「ナイチンゲールとブラックバード」ナイチンゲール kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ナイチンゲールとブラックバード
海岸の馬の構図は非常に良かった。『ライド・ライク・ア・ガール』とか暴れん坊将軍とか・・・心が洗われるようで、やっぱり素敵だ。しかし本編は殺伐として陰惨。冒頭のクレアの歌声からの将校個室でのレイプとか、落差がありすぎなのです。
アボリジニの虐殺シーンだとか、イギリス人の蛮行が酷い。植民地にするとなったら、とにかく先住民を殺さなければならないのか?アメリカでも同じだけど、帝国主義の本質をいやというほど見せつけてくれた。主人公クレアがアイルランド人であることも、イングランドではないという誇り高さを感じられ、19世紀の世界の縮図をも訴えてきていた。
とにかく軍人とはこんなもの。従来の文化を打ち壊して、自らの文化を植え付ける。そんなイギリス軍の将校に復讐しようとアボリジニのビリーに道案内を依頼し、中尉たち一行を追跡する物語。
しかし単純な復讐モノとは違い、ビリーも仲間を殺され家族がいなくなってしまい、彼の方が復讐欲が大きくなってしまったのです。クレアは自分の幼子を殺した男を殺害し、人を殺すことの重さを知ったように思え、最大の復讐相手に出会ったときに躊躇してしまう。この内なる葛藤は見えないものの、充分に伝わってきました。もうビリーと一緒に楽しく暮らせればいいやん!しかし運命はビリーの決断に委ねられる。う、ビリー・・・
ナイチンゲールという鳥もいるし、ブラックバード(黒人の意味もある)を名乗るビリーもかっこいいし、何しろ水先案内人になってくれるクロウタドリのシーンがとても良かった。鳴くのは真夜中だけじゃないんですね。All your life into the light of a dark black night