凪待ちのレビュー・感想・評価
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いやぁ、流石の白石節でございました。俳優面々も素晴らしかった。そして香取慎吾さん。彼の想像以上の演技が、どうしようもない男の物語を現実世界へ持ち上げる。
多少なりとも、こんな人達との接点があったりもしたので、「万引き家族」同様に、映画云々を越えて身に詰まされてしまった。「3-6の車券」あれが全てだったのだろう。劇場内に灯が戻るまでピクリとも動けなかった。
どこまでもダメ男
それほど宣伝もしてないし、注目もされていない作品でしたが、レビューの点数通り、人間の弱さと愚かしさに焦点を当てた、社会派ドラマ。
白石和彌監督にしては、あまり血生臭さは感じなかったけれど、ギャンブル依存で、どこまでも落ちていくダメ男の哀れさをよく表していました。ジャニーズではできない役だろうなぁ。
主役の香取慎吾は、スマップ解散後はCMくらいしかテレビでは見ることなかったけど、悲愴感漂う、中年のダメ男役を見事に演じ、しっかり脱アイドルしていました。
ギャンブルにハマって依存症になると、これほどまでに愚かしい行動をとるのか、という怖さと哀れさが、これでもかと伝わってきます。
そうした愚か者を捨てる神もあれば、拾う神ある。人の情けから涙を誘う演出は、白石監督上手いですね。
但し、亜弓殺しの犯人は、登場人物のメンバーからして、早々に察しはつきました。そして、案の定でした。(笑)
なんちゃってスズキカー(笑)
デンゼル・ワシントンの「フライト」のように依存症の怖さを描いた映画。慎吾君の行動はおいおい!と思うかもしれませんが、これが依存症なのでしょう。明るいイメージの慎吾君が、くたびれたダメダメ人間を熱演!
犯人探しより人間ドラマがメインですが、リリー・フランキーがあざとすぎて、怪しすぎる!気になって仕方がない!逆にミスリードだったら面白かったんですが。
震災の復興と主人公の再生を重ねてるんでしょうが、なんか安直すぎませんかね。
脇役が良い!
香取慎吾の演技と震災後の話に興味があったので見た。
香取さんは、あの髪型とあの声でどうしても「慎吾ちゃん」のイメージだったが、今回は少し違っていた。
震災の話は少ししか出てこなくて残念だった。
この作品は、脇を固める役者さん達がすばらしかった。
リリーさんは期待を裏切らないし、恒松さんは期待以上に良かった。音尾さんも安定の演技だった。おじいちゃん役の人となべさん役の人も良かった!
西田さんは皆の人気者のようには描ききれてなかった気がするので、物足りなさが残る。
どうしてクズの郁男が周りの人に助けてもらえるのかも、あまり描かれてなかったので、その部分をもっと見たかった。
もう少し細かい描写があったらもっとわかりやすかったかもしれない。
人生の喪失と再生
重苦しく、陰鬱で暗澹たる空気が終始充溢し続ける、決して笑って楽しめる映画ではありません。
己の才、己の知、そして己の縁を浪費し喪いつくして社会の底辺で蠢き、のたうつ中年男が、世の中から見放された孤独と閉塞から、唯一ギャンブルのみを捌け口として被虐的に自らは抑えようがなくのめり込み、周囲を巻き込んで徹底的に堕ちつくした上で、最後のやり直しを図る、人生の喪失と再生の物語といえます。
本作を観て、日本映画史のベスト5には必ず入る名作『浮雲』(1955年)に相通じるものが、私には感じられました。『浮雲』は、閉塞感と倦怠感に満ち溢れつつ、各々が狡猾で自分本位な男女の遣る瀬無く切ない関係を切々と綴ったものですが、本作は、この重苦しい空気感と殺伐とした他人との繋がりを一人の男に体現させて描いたように感じます。
『浮雲』で森雅之演じる富岡は、女にだらしなく、ずるずると堕落していく末に悲劇的終末を迎えるのに対し、本作の香取慎吾演じる郁男は、徹底してギャンブルに呑み込まれ、己ではどうしようもなくスパイラルに奈落に陥った末に再生の光明を見出しますが、何れも女の犠牲を生贄にしていく点が相似しているように思います。
