THE GUILTY ギルティ(2018)のレビュー・感想・評価
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何回も巻き戻した
蛇がお腹にいたからオリバーは泣いてた
だからお腹の蛇をとりのぞいてやった
そしたら、泣き止んだ
。。
確かに留守録アナウンスが、はじめにおかしいと思った。。
被害者と思ったママは精神病で本人はオリバーを助けたつもりだったが、お腹の蛇をとりのぞくためにナイフで切り裂いて殺していた、、
完全に夫のミケルが犯人だと思った、、、
警察は守るのが仕事だ
映画「THE GUILTY ギルティ」(グスタフ・モーラー監督)から。
正直、やや暗いトーンの中「緊急ダイヤル」とい称し、
「電話越しに小さな事件に応対する」という繰り返しに、
いつまで続くんだろうか?と、強い眠気が襲い、
結果、何度も巻き戻して観ることになった。
しかし、電話からの声と音だけで、状況判断して、
緊急通報指令室のオペレーターとして、警察に指示を出すことは、
それ相当の経験と技量を兼ね備えていないと、出来ないこと。
逆に、経験がありすぎると、勝手に自分で推察して、思い込む。
今回は、視聴者の私も含め、そのトリックにまんまと引っ掛かった。
ある時、誘拐された・・と言う電話が入る。
「緊急ダイヤル」は「助けが必要?」と尋ね、自分で判断して、
そのこどもの安否確認と、悲痛な叫びに、
「警察は守るのが仕事だ」「守る?」「困ってる人を助けるんだ」と
事件解決に奔走するのだが・・。
ラスト、この判断が間違っていたことに気付いた時の主人公は、
何を感じ、その後の対応はどうしたのか、
私は、その後の方がとても気になって仕方がない。
警察が守るべき人は誰だったのか、困ってる人は誰だったのか。
事件の真相を知ってから、観直してみると、
どこで判断を間違ったのか、なかなか興味深い作品となった。
主人公の行動はこれでいい。
全部が音声で進むサスペンス。
何が凄いって、絵面を観客に丸投げしてるんですよ。
主人公のいる部屋以外の登場人物や場所は、観ている側が想像するしかない。
なかなかギャンブルというか、こっちの想像力を試されますよね。
だから、普段から小説を読む人なんかはめちゃくちゃ入り込めると思います。
僕はもう大好きですね。
というのは、レビューで「主人公の行動が理解できない」とか、「感情移入できない」とかってまああるじゃないですか。
それも分かるんですけど、逆に考えてみてください。
別に「事件を解決する」のがこの映画の目的じゃないんですよ。それがもうミスリードなんですよ。
「この事件に感情的に首を突っ込んでしまう主人公」を描くのが重要なんですよ。
この主人公じゃなかったら成立しないんです。
彼は映画的ヒーローではありません。
「罪人」なのです。
何の気なしに借りてみた
ちょっと面白い。
ギルティと言うよりは贖罪(アトーンメント)と言う感じか?
