凪待ちのレビュー・感想・評価
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香取慎吾の隠された魅力
とにかく香取慎吾をこの役に起用し、彼の隠された魅力を引き出したことがこの映画最大の功績であり、魅力の核だろう。ギャンブル依存症で良いところは一つもないような男だが、見捨てることのできない人としての魅力を放っている。こういう駄目人間って確かにいるよなというリアリティを強く感じさせる、大変説得力ある芝居をしている。
人生をやり直すために引っ越した石巻で、悲劇に巻き込まれ、同調圧力の強い田舎町に馴染めず、殺人犯だと噂される。強くありたいと願うのに、強くなれない、環境のせいにしていつでも言い訳を考えてしまっている。震災から復興のためにがんばっている東北の町と人生に絶望した男の喪失感が重なるようで対比的だ。失われたものは帰ってこない、それでも前を向く町と、喪失感から逃れられず前を向くことができない男。映画はほんの少し、男の再生の可能性を見せて終わる。人はだれもそんな強くない、それを認めることが強くなる第一歩なんだと思う。
香取慎吾の挑む姿勢は○ リリーフランキーの起用法は△
暴力やエロスでエッジを利かせた映画を撮り続けてきた白石和彌監督にしては、かなり抑えた演出が印象的。去年、今年と劇場公開作を3本ずつ作っている超売れっ子監督だが、原作ありきではない映画で本当にやりたいことを追求した結果のように思える。
本作の香取慎吾、「半世界」の稲垣吾郎もそうだが、元SMAPの彼らはいわゆるガテン系のキャラクターに扮することで、セルフイメージを壊して演技の幅を広げようとしている。白石監督と香取それぞれの新境地を志向して挑戦する姿勢が合致し、意欲的な社会派ドラマと相成った。
リリーフランキーと白石映画とくればもちろん「凶悪」での怪演が思い出されるが、本作での起用は果たして正解だったのか。観客にある種の先入観を与えてしまうし、人物の内面描写も物足りない。
「ろくでなし」という言葉の意味を、しみじみと考えさせられた。
白石和彌、あるいはその優しさについて
良い映画だったと思うけど、白石監督作品の中ではマイルドで、良く言えば「優しい」、悪く言えば「パンチが弱い」ように感じた。
白石作品と言えば季節関係なくダラダラ汗が流れ出るような、喉が干からびるようなヒリつきを覚えるような、濃ゆ~い画面圧力に翻弄される映画(個人の感想です)。
「凶悪」「ひとよ」「孤狼の血」「世界で一番悪い奴ら」と観てきて(観た順)、きっと監督は「孤狼の血」のガミさんみたいな感じに違いないと思っていた。
「映画撮るけぇ、気合い入れんかい!」とか言って、どこで売ってるのかも不明な謎柄のジャケットとか着て、咥え煙草で、サングラスで、助監督が直立不動で立ってて、みたいな。
オファーを受ける俳優さん達もどうやらそう思うらしく、「凶悪」とかの白石作品を事前に観て「やべぇオファー受けちゃったよ!」とビビるらしいが、出てきたご本人はなんかシャレオツで優しそうなおっさんらしい。
マジか、と思って検索すると確かに清潔感と知的な印象のある、帽子の似合うおしゃれなおっさんであった。マジか。
検索した時に読んだインタビューからも、「野性味溢れる男気」というよりは「思慮深く一本筋の通った男気」みたいな印象を受けた。
何よりも、テーマと一人の人間を掘り下げる行為に、妥協のない作り手としての本気を感じる監督だな、と思う。
作品の骨太さからは想像もつかない繊細さ。慎重で緻密なテーマ設定と作品作り。
白石監督のこの面が色濃く出たのが今作「凪待ち」なんだな、と納得した。
確かに香取慎吾演じる主人公・郁男はしょーもない男ですよ。表面だけ見たらギャンブル狂いでヒモで、朴訥なのに気が短い。身体がデカいから物理的に恐怖を感じるしね。
ダメな男がダメなりに何とか生きてるんだけど、ダメになってる理由があるからダメなのであって、助けてもらっても絶望しても、急にビシッとマトモにはなれないよね。
簡単には前向きにならない(なれない)、急に真面目にはならない(なれない)、でもダメなヤツだって傷ついて、悔しくて、どーしよーもない自分を嫌ったり嘆いたりしている。
人間は完璧な存在じゃないから、ダメな部分に共感して好きになる、ってこともある。ダメなところがあるから、安心できることもある。
「悪い」とされていることも、見方や考え方を変えれば「良い」影響だってある。
そして一回とことんまでダメになった後、ゆっくりと自分のペースで立ち上がって行く。
それを出来る限り真摯に、慎重に、虚実織り混ぜて伝えようとする姿勢は、白石監督の作品の根底に必ず流れている。
まあ、最初にも書いたけど、「凪待ち」は緻密で優しい映画で、良い映画なんだけど。でも思ってたより優しすぎて、何だか肩透かしを食らった印象はある。
