もある。
ただ、私も故郷から離れた人間なので、すごく久子のセリフに共感出来るのですが
若い頃は嫌っていた筈の街並みが、気づくと自分の大切な場所になっていたりする。
それだけ歳を取ったという事なのでしょうが、故郷とはまったく厄介な場所です。
綾野剛が難しい役どころを演じきっていて、見応えがありました。
柄本明の村の世話役っぷりがイイ。
揉め事の仲裁も慣れたもんで、普段は何でも任せて安心な親分肌だろうに…
大人気なく紡を責め立てる言葉には、やり場のない怒りと悲しみを感じました。
ご本人には不本意かもしれませんが、根岸季衣さんとの夫婦のシーンが角替和枝さんとダブって、小さな呟きに胸が締めつけられました。
実は今まで、佐藤浩市さんの熱い演技が苦手だったのですが、今回は枯れた感じが相まってとても良かったです(T_T)
体を張った熱い演技に釘付けでした。
『楽園』はどこかにあるものではなく、自分で作るもの。
辛いながらもこれから楽園を作っていく者と、楽園に囚われた者の対比となっていて、この二作の短編をまとめた意味がわかった気がしました。
李監督が良かった
編集、カット割りを決めるのは監督だけど、
役者の芝居を引き出すのも監督。
よかったけど、
何故か生温かった。
犯罪を犯した人を肯定しているようにも見えた。
人の芝居も、背景も何故か薄く感じてしまった。
小説を読む。レビューも読む。
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