仕事でミスを犯し、糾弾される警官が通信伝令の業務をやらされている所から始まる。
糾弾されることに不安感一杯で、子どものSOSを聴いて手柄を立ててやろうと無理やり突っ走る。しかも普段やってない仕事で交渉しようとする。
そりゃ上手くいかんよね。
ドラマは通信室だけで進むけど、部屋を移動したりはする。周りに見られないように独断専行する姿は不安を煽って仕方ない。
電話口の音声だけで相手の状況や精神状態等が仄見えるので「おい?どーすんだよ?」と言う思考に巻き込まれて行きそうになる。
ラストがあれで良いとは思えないがそれなりに観られる作品と思う。
ぜひヘッドホンを着用して観てほしい映画
緊急通報司令室で働く主人公のアスガーが、電話越しの音だけを頼りに誘拐事件に立ち向かうというストーリー。
上映時間は88分、おそらく映画内での時間経過も同じくらいでしょう。視聴者はリアルタイムに進行する誘拐事件の全容を、電話の向こうから聞こえる音だけで推測する形になります。まるで自分が主人公のアスガーであるかのように感情移入しながら観ることができます。
この映画の凄いところ、それは台詞のある登場人物のほとんどは、「姿も形も見えない」というところでしょうか。ほとんどの登場人物は、主人公アスガーとの通話でしか登場しないので声だけの出演となります。警察官・主人公の相棒・被害者女性・誘拐犯・子供。声だけしか登場しません。しかし電話越しの声と画面に映るアスガーの表情だけで、緊急通報司令室の映像しか映らないのに、誘拐事件が目の前でリアルタイムに発生しているような錯覚に陥ります。電話越しに聞こえるのは声だけではありません。雨の音・車のエンジン音・ワイパーの音など、あらゆる環境音が非常にリアルに聞こえてきて、視聴者の想像を掻き立てます。
電話での会話のみならず、一分一秒を争う場面なのに相手がなかなか電話に出なかったり留守電になるなどの細かな演出によって、アスガーがもどかしさを表しているのも見事でした。こういった細かな演出には、製作スタッフの強いこだわりを感じます。
ただ、ストーリー自体はあまり目新しさの無いものでした。
途中で伏線が張られていたり驚きのどんでん返しがあったりして楽しめましたが、よく言えば王道・悪く言えばありきたりなストーリーだったので、わざわざこの映画でやる必要性がありません。「相手の声しか聞こえない」という特殊なシチュエーションを活かしたストーリーであればもっと楽しめたんじゃないでしょうか。
しかしながら、総合的に観れば本当に面白い作品で、こういう新しい試みの作品がもっともっと増えてくれればいいなぁと思います。
会話劇の本当の面白さ。物語のその先まで面白い!
いやあ面白かった。本当に面白かった。息もつかせないサスペンス。電話の声のみで、いや電話の声のみだからこそサスペンスを盛り立てる。サスペンスが盛り上がる。これは作戦勝ちと言っていい。警察の通報オペレーションルームの中だけで、映像は一切外には出ない。もちろん事件現場も映らないし、電話の声の主も分からない。観客にとっても主人公と同様手がかりは電話から聞こえてくる声だけ。その声から受ける印象。先入観。思い込み。思い過ごし。そこにあるのはサスペンスであり、列記としたドラマ。
そんなワンシチュエーションの画面の中、主演のヤコブ・セーダーグレンはほぼ出ずっぱりで魅せ切る。一人芝居と言ってさえ良さそうなほど、画面の中にいるのは概ねヤコブ・セーダーグレンただ一人。自分の存在と演技だけで観客を引き込まなければならない。でも見事に引き込まれた。もちろんストーリーも観客を引き付ける。限定された情報の中、こちらも主人公と同じように事件について考察する。なにか手がかりはないかと思いめぐらせる。どうにか被害者を救えないかと緊迫する。息が詰まる。脚本は情報の落とし方が上手で、限られた手数の中で最後の最後まで物語を魅せ切る。それだけではない。事件の真相が判明した後さえ、まだ尚映画は魅せる。真相が浮き彫りになった後で気づかされる人間の「感覚」の危うさ。それを体現するヤコブ・セーダーグレンの演技・・・と巧みさがループして映画全体に巡っているかのよう。実にお見事。これは非常によく出来た秀作。ヤコブ・セーダーグレンだけでなく、声だけで演技をした電話の向こうの役者さんたちの素晴らしさも含め何もかもがパーフェクト。
