凪待ちのレビュー・感想・評価
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ギャンブル症候群
陽のオーラを封印し、自堕落な中年男を演じる香取慎吾の時折見せる狂気を滲ませた眼差しに瞠目する
香取慎吾のスーパーアイドルとして発揮してきた陽性が白石監督の作風に合うのか、懸念していた。
過去の、白石監督作品の魅力は「凶悪」の先生や「日本一悪い奴ら」のシャブ中になっていく刑事など特異なキャラクターに依るところが大きいと思っていたからである。が、物語が始まってそんな思いは吹き飛んだ。
<白石監督作品の常連、リリー・フランキー、音尾琢磨の熟達した演技の安定感。吉澤健演じる東北の老いた漁師の気骨や心に沁みいるセリフ。あこぎな暴力団組員の行為など、人の妬み、嫉み、醜さ、愚かさ、狡さそして優しさを描かせたら現在の邦画界で白石監督に比肩するのは誰なのだろうと思った作品でもある>
「凪待ち」 センスある良いタイトルである。
忘れ難い邦画がまた一つ誕生した事を素直に喜びたい。
白石監督作品は初めてだったが、バイオレンス控え目サスペンス要素控え...
白石監督作品は初めてだったが、バイオレンス控え目サスペンス要素控え目完全にヒューマンに重きを置いた作品だった。
主人公はろくでなしとは言うものの根は優しく正義感もある。ただただギャンブルから離れられず不幸を招く。
脇のちょっとした配役までも隙間無く演技達者で飽きないし、とりわけ状況劇場からの出演陣の存在感たるや圧倒的。
主演香取慎吾は意外や役にハマっていたし、終始悲しそうではあるのに手を差し伸べてあげたくなるような佇まいに説得力があった。
ほとんど描かれない登場人物たちの背景も、ああ過去にこんな事があったのだな、だから事件は起きたのだなと推察できる演出も説明的にならずに良かったと思う。
震災の傷跡がまだまだ残る石巻で、あまりにも大きな犠牲を払ってなお生きていかねばならない人々の、悲しみと希望を描いた傑作。
凪待ち試写を観て
多くの人に観てほしい映画
今いちばん勢いの有る白石和彌監督の作品ということで、期待して観に行きました。
期待以上でした。凄い作品を観たというのが、いちばんの感想でした。
主人公が傷つき自暴自棄になり、ギャンブルでどんどん堕ちていく描写は容赦なく、観ていて胸が苦しくなります。しかし、彼に差し伸べられた救いの手、まだやり直せるという希望は、見終わった後も、心に小さな光が灯されたようです。
主人公の哀しみ、苦しみを全身で演じ切った、香取慎吾の演技力にも感嘆しました。
映画好きな人に観てほしい、おすすめの映画です。
嫌いになれないろくでなしの男
破壊と再生
先行上映会で観ました。
被災地石巻の破壊と再生を背景に、主人公郁男の破壊と再生を描く映画。
震災からの復興が着実に進んでいる一方でどこかではまだまだな部分があるように、郁男の再生は遅々として進まない。むしろより壊れていき、観ている者をイライラさせる。
そんな郁男を、明るく元気なイメージの強かった香取慎吾さんが演じている。きっと、これほど壊れてはいないとしても、暗いダメな面も、彼は元々持ち合わせているのだろうと思う。
私が一番印象的だったのは、船の上で亜弓の父親が郁男に言った、津波に関する言葉。
そしてそれがエンディングの映像に重なって、胸にズシンと来る。
確かに、たくさんのものが壊れ、失われた。でも新しいものがもたらされもした。
被災地も人間も、それぞれ速度は違いこそすれ、確実に進化していくのだと信じさせてくれる映画でした。
脇を固める役者がすごい
まずは、せっかくの白石作品なのに香取慎吾か…と見るのを悩んでいるかたは見るべき。そこに香取慎吾はいない。
ただのくずがそこにいて、そのくずを見捨てきれずにいる人々の演技がとてつもなくて素晴らしい。
やはり白石監督らしくというのか、
スッキリほっこりなんてことは一ミリもない。
きれいな景色からの墜ち続けるさま…
悪のなかに善がみえかくれして嫌いになりきれない愛してしまう…
善にほだされそうになるも、悪の部分がうずいて勝ちきれない弱さに…
個人的には共感し拒絶しながらみつつ、
弱さゆえの優しさに恐怖しました。
優しいがおきるたびに一つづつふえる足かせみたいなものが見える気がして…
うわぁーと叫びたいウズウズするところが沢山ありました。感情が揺さぶられて、一駅分くらい唸りながら帰りました…
リリーさん恒松さんや吉澤健さん…名前のわからない役者さんの数々…素晴らしかったです。もっと上映館が増えてほしい。
私は泣けなかったので、もう一度見に行ってみます。この感情はなんだろう。
試写会で凪待ちを観ました。
レビュー本文
登場人物それぞれに善も悪もあり、人間って完璧じゃないんだと。郁男がとことん堕ちていくのが切なくて、でもすくい上げてくれたのが意外にもあの人で…。
リリー・フランキーさん、音尾琢真さん、吉澤健さん、他の皆様も素晴らしい!
