THE GUILTY ギルティ(2018)のレビュー・感想・評価
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主人公へ突きつける、過酷な「隠された真実」までの道のり。
◯作品全体
通報の全貌を見通すことができない救急通報司令室で、自分の行く末をも不確かな主人公・アスガーが真実を受け止めるまでの物語。
先行き不透明な展開とその演出がとにかく徹底されていて、息を呑む作品だった。
物語とアスガーを「隠された真実」という共通点でリンクさせているのがまず面白い。通報者・イーベンとその元夫・ミケルの関係性を電話越しに、そしてモニターの情報越しに推測していくことで、頭の中で断定した真実が出来上がる。そうすることで本当の真実が隠れてしまい、事件をより深刻な方向へと進ませるのだが、これはアスガー自身の状況ともリンクする。
アスガーは被疑者を撃ち殺してしまったことで裁判にかけられている。信頼できる相棒・ラシッドからの証言があれば無罪になる状況で、アスガーは「故意に撃ち殺した」という真実を隠そうとする。二つの真実を(意図的でないにしても)隠すアスガーに待ち受けているのは、真実を隠した「罪」だ。
真実を見誤り、ミケルに罪を着せるような状況となったことによりアスガーは苦悩という罰を受ける。そしてその罰により裁判で真実を話すことを決意するが、そうすることでラシッドの証言が偽証になってしまう。そこでまた新たな苦悩を抱え、司令室を去るアスガー。真実を受け止めることの過酷さを、終始容赦なくアスガーへ突きつける二つの「隠された真実」だった。
そして真実に辿り着くまでの不確かで不安定なアスガーの状況を司令室という舞台で徹底的に演出していた。
本作は司令室以外の舞台が一切画面に映されない。パトカーが不審なバンヘ近づくときも、イーベンの家で凄惨な姿になった児童を知る場面でも、映されるのはアスガーの表情だけだ。これにより現場を映す映像とはまた違った緊張感があり、現場にいないことのもどかしさの感情が強く突き刺さる。そして逃げることもできず、ただ真実と向き合わなければならない閉塞された空間が、アスガーの先行き不透明な状況とリンクする。本作ではこうした先行きの見えない閉塞感を「腹の中のヘビ」というモチーフで語っていて、腹を掻き開くと痛みとともに隠された真実が出てくる、といった仕掛けになっていた。
誰も救われなかったように感じられるこの物語は、司令室で唯一外光が差しているドアを開けることで、幕を閉じる。その行き先に微かな希望があることを感じさせるラストではあったが、とにかくラストに至るまでの「罰」が心理的に重くのしかかる、ビターな作品だった。
◯カメラワークとか
・ファーストカットからして良かった。通報を受けるアドガーのボヤけたアップショットで、徐々にTBすることでピントが合っていく。通報の内容が徐々に判明していくのとシンクロさせていたのがすごく良い演出だった。
・イーベンがミケルをレンガで殴る直前の緊張感を赤い受信ランプで演出していた。画面内で使えるプロップが非常に少ない中で、ここぞというところではそのプロップを強調させていたのが巧い。
・長回しの緊張感がすごい。写しているのはアスガーの横顔だけでカメラも動かないのに、アスガーの張り詰めた心情を饒舌に語る。イーベンの家を警察が探るシーンが特に良かった。
・やっぱりなんと言っても画面を司令室内だけで完結させてるのがすごい。途中で場所を変えたりするけど、似たようなプロップと空間の中だけだし、外の光も最後まで一切映らない。確かにネタ切れ感あるカットもあったけど、その徹底っぷりに賛辞を送りたい。
◯その他
・イーベンの錯乱っぷりも容赦なかった。伝わらない言葉、まとまらない話を聞く時間のもどかしさとかを、観客のストレスになることをわかった上で映しているように感じた。アスガーがイーベンに深呼吸を促す場面でも最後までイーベンは深呼吸しなかったり、言葉が通じてない空気感の作り方が上手だった。
最後の電話は何処に。
緊急通報指令室、現場からの電話の音声だけで進行していく特異なドラマ――安楽椅子から動かず難事件を解決するような名探偵なのかと思いきや、極めて感情的で、時に苛立ちを振りまきながらも事件に当たろうとするその姿。責任感というより、その職務にあたるその原動力は、犯人への腹立たしさであると思う。結局、行き過ぎて真相を捉え損ない、それが映画のどんでん返し。最後には落ち着いたけれど、ハッピーエンドであったと云えるかどうか。