白石和彌監督は、人間の心の奥底に潜むダークな本質を曝け出させ、対峙させ、そこに生じる荒ぶるドラマを作品化してきているように思いますが、本作もその延長線上に位置しているといえます。
主人公の、水草のように刹那的に唯々世の中を漂い彷徨うだけの日常の中で、自己嫌悪に陥り悶え苦しみながら、それでも抜けられない自堕落で自暴自棄の、愚かで、切なくて、哀しい生き方が、見事に描かれています。
特に、ユニークで斬新な撮影アングルとフレームの取り方と寄せカットの多用によって映像に緊張感と戦慄感が満ちており、更に手持ちカメラ撮影の落ち着かないカットの多用によって悲愴感と不安感が塗され、作品全体の画調が暗く沈んだものに仕上がっていました。
また、主たる舞台となる石巻、そしてその前段の舞台として作品に重要な意味合いをもつ川崎、その各々のエスタブリッシング・ショットとなる、片や不穏な予感を漂わせる石巻の街と港湾の遠景俯瞰、片や物語の軛となり物語進行のガイドレールとなる競輪場の描写は、観る者に強く不吉な印象を与えます。
主人公役の香取慎吾は、うらぶれた中年男の悲哀と孤独感と倦怠感をそれなりには巧く演じていたとは思いますが、己の意志の弱さに自己嫌悪に陥り苦悩し憔悴するまでには至らず、やや主人公のキャラクターをアピールしきれていないように感じます。
何より声音に張りがあり生気が感じられるのは違和感がします。真の役者なら、単に所作と台詞回しだけでなく声調もいくつかの抽斗を持つべきで、今後の彼の円熟に期待します。
かみごたえのある地味さ
圧倒された
俺たち、ギャンブル依存症だろォ?
津波が多くを奪っていった。綺麗な海が残った。
最低で最低な男に津波が押し寄せて洗いざらい持ち去られる様、僅かに残ったものを描いた作品。
内縁状態の恋人とその娘。側から見ればかなり微妙な関係性は自分の家庭状況に若干似ていて(少し違うけど)、娘の美波に自分を重ねるようにして観ていた。
亜弓と郁男の出会いの詳細や二人を繋ぐ絆の描写は少ないけど、自然体の空気感や美波の態度から伝わるものがある。
母親を亡くすのは本当に辛い。この状況なら特に。
もしこれが自分の家族なら、と思って号泣してしまった。嫌だ。絶対に嫌だ。
亜弓の死に対して誰もが何かしらの後悔を抱いてしまうこの状態、やり場の無い喪失感と悔やんでも悔やみきれない念がしんどい。
犯人探しやその動機暴きの要素はかなり少なく、郁男の人となりにスポットが当てられる。
飲む打つキレる、競輪に金を溶かして堕落し続ける彼の姿にはため息しか出ない。
ただ、嫌悪感が少ない。
最悪の人間なのは間違いないけど、その嫌らしさや気持ち悪さよりも彼の哀しさや無様さが強く出ていて、常に「憐れな人」の印象だった。
香取慎吾の見た目や話す口調からそう思えたのかもしれない。
きっと競輪なんてもう楽しくはないんだろう。
やらずにはいられないだけで。
受付の兄ちゃんの呆れたような目線が刺さる。
パナマ諸島の美しい写真の中から出てきたものを抜いたとき、それを受け取ったとき、あまりの惨めさに軽く絶望した。
美波も亜弓も本当なんでこんな人に懐いたんだろう。
頑固ジジイで目もろくに合わせなかった勝美と大切な人を失った者同士、だんだん雪解けしていく様子は地味に嬉しかったけど。
しかし娘目線で観たとき、美波にはあるはずの激情があまり表現されていないことは少し引っかかる。
忘れた頃に突如判明する真相の一部にはびっくりした。いや何でだよ…なんとも言えない後味の悪さ。
この映画の焦点はそこではないとは分かっていても、事の中身を全て知りたい気持ちは収まらず、鑑賞から数日経った今でも考えてしまう。
終盤で見せる断絶の儀式と情けない咽びには胸を締め付けられ打たれた。
ここまで失ってやっと、やっとのこと。それもまた周りに世話になって。
予想できる未来に50万円を賭けたい。
文句なし大傑作!