どこを取っても無駄がなく、全てが効果的に機能して映画になったと言う感じ。85分という短い上映時間が3時間の大作のようにも、わずか一瞬の一呼吸のようにも感じられた。(06th Apr. 2019)
犯人消失
信頼できない語り手
物語を進める際に使われる技法のひとつで、主人公やナレーターといった、物語の“語り手”の信頼性をあえて低くすることによって、読者(観客、視聴者)を惑わせるというもの。
今作品は正にそれを声や音だけで対峙してしまったトリッキー作品である。
犯罪捜査中に犯人の一味の若者を撃ち殺してしまった主人公は裁判の結審迄警察機関緊急通報受付(デンマークでは112)勤務に飛ばされていた。そのウンザリするような電話のやり取りが翌日の結審で終わる事に安堵していたときに、女性からの誘拐を告げる連絡を受ける。元々の正義感なのか、それとも心証を良くする為の偽善か、主人公はその電話でのやりとりに於いて犯人確保を成し遂げようと奮闘するのだが、その限られた情報や、それ故の刑事の勘や経験によって、取り返しの付かないミスを犯し続ける。問題は時間。結局、焦る余りそのミスは益々炎上してしまう羽目に陥るのだ。それを観客共々体験してしまう、没入感が強い演出に仕上げている。なにせ相手のもたらす情報しかない、そして電話はあくまでも1対1の双方向のみ。会議等での複数会話でないから異論や別情報が同時に行なわれない。だから後から入ってくる180度逆の情報がもたらされることで、時間が巻き戻されない無念と悔恨が支配してゆく。人間はその限られた情報故、その穴を埋めるよう自分にとって都合の良い、理論的で整合性の取れたパッチワークをしてしまう。それが罠とは知らずに・・・それは女の子に凄惨な現場を図らずも直視させてしまうことや、蛇が体の中でのたうちまわっているという妄想故に我が子を殺してしまっていた事に気付いたりと、今から思えば沢山のヒントや伏線が与えられているのに見落としてしまう事実を観客に鋭く突きつける、相当ソリッドな展開なのである。そしてクライマックスで、蛮行に気付いた(この件だけは、一寸無理な設定とは客観的に思うのだが)女が、その罪の意識により自殺を図る事を阻止するために、主人公が、自分の嘘を告白することで、決してその過ちは自分だけじゃないということを訴えることで、間一髪警察に保護されることで結実を迎える。ラストの通話先は裁判所への真実の吐露なのか、それとも別れた妻への懺悔なのか、深く考えさせられるラストシーンである。勿論、スクリーンに映っているシーンには何も目を背けるような凄惨さはない、サスペンスフルなアクションも起っていない。全ては、緊急通報受付の部屋のみである。その中で右往左往している主人公と、釣られて共有している観客が陥るパニック作品として、そのセンスと演出、アイデアに脱帽である。
とてもよかった
電話の相手のママさんがやばいやつだと分かったときはびっくりした。主人公が、懸命に事件と向き合っているうちに自分の問題に対して誠実になっていくのもよかった。声だけのせいでよけいに想像を掻き立てられた。
悲しい漢やね…
ワンシチュエーションもの。
その中でも物語の展開に合わせ、絶妙に場面が変わる。
①オフィス
②オフィスの別室(最初は窓越しのオフィス見えるが、途中シャッター閉じどんどんと暗くなる。その後赤いパトランプ)
③再びのオフィス(ここがやけに明るく感じる。そして扉の向こうへ。)
音が注目される今作だが、場面場面の絵作りがしっかりされており、映像で語る演出が見事。
何を見せて何を見せないか、監督のハッキリとした意思が感じられる。
最初主人公と共に事件に巻き込まれていくのかと思いきや、主人公がなんだかおかしな奴だとわかってくる。そういう短編小説読んでる感じかも。
ラスト、常に主人公の近くにいたカメラが、主人公がオフィスを出て行く時にそれを追わずオフィスから出ないのがいい。そして主人公がある人へ電話しながら明るい世界へ出て行くところでエンドロール。なんともニクい演出。
若いけど、しっかりと実力がある監督。今後も期待したい。
最後の電話
予告をみた時点で予想した特大ホームランとはいかなかったが、限定された設定の中で多面的なストーリーを作り上げている。