追っていた男は叫んでいた。行政も弁護士も何もしてくれない、と。精神病の妻を抱え、そりゃもちろん社会保障や福祉が整っていると見なされている現代社会。それも痒いところには中々手が届く物でも無く、最初は凄腕に見えた司令室ですら、かくの如し。そもそも、もとから息子は死んでいた。殺された後ではどう頑張っても、どうにもならないではないか。
それでも見守っている人達がいる。単なる言い聞かせだと思うけど、主人公は犯人に家族が待っていると言い聞かせた。それは半分は真実だと思う。これまで、孤軍奮闘していたかのような主人公、それでも事件を終えた彼を心配そうに見守っていた、司令室の同僚達の姿があった。そう、誰かがあなたを見守っている、と――。
やっちまった…の顔に笑ってしまった。
警察の緊急ダイヤルのオペレーターをしている主人公アスガー、どうやら訳あって期間限定でこの職務をしているらしい。彼の元に旦那から誘拐されたという女性からのコールが入る。(多分)元刑事で責任感の強いアスガーはオペレーター以上の行動を取って彼女を助けようとするが…
というあらすじで、場面はコールセンターのみのワンシーン。
電話の相手との会話だけで状況が進んでいく。
終盤の女性との会話で、真実が分かってしまったときのアスガーの顔。
『やっちまった…』の迫真の顔に、笑えないけど笑ってしまった。
やっちまった後の狂気のパソコンクラッシャーを見て、
『アスガー、そういうとこだぞ』と思った。
デンマーク産の警察ものは特捜部Qを好きで知ってるが、
デンマークの男は堅物短気正義感マンがテンプレなのか?ってくらい主人公設定が似ていたw(家庭が上手くいってないのも共通して)
想像力を掻き立てられる、小説みたいな映画
想像力を掻き立てられる、小説みたいな映画。最初は「電話だけでストーリー持つのかよ」と思ったけど、あっさり最後まで観れた。物語は電話だけで進行するから、観てる側は状況を想像するしかないんだけど、これがまた小説読んでるみたいで面白かった。カット割やキャスティングを自分で作り出す斬新な映画。誰一人として同じ見た目や状況を想像した人はいないだろう。
声聴いて「この人はどんな見た目なんだろう?今どんな状況?」って想像するのが楽しかった。事件の真相も自分の想像で解明するしかない。軽いどんでん返しがあるんだけど、まあわからなかったよね。声だけの推理は難しい。
イーベンが異常者だと判明してから、かなりグロい想像をしてしまった。赤ん坊のお腹をグリグリ引き裂いて蛇をを引っ張り出して、イーベンの手が血塗れ...こんな想像をしたのは俺だけかな?
最後は保護されたイーベン登場するかと思いきや無し。俺の想像したイーベンと答え合わせしたかった気持ちもある。あくまでこの映画は終始、視聴者の相続にお任せスタンス。
1時間30分という短さがいい。これで2時間超えだったら飽きてたと思う。場所も変わらないし、映る登場人物はほぼアスガーだけだしね。
観るというよりアスガーと一緒に事件を推理する、体験型アトラクションみたいな感じだった。一風変わった映画を観たいって人にオススメ。
逆に、派手な映画が好きな人や、小説を読む習慣がない人には退屈かもしれない。
これは見る小説だ
現場のシーンが一切ないのになんでこんなに面白いのかと思った時、言葉だけを頼りに自分の頭の中で風景や人物像を思い描くのがまさに小説を読んでいるときと同じことをしているなと思った。特に女性の手が血まみれだったと分かるシーンは、小説でもよく使う叙述トリックのようだと思われる。普段から小説を読む人ほど自分の頭の中でイメージを作り上げていきハラハラドキドキできる最高の映画だと思う。あと目まぐるしく変わる状況の中で主人公が誰に電話を掛けるのかを予想するのが楽しかった。
カメラワークの移動もなくここまで面白いとは…
一つの事件で左遷された警察官がコールセンターで働く話。
対面ではなく電話口で事件が進行していくので、
最後まで見ないと真実がわからない仕組みに脱帽。
過ちを犯した、という意味のタイトル回収が
二重にも三重にも回収されていくストーリー展開には目が離せませんでした。
こんな映画をもっと見たい。
主人公の名前とアスペルガー症候群の類似は?