主人公補正が生々しさの邪魔をする
稲垣・草彅両氏は脱退前からわりと多彩な役柄をこなしていたのに対し、香取君だけは見てて可哀想になってくる変な役柄ばっかりでしたが、本作では20才前後の頃に魅せた確かな演技力を再び見せてくれました。
ギャンブル依存症のクズがさらにロクデナシに堕ちていく様を丹念に描き、見てて辛くなるほどでした。
ずっしりと重い世界観はさすが白石監督というところでしょうか。
ただ、良作だというのは断った上で、話に入り込みにくい点があったのも事実。
まず主人公以上のガチクズが何人も出てくるので、主人公まだマシじゃんという思いがどうしても出てくるところ。
次に、クズな主人公にそれでも手を差し伸べる人が何人か出てくるけど、その根拠が弱いところ。
最後に、いくら主題ではないとはいえ、殺人犯の動機などが全く明かされず何で殺されたのかモヤモヤするところ。
最後以外はつまるところ「主人公だから」以上の理由が見当たらず、せっかくのリアリティの邪魔をしていた印象です。
うーん、香取慎吾が・・
ヒト
時折この手の映画に出くわす。
韓国の作品に多いのかな…。
なんでこおいう物を撮ろうと思うのか理解できなかったのだけど、字幕を追うのと、異国の物語として観るのとはまた違う印象が残った。
物語は悲惨である。
何が悲惨って、主人公が真っ当な人生を歩もうとするたびに邪魔が入る。
思うようにいかない。
真面目に、普通に生きようとする気持ちも努力も踏みにじられていく。
自暴自棄にもなるだろう…。
極端なシチュエーションの羅列ではあるが、実際に起こりうる事の範疇であったりもする。
原発の後始末をするのは国を憂いた人達ばかりではなく、にっちもさっちもいかなくなった連中が送りこまれるのだ。
綺麗事ではない現実がある。
いくら上部を塗り固めても、漏れ出してくる膿はある。
とかくこの世は生きにくい。
それがスタンダードであるかのように。
そんな中でも、救いはある。
自分を傷つけるのも救うのも、結局は人間でしかない。
彼が最後に手にした蜘蛛の糸。
今までとは少しだけ意味合いが違う。
そんな小さなキッカケが、その後の人生に大きな意味を持つかのようであった。
この手の映画をすすんで観ようとは思わないが、この手の映画を撮ろうと思う動機は分かったような気がする。
物事の大小はあれ、自分を観てるかのようにも思える。そんな感想。
何故、評価が高い………???
わたしたちが、そこにいた
秀作です。
「だめなんだよ、おれは。死んだ方がいいんだよ。」という叫びは、心に刺さりました。
最先端の国の中で、そういう思いを感じながら、それでも捨てきれない今を生きている主人公。
最後は、別の終わらせ方もあったと思います。
だけど、この終わらせ方を選んだ白石監督に感謝します。
主人公に投げかけられた言葉の優しさが、非常に印象に残りました。
香取さんも熱演でした。
正しく生きたいと願いながら、それができなくて苦しむ主人公が、確かにそこにいました。
涙を流したシーンは、感動しました。
現代社会で生きる、たくさんの苦しんでいる人に、凪が訪れますように。
ただ受け入れるしかないのかも…
賭ケグルイ
「忍者ハットリくん」や「こち亀」をやっていた香取くんがこんな役をやるなんて…と感慨深いものがある。映画では木村拓哉の方が出演作が多いし、刑事役から時代劇まで幅広いが、こんな生活感がある役はやらないだろうな。まあ、ジャニーズ事務所を抜けたからこそできたとも言える。
ギャンブルへの執着に抑制が効かないし、ぶち切れ方もちょっと尋常じゃなくて、共感しづらい主人公だが、それでもどうにか心を寄せようとして見ていると、やがて訪れるラストの家族像にしみじみする。
水中カメラがなめていく津波にさらわれて海底に沈んだ街の残骸には、ずしんと不意打ちを喰らった。
レビュー評価ほどでは無かった
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