ストレートなサスペンスと思っていたら…どんでん返しを前振りにして、いつしか彼自身の問題と深く関連づける展開がうまい。
短縮でかける相手と、番号を見ながらキーを打ってかける相手ではプッシュ音のなり方が違うとか、そういうのも好き。
最後の電話は…まあそうなんだろうねえ。
再鑑賞。デンマークといえば…ラース・フォン・トリアーのイメージ。ヒドイ。地図を見直すとコペンハーゲンはスウェーデンと隣接してるのね。そりゃ関係も深いか。
シンプルさが美点でもあるので難しいところだけど、もう少し他の電話と関連させてもよかったかな。あと思っていた以上にアスガーがやな奴だった。それが逆にギャップになってクライマックスシーンが盛り上がったのでいいのだけど。あと電話の向こう側の音だけでなく、こちら側の静寂が非常に効果的に使われているのは見直して感心したところ。
最後の電話は最初の鑑賞時は直感的に「パトリシア」だと思った。見直して3つ可能性があるのかな、と思ったが、それでも初回と意見は変わらなかった。結局は「奥さんによろしく」して、ケジメというか懺悔というか決断を伝えないと前に進めなさそうだもの、アスガーは。それとラシードに最初にかけた時2回押してから1回(おそらく発信ボタン)でかけているが、ラストカットでは3回押してから1回押している。初回のかけ始めのシーンはカットが切り替わったとこなので、確定とはいえないが。というか最後の「きれいなアスガー」なら奥さん一択としか思えなかった。そんな余白が感じ取れるのも良かった。
間を観る
そんな感じの映画でした。すごく良かったです。
警察の緊急通報司令室でオペレーターをするアスガーが主人公。
オペレーターとしての仕事を真面目に?こなし問題に対応していきますが、私物の携帯にかかってきた電話でアスガーも問題を抱えている事がわかります。
そんな問題を抱えたアスガーが受けた1本の通報が今作の主となるストーリーです。
この映画はオペレーターが外へ飛び出して事件に関与しているみたいな派手な展開はなく、司令室の中でのシーンだけで映画は構成されています。なので観ている人の想像で事件のシーンを展開していってほしいです。
個人的にはマチルデがオリバーの名前を呼ぶところが刺さりました。
そしてカット数やBGMが少ないので、臨場的にまるで映画の中に入ったかのようにヒリついた感覚で見れると思います。
タイトルでも「間を観る」と言っている通りセリフとセリフの間が長く、多いです。
でもテンポが遅いとか説明が少なくて分かりづらいとかは感じません。むしろその「間」に想像したシーンをまとめたり、アスガーの葛藤が観れるので演出として楽しめます。
手法もストーリーも結末も何をもって「罪」とするのかも全て楽しめました。とてもオススメの映画です。
緊迫感と正義感
緊急ダイヤルにかかってきた電話から、拉致された女性を救えるか、というワンシチュエーションの作品ですが、緊迫感あるストーリーに唸らされる展開で、最後まで飽きることなく楽しめました。
画面的には、緊急ダイヤル受付の事務室の中で延々と主人公の様子を映しているだけながら、電話の向こうの声や音、ストレスを抱えているらしき主人公の表情や行動などから、全く単調さは感じず、ハラハラしながらどうなるかと見入ってしまいました。
主人公の過去や人物像、心理状態が事件と並行して示唆されてゆく脚本も秀逸だと思います。
特に、それまでの犯人像が根本的に覆される展開での、主人公の価値観や独自の正義感も覆されたような絶望感。
そこから過去の贖罪の行動に繋がるようですが、とても印象深い展開でした。
個人的にも思い込みが覆され、はっとさせられました。
舞台だったらもっと面白かったかもしれない
声と音だけで推理するシチュエーションサスペンスと思ってたが、大した推理はしていなかった気がする。主人公の暴走も結構ひどく、通常の職務を軽視してるシーンも。なんだこいつ!って感じで主人公の印象は悪い。
ただ、オペレーター室だけで展開する脚本の潔さはなかなか。なかなか面白い展開だった。
舞台の芝居だったらかなり評価が高くなってたと思うけど、映画なのでそこまでの高評価にはならない。さらにモヤモヤするのは主人公の過去。あんなに正義感を振りかざしてるのに、容疑者の少年を殺した理由がしょうもなさすぎる。