ワンカットでやってもらいたかった。間は小津安二郎監督の影響あり。
例え話で、まさかウクライナとロシアの関係?
とか考えて見ていたが、そんなことは読み過ぎ。
ネタバレあり
『お父さんがお母さんを殺してしまうのは嫌よ』
と言っているのに
『俺は母親の命を助けるとマチルダに約束した』と妄想をしている。
果たして、このセリフは意図的なものなのか?
それて、この作品の評価は変わってくる。
題名から結末は分かった。
もう一度見る。10/3 11時55分より。
アメリカのリメイクと比べれば、雲泥の差。
傑作だ。
嫌な汗が出る
ずっと気になっていた作品。アマプラ見放題に来たので鑑賞。
一つのフロアで展開される作品は人生で2本目。もう本当に嫌な汗がでる。
そして、全て裏目に出る展開。志村ーー後ろー!!!が続きます。
薄暗いフロアの中から、蛍光灯の光がさす外へ向かっていくシーンは一体何を表すんだろう。
余白を楽しむ作品でした
異色の作品。プロットが素晴らしい。
舞台は警察の緊急通報司令室だけ、出演するのはほぼ1人という異色の作品。主演はスウェーデン人、監督もスウェーデン人で初の長編作品とのこと。短くまとまっている(もっと短く出来たかも)し、大きなサプライズは無いとは言えオチもなかなか面白い。主演俳優の演技は実にリアル。主人公がキレ易い、という感じが最初からあったが伏線だったのだろうか?
サスペンスではなく、男の懺悔として。
緊急コールセンターに勤務するアスガーが受けた、一本の電話。
一見シチュエーション・ミステリーのようでありながら、「ギルティ」はその実アスガーの贖罪についての物語だ。
冒頭にいきなり記者と思われる女性から電話がかかってくる。
「明日のことで、あなたの言い分も聞いておこうと思って」とは、だいぶ不穏な物言いだ。
ただの内勤の警察官では無さそうな、そんな予感を帯びながら物語は始まる。
「ギルティ」は88分とかなり短い。だから、冒頭の電話はアスガーの過去に暗さを感じさせると同時に、「(禁じられているのに)勤務中に携帯を使用する」アスガーの傲慢さも示唆する複合的な演出を担っている。
ただのシチュエーション・ミステリーだと思って観ていると、足元を掬われる。
偶然かかってきた「誘拐されている女性」の緊急コールを紐解きながら、実際に展開されるのはアスガーという男の「人となり」であり、アスガーの抱える「蓋をしてしまいたい本質」だからだ。
電話の向こうで助けを求める女性を救おうとするアスガーは、表面的に見れば「正義のヒーロー」だ。しかし、彼に捜査の指揮権はない。
命令することも出来ず、現場に行くことも出来ず、ついには完全に職務を逸脱し始めるアスガーは、どこか危うい。
明確な状況も明かされず、ブースからアスガーがかける電話のやり取りや、周りの職員たちとの会話で、観客なりのアスガー像を組み立てていくしかない。
事件の方も、アスガーの電話相手から入ってくる情報だけが頼りだ。助けを求めてきた女性や、パトカーに指示を出す司令部や、捜査員から入ってくる情報は、当然ながら音声のみ。
表情も見えず、様子もわからず、受話器の向こうから与えられる情報だけで全容をつかもうとする他ないのは、アスガーも私たち観客も同様である。
視覚情報を奪われた闇の中、手探りで事件の輪郭を探り出す。アスガーと同じ行為を通じて、電話の向こうにいる女性を想像する。
トランクに閉じ込められたか弱い女性。
彼女を連れ出した卑劣な男。
想像の中では善と悪がくっきりと別れている。自分が作り出した想像に現実を当て込んでいくような推理。
事件の全貌が掴めたとき、アスガーという人物像も完成する。その二重の物語が見事。
