劇場公開日 2019年11月1日

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「☆☆☆★★ 原作は、平成に突如生まれた『君の名は』(アニメ版の話で...」マチネの終わりに 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0☆☆☆★★ 原作は、平成に突如生まれた『君の名は』(アニメ版の話で...

2019年11月4日
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☆☆☆★★

原作は、平成に突如生まれた『君の名は』(アニメ版の話では無い)と言っても良いくらいのすれ違う男女の話。
ストーリーの骨格はほぼ原作通りだが。多くの部分で変更されている。

が…。

それより何より。とにかくこの原作は一筋縄では行かないくらいに、話の内容自体は単なる三文恋愛物語でありながら。純文学と呼ぶに相応しい程。主人公の2人が思い、感じながら進んで行く行動等を、実に高尚に描かれている。
それだけに。読んでいて、これ程までに苦しみながら読んだ本は本当に久しぶりだった。
よっぽど、始めの方で投げだそうか…と思った程。
それだけに、読後の充実感もまたかなり高かったのだが。
とは言え。これがもしも、ノベライズ版として書かれたとしたら。おそらく100頁行くかどうかだろうなあ〜…等と💧

原作だと。2人のすれ違いに関して関わり合う早苗。彼女の存在は、原作のほぼ半分にあたる場面まではほぼ空気でしか無いのだが。映画では登場した瞬間から、その存在感を見せ付ける。
女としての嫉妬を、洋子に対して露わにし。原作だと、ニューヨークで2回行われるコンサートの最初の時。チケットを買った洋子に対して「帰って下さい」…と言い放つのだが、映画では真逆の発言。

設定の違いは他にもあり。原作でのパリでの夜会はマドリードに。イラクでのテロで死にかけた洋子は、常にPTSDを抱えて生きているのだが。映画で受けるテロはパリへと変え、イラクでコーディネートだったジャリーラは、亡命しパリに来るが、映画では洋子の同僚に。その為か。何かと洋子とジャリーラの世話をするフィリップは、登場したと同時に………。
そんなフィリップ同様に。原作には多くの人物が、2人と(主に仕事上で)関わり合うのだが。レコード会社の是永を筆頭に、原作だと直ぐに居なくなる人物も。おそらく観客側が混乱しない為か?最小限の登場に留めていたので。原作を読まなかった人には分かりやすい人間相関図になっていたと思った。

「未来は過去を変えられる」

それは、映画の後半部分で効果的に使われていた言葉。
これは原作だとどの辺りで使われていたんだっけ?
とにかく読み込むのがしんどい原作だっただけに。ちょっと確かめるのも正直言って辛い💧
ひょっとして、洋子の父親が製作した芸術映画が発端だっただろうか?
主人公は天才と異名を持つギタリストであり。洋子は世界的に著名な映画監督を父に持つ。
それだけに、2人はメールやスカイプ等を通じての芸術論を繰り返しては議論する。そこで2人が話し合ったのが『ベニスに死す』症候群。

アーティストとジャーナリスト。
お互いに違う道を進んではいるが、(待っている)人に伝えるのは同じ事。
そんな2人だからこそ、共に感じる将来への不安と焦り。過去への悔恨を、圧倒的な筆力で描き切った原作。
原作では洋子は、最後に映画監督である父親と会い。芸術作品である『幸福の硬貨』を製作するまでの真相を知る。
本編ではそれを、(やはり登場人物を少なくする為か?)母親から教えられる。

芸術を産み出す為に費やされる労力や苦悩。
ジャンルは違えども、本人の口から出る言葉の重みによる説得力。
だからこそ、原作を読み切った後の読後感に「読み切った!」とゆう充実感を味わえた。
(しっかりと理解していたかは怪しいのだけれど💧)
映画版では、その辺りでは芸術的な描き方は一切せずに。福山雅治と石田ゆり子。「この2人のカップルの行方をじっくりと見て下さい」…とばかりに。
(10代向けのコミック版恋愛映画が多く製作される日本映画界の現状に対して)
大人同士の恋愛物語を描く事で。なかなか映画館に足が向かなくなった世代の鑑賞に、耐えられる作品を意識して製作しているのは間違いなく。
その辺りのコンセプトは成功しているとは思えた。
但し、その分かりやすさゆえに。映画として深みには欠けている気がするのは、若干だが致し方ないところだろうか。
それに関しては、シジミのペット話を全部描いたとしても難しかったかもね(´ω`)

2019年11月3日 TOHOシネマズ府中/スクリーン5

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松井の天井直撃ホームラン