劇場公開日 2019年4月12日

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「父と息子、薬物に負けぬ」ビューティフル・ボーイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5父と息子、薬物に負けぬ

2019年9月8日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

怖い

『君の名前で僕を呼んで』で彗星の如く現れ、ハリウッド若手実力派の期待の星となったティモシー・シャラメ。
そんな彼の実力と魅力がまたまた発揮。
それぞれの視点で綴られた2冊の回顧録が原作による、父と息子の物語。

ニックは成績優秀、スポーツ万能。
父デヴィッドにとって最愛の自慢の息子。
父は再婚しているが、義母や義兄弟からも、“いい息子”“いい兄”。
一見、何の問題も無い幸せな家族。
が、ニックには深刻な問題が。
薬物に手を出してしまい、依存症に…。

何故、自慢の息子が薬物を…?
“自慢の息子”だからである。
周囲の期待。そのストレス…。
まだ年端もいかない子供にそんなストレスを背負わせた大人たちを批判したいし、当の本人の気苦労は察する。
だからと言って、許される事ではない。寧ろそれは、己の弱さだ。
ニックが薬物に手を出したのは、一回二回だけじゃない。
さらに、様々な種類の薬物に手を出し…。
依存、中毒。溺れ、堕ちていく…。

勿論ニックも、このままじゃいけないと分かっている。
更正施設へ。
家族の助け。
出会った恋人の存在。
しっかりリハビリを受けている…と思いきや、
家族に嘘をつき、再び薬物に手を出す。
施設を抜け出す。
音信不通に。
それでも、薬物を克服しようとするニック。一心で支える父。
が、その度に裏切り、裏切られ、時には激しく衝突。
薬物に手を出してしまった自業自得とは言え、胸が痛い。
そして遂には、命の危険に…。

薬物依存の青年を演じる為、実際に更正施設で生活し、減量したシャラメ。
その役作りもさることながら、何処か儚く脆く、そして繊細でピュアな佇まいは、“今”でしか表せない。
息子を信じ、無償の愛情を注ぐ父親役のスティーヴ・カレルも素晴らしい。もうすっかり、シリアス名優だ。

世間に出回る話では、薬物を克服した人の話をよく聞く。
努力と苦しみを乗り越えた方々は大勢居るだろうが、同じくらい今も苦しんでいる人たちも…。
劇中でも描かれていたが、今度こそ本当に抜け出そうとしても、そう簡単に薬物地獄からは抜けられない。
それほど恐ろしい。たった一度でも、手を出してしまったら、堕ちてしまったら…。
何故、そうなってしまったのか。

本作のラストシーン。
でも、救いはある。薬物に負けようとしない強い心と、信じ支えてくれる愛情があれば…。

近大
CBさんのコメント
2020年3月31日

> その役作りもさることながら、何処か儚く脆く、そして繊細でピュアな佇まいは、“今”でしか表せない。

たしかに。見事なレビューですね。

CB