映画を観ている間、多分誰だってアスガーにイラつくはずだ。傲慢で、向こう見ず。自分勝手で偉そうで、腹が立つ。
だが、それであっている。アスガーにイラつくのは、アスガー自身も同じ。
その苛立たしさこそ、故意に犯罪者の少年を撃ってしまったアスガーのわだかまりだ。どうして自分はこうなってしまったのか。
事件が収まった後、一人電話を片手にドアの向こう、光の中へと消えていくアスガー。見えていなかった事実を、しっかりと受け止めるために、アスガーは己の罪と向き合う。
職務を重ねるうちに歪んでしまった「正義」に再び気づくために、アスガーはこの事件に出会ったのかもしれない。
あっという間に見終わってた
ワケありで緊急オペレーターに就いている主人公アスガーが、今までの経験を駆使し颯爽と事件を解決していく!
と思いきや、まさかのミスリード。
それに気づいたアスガーの無音な部分も鼓動が跳ね上がっている様子もつぶさに伝わってくる。
ワケありの原因も、恐らく経験から暴走して殺す必要の無い加害者を死に至らしめたのかと想像してしまう…
根が正義なだけに罪には問えないと元同僚もウソの証言を受けてくれたのだろう…
最後、イーべンに告白したアスガーの言葉も、彼女を救おうと誇張した話をしたのか素の言葉だったのか、これは汲み取れなかったけど、ワイはウソだと信じたい
予告は観るべからず
緊急通報してきた女性イーベンと対応オペレーター、アスガーとの会話劇を主に物語が展開されていく。
イーベンは前科ありの元夫の車で拉致され、イーベンの家には子供が残されているのだが…
残念なのは、イーベンの娘との通話内容と、予め観てしまった予告の示唆で事件の真相が少し読めてしまった…
そのせいかアスガーの独断捜査や、勝手に元夫とコンタクトし糾弾する姿が独り善がりにみえてイライラしてしまった。
現場へ向かって助けに行けないもどかしさはわかるけど…!
実際に真相を知ったアスガーは、通報室に左遷された原因でもある、容疑者を故意に射殺した自分なりの正義が、ただの独善であったことをまざまざと突きつけられる。
今まで一見些末な通報に対して、自業自得とおざなりに対応してきたアスガーに、元夫の「今まで誰に助けを求めても無駄だった」という台詞が刺さる。
でもラスト、罪を自覚、自責したアスガーがイーベンの命を引き留める姿は懸命で素晴らしかった。
低予算苦肉の策
低予算苦肉の策って感じかな。
流石に全てを部屋から一歩も出ずに話を進めるのは単調過ぎるのではないかと。
以前見たTEH CALLというやはり911オペレーターが電話だけで誘拐された少女と緊迫したやり取りで話を進めていく映画があったが、そっちはメインが司令室だが外でのシーンもあって単調にならないようにしていた。
このギルティは全てをこの部屋の中で進めるとするならばもっと、トリックや意外な展開を取り込むべきだろう。単に夫が誘拐犯かと思わせつつ2転3転するくらいのアイデアが必要じゃないかと思う。
ただ低予算映画がアイデアで勝負するのは嫌いではないので、こういったジャンルは評価したいと思うが、この内容であれば30分でまとめてドラマにすれば良かったのではないと思った。
ネタバレあり
よかった。
主人公は訳あって警察の緊急ダイヤルのオペレーターをしてる。そこに誘拐されてるという女性から電話がくる。
感想
最初の方で主人公の電話対応を見てマニュアル通りではないのではないかと心配になった。
ルールを逸脱する人って感じた。彼の抱えている問題と繋がってる。
途中、弟の部屋で一緒にいるようにと言うところは悪い予感がしていた。
真相は終盤まで気づけなかったから楽しめた。
最後救いがあり、余韻はそんなに嫌な感じではない。
