「ロッキーのDNAとは、弱きことを認めること」クリード 炎の宿敵 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
ロッキーのDNAとは、弱きことを認めること
前作クライマックスのファイトで惜しくもチャンプを逃したアドニス(マイケル・B・ジョーダン)。
その後、6戦全勝で遂にチャンプとの王座決定戦。
アドニスは見事王座を手にするが、遠く離れたウクライナの地では父アポロの仇・ドラゴの息子ヴィクター(フロリアン・ムンテアヌ)が剛腕ファイターとして力をつけていた。
そこへ目を付けた辣腕プロモーターは、アドニス対ヴィクター、すなわちクリード対ドラゴ因縁の対決を画策し、アドニスの初回防衛線の相手としてヴィクターを米国に招聘する・・・
というところから始まる物語で、そんなことは粗筋に書くまでもないほどの因縁話の構図。
だけれども、この映画、そんな因縁話に収まらないスケールの大きさがある。
このスケール感、初回対決で、もうこれでもか、というほどアドニスがやられてしまう。
試合はヴィクターの反則負けなのだが、勝負としては「チャンプを継いだ」アドニス・クリードの完敗である。
で、再戦となるわけだが、それだけではフツーの映画、ぼんくら映画の範疇になってしまう。
そこんところを、脚本シルヴェスター・スタローン(ジュエル・テイラーと共同)が『ロッキー』のDNAを注入した。
『ロッキー』のDNA・・・それは、自分自身の弱さに気づくところ。
第1作では、まるっきりの噛ませ犬・負け犬でしかなかったロッキーが、愛するエイドリアンのために、自分自身のために最終ラウンドまでリングに立つ、その心意気・こころざしの映画だった。
後にロッキーはチャンプになるが、この『クリード』シリーズでは、家族とも疎遠(というか音信不通)で、孤独に死を迎えるばかりの老残兵として登場していた。
そして、今回のアドニスは王座を手にするが、ボロボロに痛めつけられる。
何のために戦うのか、それが問いかけられる。
敵討ちではない・・・
弱さを認めること、認めた上での戦い。
『ロッキー4 炎の友情』で、ズタボロのアポロに対してセコンドとしてタオルを投げられなかったロッキーの心情が繰り返し登場する。
弱い、すなわち、敗ける、を認めること。
これがこの映画の一番のポイントで、アドニスとヴィクターの再戦でそれが描かれる。
ここは、号泣必至。
イワン・ドラゴ役のドルフ・ラングレンは儲け役である。
とはいえ、アドニス、メンタル的に弱すぎるところがあるんじゃないの? と思わざるを得ない節も多々あり、そこんところが歯がゆかったです。