白石作品は、俳優さんのイメージが一新されたり、どんでん返しに驚かされたり。凪待ちも期待を裏切らないと思います。
地上波の香取慎吾しか知らない方に、ぜひ観ていただきたいです。
舞台は震災後の石巻。エンドロールも胸に詰まり予想以上に泣きました。
色々な立場で観れる秀作です。
白石和彌監督映画を初めて観ました
西田尚美さん演じる亜弓の死後 ギャンブルにハマり闇に堕ちていく 香取慎吾さん演じる郁男ですが、どうしようもないろくでなしでも 救いの手を差し伸べてしまうのは、香取慎吾さんだからこそ成立するのではないでしょうか。大きな体で背中を丸め優しい声で話す郁男は、違和感なくこの人は根はいい人なんだと感じさせてくれます。
物語り後半は再生への微かな希望。
郁男の窮地を何度も救う 吉澤健さん演じる勝美の凪のような佇まいと優しさは胸が熱くなります。もしかしたら郁男と同じく、深い悲しみの中を生きている勝美だからこそ、そっと寄り添い手を差し伸べることが出来るのかもしれません。
今度こそ郁男が立ち直り 新しい家族が再生出来ますようにと願わずにはいられないラストでした。
キャスト全員が素晴らしく今度はもっと深く考察しながら観てみたいと思う いつまでも余韻を引きずる映画でした。
邦画好きは観たほうがいい!
名古屋先行上映会にて観させていただきました。
邦画好きの方は観たほうがいいと思います。
白石監督の作品の中ではバイオレンスなシーンは少なかったと思いますが、やはりゾクっとするような、白石監督にしか出せない味が滲み出ていました。
香取さん始め、脇を固める役者さんたちの演技がとにかく良かった。香取さん演じる郁男は文字通りどうしようもないろくでなしで、
ギャンブル依存者、さらに酒に溺れる姿に目を覆いたくなる一方、普段見るアイドル香取慎吾の奥底をのぞいている気分で、妙にドキドキしました。
震災をテーマにしている映画ではないですが、そこに住む人々の覚悟や葛藤が描かれていて、日本に住む多くの人に観てもらいたいです。エンドロールまでしっかり。
それでも生きていく
抑えていた怒りを爆発させていい作品(いい意味で)
試写会で観ました。冒頭から理不尽な出来事が起き腹の底から怒りがこみ上げ涙を必死でこらえて気持ちを鎮め
穏やかなシーンに切り替わったと思いきや
またまた許せないクソったれな奴らの登場
久々に役者そのものを憎ったらしくぶん殴ってやりたい衝動にかられ
もう無理だ,大好きな慎吾くんごめんねというやりきれない思いに体ごとスクリーンに背けてしまった
しかしなんとか慎吾くんの鋭い眼光に宿る郁男の真実を見出さなければと観続けた
やっぱり苦しくても目をそらさず観てよかった
エンドロールまで観てほしい。きっと光が見えるから
こんなに気持ちがぐらぐら揺さぶられ翻弄される邦画は平成中に出会えなかった
大袈裟だけど白石監督あっぱれと感じた
そして上映前のフォトセッションで
慎吾くん,きゃーなどと騒いでいた単純なわが身をかなり小っ恥ずかしいと変な汗が噴き出したまま名古屋を後にした,最高の試写会でした
完成披露試写会に行ってまいりました。未だかつて見たことがないろくで...
完成披露試写会に行ってまいりました。未だかつて見たことがないろくでなしの香取慎吾というフレコミではありましたが、香取慎吾云々だけではなく、稀にみるどーしよーもないろくでなしの男の話し。香取慎吾出なければ途中で見続けるのも脱落したくなるよーなろくでなしな郁男。それでも郁男がなぜ他人である家族に見捨てられなかったのか。それは義娘との美波との関係性をみるになんとなく感じるものがある。我が子ではない義理の関係の思春期ど真ん中の美波。父親面するわけでもなくかといって距離があるわけでもなく、尊敬されるようなことはなにもできないまま軽蔑されるわけでもなく美波の心地のいい距離でふわりふわりとそばにいる。これが亜弓が郁男に惹かれ続けた魅力なのであろう。そしてどうしようもない男なのに最後まで観客も見捨てることはできない。みたことがない香取慎吾ではなくどうしようもないろくでなしを見捨てられずに、おいここだろ!がんばるとこは!と拳を握りたくなる、背中を叩きたくなる、そんな感情を味わいに映画館にいってほしい。
香取慎吾の演技が凄い
映画好き、白石和彌監督作品ファンは必見
白石和彌が描く「家族」とは
Filmarksの監督ティーチイン付き試写会にて鑑賞。
白石和彌監督が長年あたためてきた「家族」「喪失と再生」がテーマ。これまで加害者側を描くことが多かった監督が、今作では初めて被害者側に視点を移し、どこまでも転がり落ちていく男・郁男(香取慎吾)と血のつながらない「家族」を通して、苦しみから這い上がった先にある一筋の希望を浮かび上がらせる。
ストーリーは、公開されているあらすじでほぼ語られてしまっている。
もちろん「事件」の犯人は明かされていないが、それすら作品内では重要な位置を占めていないと感じる。これは、とにかく郁男の転落っぷりを見せる映画だと言える。
サスペンス風を謳ったキャッチコピー、ポスターは明らかなミスリードで、そうした内容を期待した観客は不完全燃焼になるだろう。
しかしだからこそ、主演の香取の演技が際立ってくる。特に後半は圧巻で、いつのまにか両手を握りしめ、息を詰めて見ていたほど引き込まれた。
白石監督が惚れ込んだその大きな体躯。
多くのヒーローやキャラクターを演じてきた彼の身体が、今作では自暴自棄な暴力装置、悲しみや空虚感を抱えた器として存分に用いられる。
そこに、郁男が香取慎吾じゃなければならない必然を見た。
登場人物は皆何かしらの傷を抱えており、その背後に3.11も透けて見える。監督は彼らの過去をあえて作品内で扱わないが、監督曰く「人間力」豊かな演者たちが、こちらにそれを窺わせる。
優しさも暴力も己の傷を隠しごまかすため、という意味では同じだと思える中、一人真っすぐな瞳で立つ美波(恒松祐里)が、この映画の希望の象徴として光を放っている。
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