彼の行動で傷つけた人もいたが助けた人もいた。
見ていて、ハラハラは少しで
もっとうまくやれないのかとイライラした。
これは彼女を助けたいと思って真剣にみてたから。
見てしばらくしてから思ったこと
罪って善行で上書きすることも拭うこともできないんじゃないか。当たり前のことだけど。
主人公の罪はずっと残って、傷ついたものは傷ついたまま。
罪と向き合おうと思ったら気づいてつらい。
良いことをしてもなにも変わらないけど、自分が少し救われるかも。
徐々に明かされていくタイトルの意味
これは本当にすごい。
主人公と一緒で途中まで本当に罪を犯してしまった人を間違えていました。
(というよりも全く考えもしていなかった)
実は誘拐犯と思われた男性は犯人ではなく、純粋に元奥さんを救いたいと思っている人でした。
そして、オリバーを殺害した本当の犯人は…。
終始主人公しか目に入らないので主人公と同じ感覚というか心理というか
誘拐犯と誘拐された被害者という先入観が一気に崩された感じだった。
確かに考えてみれば、娘との電話に代わると言ったり、警察からの電話に対応したりしていたのは犯人像とは異なるよなぁと。
(外国だとそんなもんなのかなぁとも思った)
最後は主人公が自分の罪に向き合うように仕事場を去るんだけど…
なんだか背中が寂しそうに見えたのは私だけかなぁ…。
感情の起伏が激しすぎる主人公
緊急通報を受けるオペレーターの話しですが、通報してきた側の人は電話口の音声のみで、物語がオペレーターのいる1室でずっと進んでいく感じが個人的には飽きてしまいました😭
また、後々イーベンが息子を殺した精神病患者だとわかるわけですが、それ以前にアスガーも急に怒り狂ったり、なかなかの異常者に見えてしまいました笑
最終的にも何を伝えたいのかよくわからなかった😫
TSUTAYAで先行レンタルしてて気になってた
その後借りられないまま月日が過ぎ、今更見ました。デンマークの映画だそうで、普段見るアメリカ映画より演技がだいぶ自然。これほとんど撮り直ししなかったんじゃないかなと。
勢い良くヘッドセット外そうとして、手が滑って顔にペチンッ!イタッ!て顔するんだけど、そのまま続行。撮り直し無し。こういう方が現実的だし面白い。
アメリカみたいに、最初はカラッとした雰囲気から始まって徐々に…ではなく、最初から仄暗い雰囲気で緊張感がある。とはいえアメリカ映画みたいにずーっと張り詰めてるというよりは、じっとりとイヤーな空気が延々と続く。
北欧のはほとんどノルウェーの作品しか見たことないけど、それに似た雰囲気だと思いました。ノルウェーの映画は、明るい話でもファンタジーでも、どこか仄暗い。
日本人はこういう雰囲気のも結構好きだと個人的には思うんですが、日本はアメリカの映画ばっか輸入しますね。食べ物と同じでアメリカのを輸入するよう圧力でもかけられてるんでしょうか。
日本の映画界は、日本とアメリカでほぼ半々、他の国のは5%くらいしか入れてないとか。で、その5%のうち、ほとんとが韓国。あれだけ韓国韓国言ってる割に、韓国の作品すら5%もなかったんですね。そりゃ北欧の作品なんて全然見かけないわけだ。
ロシアの映画なんかも割と好きですが、こちらも明るい話でも何かちょっと仄暗い。実はあんなにカラッとしてるのってアメリカくらいのもんなのかな。
あらすじ:
主人公のアスガーは警察官だが、今は訳アリで緊急ダイヤル対応係として務めていた。緊急ダイヤルとは名ばかりの、酔っ払いやヤク中らしき奴らからばかり掛かってくる電話番をアスガーは不服に思っていたが、1人の女性イーベンから今まさに誘拐されているという電話が入ったことで、アスガーはイーベンを何とか助けようとこの事件に入れ込んでいく。
