劇場公開日 2019年6月28日

「再生の物語。」凪待ち レントさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5再生の物語。

2023年5月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

石巻の海は穏やかでまるで湖面のように波一つ立ってない。その海の底には震災の記憶が今も残る。ピアノやタンス、自転車、様々な生活用品が静かに眠っている。人々の暮らしが確かにそこにはあった。

津波がすべてを駄目にしてしまったという郁男の言葉に、亜弓の父勝美は海が新しく生まれ変わったと答える。

震災で人々は家族を失い仕事も失い、生活のすべてが失われた。しかし人々は新たな人生を歩もうとしている。どんなにどん底に落ちても人は生きている限り何度でも生まれ変われる。

主人公の郁男は亜弓の内縁の夫ながら仕事は安定せずギャンブルに明け暮れていた。心機一転彼女の故郷でやり直すつもりがまたもギャンブルの誘惑に負けてしまう。
そんな時、けんか別れした亜弓が殺害され、その罪悪感からまた周囲のあらぬ偏見から、ストレスによりさらにギャンブルにのめりこんでしまう。
多額の借金を重ね、もはや自分ではギャンブルを止められずどこまでも堕ちてゆく郁男。

そんな彼を勝美や美波たちは見捨てなかった。津波で妻を失った勝美は妻のおかげでかつてチンピラから足を洗い真人間になれたという。どんなにどん底に落ちようとも人は生きている限り生まれ変わることができる。小さな家族、共に手を取り合って生きてゆこうと。
震災で全てを失った人々が互いに手を取り合い、新たに生まれ変わろうとしているように。

本作は殺人事件が起きるのでミステリーサスペンスとして宣伝されていたが、震災の記憶が残る石巻を舞台にした純粋な人間ドラマだった、それもかなり重厚な。

どこまでも堕ちてゆく郁男を演じた香取慎吾の熱演っぷり、存在感が素晴らしかった。

レント