途中で気づきます普通に
母親が先に観に行ったんですが、「あたしゃ途中で気づいた」とのことで。わたしはあまり頭の回転が良くなくて、そういった手の話は最後のほうでやっと気づいたり、母親の解説を聞いてやっと点と点がつながったりするのですが、この物語はわかりました。途中で。これは今思えば、の話ですが、誘拐された女性がそもそもあんなにずーっと電話していられるわけないなぁとか。
もっとすごいどんでん返しみたいなのがあるかと思いましたが、そこまでじゃないです。見終わった後に「THE GUILTY」のタイトルがずーんときます。
最後、結局あの女性は助かるのですが、あれはわたしは死んでしまったほうがいい意味で観客の心にグサっと刺さるのでは、と感じました。正直「あ、この人助かるんだ。へぇ。」みたいなのもありましたね。
狭い正義が罪へと至る
2019年アカデミー賞外国語映画賞の最終選考にまで
残り、ハリウッドリメイクも決定したデンマーク発の
サスペンススリラーが公開。
主人公が緊急通報センターのオペレータということで、
観客は主人公アスガーと同じく進行中の誘拐事件の状況
を聴覚のみで把握することを強いられるわけだけど、
やっぱこういう手法はサスペンスフルで良いっすね。
受話器の向こうの人物は無事なのか? 周囲に危険は
無いのか?
聞こえてくる息遣いや沈黙が怖い。
突然電話が切れた時のクリフハンガー感も怖い。
……と、褒めておきながらいきなり盛り下げる
ようなことを書いてしまうのだが、サスペンス映画
としての本作の手法そのものは決して「超斬新!」
と呼べるほどのものではない。
恐らく皆さんもご存知の通り『フォーン・ブース』
『ザ・ウォール』古くは『裏窓』など、聴覚や視覚
などの手掛かりを極端に制限することで緊張感を
生み出すスリラー映画というのは散見される訳で、
それに本作の場合、"音"そのものをヒントに事件の
手掛かりを得ていく演出もあまり無いし、プロット
だけ聞けばハル・ベリー主演の『ザ・コール/
緊急通報司令室』にそっくりだったりもする。
だがこの映画がユニークなのは、
まず"警察官の主人公VS誘拐犯"というシンプルな図式で
勧善懲悪ものを匂わせておきながら、実は主人公の方が
無自覚な“罪人”になっていくという点。そして、情報
を限定する手法で緊張感を生み出すだけに留まらず、
手法そのものが物語のテーマにも繋がっている点だ。
...
主人公アスガーは、女性や子どもといった弱い立場の
人間の為に懸命になれる、正義感の強い人間ではある。
だが問題は、彼が自分の判断を疑うことをしない人間であること。
電話を受けて「一刻も早く被害者を救わなければ」と
考えるのはもっともだが、そこから先がおかしい。
不祥事を起こして捜査権限を持たない身でありながら、
彼は独自に事件を解決しようと躍起になる。なんでも
独断でコトを進め、周囲とも殆ど情報共有を行わない。
協力を要請された同僚や司令室側が「何が起こってる?」
と訊いても、彼の返事は基本「とにかくやれ」である。
いくらなんでもここまで情報制限する人っておるかね?
とは思うが、「報告したら自分で捜査ができなくなる」
「自分なら最速最善の方法で事件を解決できる」
とでも考えていたんだろうか。
だが彼はその“捜査”で次々にミスを犯す。
イーベンの娘マチルデに幼い弟の無惨な姿を見せて
しまったことなどは最悪のミスだ。怒り任せに容疑者
へ直接電話をかけたりもするし、彼はおよそ冷静な
判断というものができていない。あれらのミスは、
極端に限られた情報を、彼が自分の先入観のみで
解釈したために起きたものだ(『助けを求める側が
被害者』『元犯罪者の話は信用できない』など)。
各所と情報を共有して、関係者宅に捜査員を送って
いれば、もっと穏便に事を運べたかもしれないのに。
最後にアスガーが起こした不祥事についても判明するが、
それも独り善がりな考え方から起こしたものだった。
イーベンの事件で次々とミスを犯すまで、
彼はずっと自分の先入観のみに基づく正義を
疑ってもいなかったんじゃなかろうか。
主人公だけにフォーカスした極端に狭い視野の映像、
ブラインドを下ろした狭く暗い部屋などは、そのまま
主人公自身の狭くて暗い頭の中だったのだと思う。
...