そして何より、もっとヒリつくような映画が観たい!という私の好みとちょっとすれ違ったかなぁ。
鬱屈感満載
胸ぐらを掴まれるような面白さ
完璧なストーリー
主演の香取慎吾さんは、序盤心優しい何処にでもいそうな男を演じる。ただ少しだけギャンブルが好きな普通の男が、話が進むにつれ奈落の底の底まで落ちていき…という展開。物語の合間合間には誰かしらから救いの手が差し伸べられ、立ち直るチャンスは幾度かあるのだが、本人の心の弱さからか負のスパイラルはとどまる事なく更に加速していく。次第に自暴自棄になり心身共ボロボロになっていく主人公の姿は、観ている側からしても非常に耐えがたく痛みすら感じるほどだった。中盤からうっすらと事件の真相が見え始めるのだが、気持ちの上では「頼むから、そうならないでくれ!」と祈り始めていた。しかし物語は否応なく最悪の事態へと進んでいくと同時に、完成形に近づいていく。実に見事な展開。
主役の香取さんはもちろん、全ての演者さんが完璧に役割を果たされていて、本当に素晴らしかった。私の中で印象に残ったのは、武藤十夢さん。リアルなギャンブル中毒者の様が凄かった。あと西田尚美さん。娘が行方不明になった時の切羽詰まった母親の、剥き出しの感情がひしひし、ビシビシと伝わってきた。
これほどまでに圧倒された作品はそうそうなかったと思います。白石監督とキャストの皆様スタッフの皆様に感謝申します。ありがとうございました。
ゴッソリとえぐられた気分
再生の物語。
石巻の海は穏やかでまるで湖面のように波一つ立ってない。その海の底には震災の記憶が今も残る。ピアノやタンス、自転車、様々な生活用品が静かに眠っている。人々の暮らしが確かにそこにはあった。
津波がすべてを駄目にしてしまったという郁男の言葉に、亜弓の父勝美は海が新しく生まれ変わったと答える。
震災で人々は家族を失い仕事も失い、生活のすべてが失われた。しかし人々は新たな人生を歩もうとしている。どんなにどん底に落ちても人は生きている限り何度でも生まれ変われる。
主人公の郁男は亜弓の内縁の夫ながら仕事は安定せずギャンブルに明け暮れていた。心機一転彼女の故郷でやり直すつもりがまたもギャンブルの誘惑に負けてしまう。
そんな時、けんか別れした亜弓が殺害され、その罪悪感からまた周囲のあらぬ偏見から、ストレスによりさらにギャンブルにのめりこんでしまう。
多額の借金を重ね、もはや自分ではギャンブルを止められずどこまでも堕ちてゆく郁男。
そんな彼を勝美や美波たちは見捨てなかった。津波で妻を失った勝美は妻のおかげでかつてチンピラから足を洗い真人間になれたという。どんなにどん底に落ちようとも人は生きている限り生まれ変わることができる。小さな家族、共に手を取り合って生きてゆこうと。
震災で全てを失った人々が互いに手を取り合い、新たに生まれ変わろうとしているように。
本作は殺人事件が起きるのでミステリーサスペンスとして宣伝されていたが、震災の記憶が残る石巻を舞台にした純粋な人間ドラマだった、それもかなり重厚な。
どこまでも堕ちてゆく郁男を演じた香取慎吾の熱演っぷり、存在感が素晴らしかった。
香取慎吾おそるべし
いつか凪は来るもの
香取慎吾の新境地
こんな○○は見たことがない
自分だったら絶対に見捨てる
クズ野郎を演じる香取慎吾
評判が上々のこれ。
香取慎吾の演技の評価が高くて楽しみに見た。
東日本大震災は今後様々な使われ方をするのだろうなあと思いながら見た。
ノミ屋って言う存在は知っていた。
(夫の友人が素人ノミヤを二十数年前にしてた。当然間も無くやめてたけれど)
ヤクザ絡みのそれは、考えただけでも危険なのは馬鹿でも分かりそうなもの。
取り立ては厳しいし、勝ったところでおいそれと払い戻してくれない。
香取慎吾演じる男が最後に賭けた車券の払い戻しをもし正常に行われたとしよう。
彼はその 勝った時のアドレナリンの放出の快感を忘れることは出来ないだろうと想像する。
そうして もっとぬかるみにハマっていく。
そういう人種だと思う。
香取慎吾の演技を褒め称える人が多い中、
私は彼が、この先すっぱり足を洗ってマトモになる姿しか見えなかった。顔に傷を作り血を流し、なんとなくだらしのない締まらない体型だとしても
本当のギャンブラー、本当のクズ男ではないのだ
そう見えてしまった。
それで合ってるの?
そう言いたくなった。
それに比べて 西田尚美の父役の吉澤健。
もう地元の魚業従事者以外には全く見えない。
ここにその違いを見た。
とは言え 興行は収入が基本
客を呼べる人間が主役を張るのは当然なのである。
ダメ男
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