前科者だろうが警察だろうが、立場に関わらず人は
罪を犯す。特に本作が描いていたのは、自分の行為
が正しいと信じ込んだ結果、罪を犯してしまう人。
『地獄への道は善意で舗装されている』なんて諺が
あるが、良かれと思って為したことがかえって悪い
結果を招くことが、世の中では往々にして起こる。
ニュースで流れる事件や歴史的な犯罪を思い返しても、
勝手な正義や思い込みで恨みつらみを募らせたり、
自分の意のままに他人を従わせようとして、結果的に
重罪を犯した人がどれほど多いことか。彼らはきっと
自分が犯罪者になるなんて思ってもいなかったろうし、
未だに鉄格子の向こうで『自分は正しいことをした』
と考えてさえいるかもしれないのだ。
土壇場で自分が罪人であると気付けた主人公は、
最後にようやく人の命を救うことができた。
「あなたは良い人ね」というイーベンの言葉は
彼にとって最大級の皮肉だったかもしれないし、
彼がイーベンにとってようやく“善人”になれたとて、
それで彼が犯した罪が帳消しになる訳ではない。だが、
きっとそんなことは主人公自身が一番分かっている。
最後に彼が電話を掛けた人物は明かされないが、あれは
冒頭で連絡してきた事件記者に、自分の事件について
洗いざらい話すつもりだったのではと考えている。
...
主人公の行動がいくらなんでも極端過ぎたり、もっと
聴覚を使ったギミックで緊張感やミステリ的面白さを
持たせてほしかったと思う部分はあるけれど――
他人の意見を聞かず信じず、「自分は善だ、正義だ」
と頑なに信じて疑わない者こそ、最も重い罪への道を
ひた走っていることがあるかもしれない。
ソリッドシチュエーションスリラーとしてのエンタメ性
をしっかり持たせながら、そんな戒めも思い浮かばせる
佳作でした。3.5~4.0で迷ったが、4.0判定で。
<2019.02.23鑑賞>
悪くはないけど、期待値は低めの方が良いかな
アメリカの映画レビューサイト「ロッテン・トマト」で満足度100%と書かれると“ロッテン・トマトがなんぼのもんじゃい!”とひねくれた印象を持ちながらも、満足度100%って言うのに謳い文句に牽かれて鑑賞しましたw
で、感想はと言うと…一言で言うとアイデアの勝利とやったもん勝ちかな~と言う感じ。
面白くない訳ではないけど、満足度100%は謳い過ぎですw
自分的にはまあまあw
ストーリーは至ってシンプルで、オーディオブックやサウンドホラーゲームなんかに有りがちな感じで、ゲーム世代にはさほど目新しさは無いかな。
ですが、この手の物は有りがちであっても、意外と誰も手を付けてないと言う事が多くて、作ったとしても、そこにどうプラスアルファ付けるかがキモになります。
そのプラスアルファがどうなのか?と言う事ですが、ほぼ主人公のアスガーの一人舞台ですw
密室劇の様に進んでいって、外との様子は音だけで進行するのは評価が分かれるかな?
アスガーに掛かってくる電話を通じて、事件が展開していくのはアスガーは勿論、観る側にも想像力が試されます。
それがこの作品のキモなんですが、ネタばらしをすると単純でも殆ど人は終盤まで騙されるかな。
それがドキドキに変わる訳です。
警察の緊急通報番号と言うのは退っ引きならない事件が殆どと思いきや、実はたいした事の無い通報も多くて、それでもイタズラで無い限り、邪険にも出来ないので、オペレーターの方はホントストレスが溜まるかと思います。
アスガーは自分の担当範囲を大きく逸脱していく事で、結果として事件を解決に導く訳ですが、それに掛かりっきりになって、暴言も多数w
▼“何杯くらい飲んでる?”
▽“1~2杯かな?”
▼“じゃあ、車の運転は大丈夫だな♪ …ホントは何杯だ?”
▽“5~6杯かな”
▼“じゃあ、慎重に運転しろ”
アウトな会話ですw
▽“接触して、膝を打って痛いの!”
▼“今、忙しいんだ!後にしろ!(ガチャン)”
緊急通報の意味がありませんw
こう言った会話に笑いそうになりつつも物語は進んでいき、アスガーの抱えた悩みも徐々に明らかになっていきます。
ホラーではなく、サスペンスでラストのオチも怖いのを想像してたら、意外とハッピーエンドな感じ。
結構実験的な作品なので、もう一捻り欲しかったです。
映画としてはかなり単調なので、ホント観る人の好みと言うか、評価が分かれる作品で、個人的にはホントにまあまあな感じ。
ワンシチュエーション的な作品では過去に「CUBE」と言う名作もありましたし、最近では「カメラを止めるな!」もある意味ワンシチュエーションなので、あれぐらいの当たり感を期待してたから、ちょっと残念。
とはいえ、こういう実験的な作品は嫌いじゃ無いのでちょっと辛口ですが、珍味系を食べた様な満足感はありますw
騙された-露わになる二重構造
騙された。犯罪捜査もので、優秀な捜査官の技術的手腕に感嘆させるためのサスペンスだと思って観たが、全く違う映画だった。
主人公のアスガーは捜査官としてはまるで駄目だ(劇中場面における彼は捜査官ですらなく、緊急ダイアルのオペレータだが)。
ストーリーが進むほど、彼の人間的な弱さ・未熟さが露呈されていく。
犯罪サスペンスのフレームを借りて見る、社会に適応できなかった人びとの肖像。この構造は面白かった。
イーベンの家族のままならなさ。アスガーからイーベンへの電話は徐々に懺悔の色を濃くしてゆく。
彼は罪を償う決意を固めたようだが、そうして自分と向き合うことが、このように「弱い」人たちが苦しみを逃れるための最初の一歩なのだ。
また映画として面白いのは、ほぼ「音」のみでストーリーを動かした点だった。
映像はオペレーションルームのアスガーから一度も切り替わらない。一貫してこの方法をとったのは大胆だ。
しかしアスガーに聞こえる音から、観客の眼前にはまざまざと現場現場の光景が浮かんでくる。雨を降らせたのも良かった。読書の様な体験だった。
ストーリーとしても、誘拐事件の緊迫感に加え、アスガーの公判について等の謎を配置することで、うまく観客の注意を引き続けている。
マチルデは今後どのようにして生きていくのだろう。病気の母と元犯罪者の父をもって。死んだ弟を思って。
アスガーが最後に電話をかけた相手は誰か?最後に残されたこの問いをもって映画が終わる。
私は彼の妻がその相手だったのではないかと思っている。
超低予算ながら良作。
映像に出てくる主要な登場人物は1人で、あとは声だけの出演。
舞台も通信室とその隣の部屋の2部屋だけという、明らかに超低予算な映画。
その限られた舞台設計でなかなかの展開をしてきます。やはりワンシチュエーションはシナリオが命ですね。
ストーリーのあらすじは映画に慣れてる方なら読める人もいるでしょうが、この映画の肝は最後のどんでん返しではなく、主人公の心理描写をいかに表現できるかなので、主演のヤコブ・セーダグレンの演技を楽しむスタンスで観た方がより面白く観られると思います。
ワンシチュエーションなので細かなところで物足りなさはありますが、ハリウッドでリメイクされるそうなので肉付けの仕方に注目です。
あまりやり過ぎるとこの映画の魅力が無くなってしまいそうですが。
全85件中、41~60件目を表示