主人公以外ほぼ音声だけで進行する作品は他にも見たことありますが、正直こういう作品は、どこかしらでちょっと退屈するのは覚悟しといた方が良いです。映画=映像作品なのに、見た目に動きがほとんどないし、低予算丸出しの作品も多いので。
ても、本作は他より動きはある方でした。アスガー役の俳優が、この主人公に抜擢されるだけはある演技力で、なかなか渋いしモロに「ヒーローです!」って感じじゃないのが現実的で良い。
最初から明らかに訳アリっぽい主人公。態度もあまり良くなく、職場の他の人達とも上手くやってるとは言い難い雰囲気。
まあ、緊急ダイヤルの仕事を明らかにナメてるというか、「俺にこんな下らない仕事をさせやがって」な態度だから、周りの人もそりゃ嫌になるわなといったところ。
とはいえアスガーの気持ちも分からなくはない。ヤク中が明らかにヤバそうな地域で車放置してたら何か盗まれたとか、酔っ払いがチャリで転んだとか、ウンザリするような電話がしつこくかかってくる。緊急ダイヤルなのに全然緊急じゃない電話ばかりなので、どうせ大した内容じゃないだろ…とやる気が無くなっていくのもわからなくは…ない、もしもの事があった時後悔するのは間違いないんだけど。
ただ、そういうやる気のなさとか、そういう仕事自体を見下してるとか、そういった理由は見てる側にも何となく理解できても、だからといって「本当の」緊急通報がきた時のアスガーの急な入れ込み様も不気味。何かのスイッチが入ったかのようにイーベン救出に精を出し始め、どう見ても理性的じゃないし、人助けしたい気持ちはあるが色んな人に高圧的。そしてアスガーの性格で最も致命的なのが、自分ひとりの思い込みで勝手に物事を進めてしまうところ。
『ミスト』と同じで、主人公が悉く間違った選択をしてしまう。というより、「映画なら」それでヒーローになれる。でもこれは現実だと言わんばかりに、主人公が正しいと思ってやったことが全て裏目に出る。
結局アスガーはヒーローではないし、これはヒーロー映画ではない。だから、主人公がやったことが都合良く全てうまくいって大団円、なんてことは有り得ない。
「これが現実なんだよ」と突きつけてくるような、絶望と小さな希望を残す終わりはトム・ハーディ主演『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』をちょっと思い出しました。
演出の仕方も見事で、最初はアスガーが皆と同じ部屋で仕事しているシーンから始まりますが、この薄暗い部屋から暗い、孤立した部屋に入っていき、そこに閉じこもる。そしてその後、再び薄暗い部屋に戻ってくる。ラストは部屋から出て、明るい廊下の先へと歩いていく。
アスガーの心境を明暗で表しているのかなと思います。とすると、やはりラストは「本当の」幸福への道をアスガーが歩み始めたという表現なのでは。
「ハッピーエンドほぼ確定の作り物」ではなく「現実」として、見ている側に絶望を味わわせる、この表現力が素晴らしい。
とはいえ…やっぱりストーリー上の都合なんだろうけど、「ん?」と思う部分は結構ありまして。一応どんでん返し系のストーリーなんだろうけど、あまり驚きはありませんでした。
暴行罪で逮捕歴のある父親が、赤ん坊のいる部屋でナイフを持って怒鳴り散らし、母親の髪を掴んで引きずって行った…という話を聞いて、当然のように赤ん坊が無事だと思っているのもおかしな話では。普通、赤ん坊が怪我してないか、無事かどうか真っ先に訊かんか?
6歳とはいえ、弟オリバーがバラバラに惨殺されてることを頑なに言わず、というか理解すらしていないかのように「弟のそばにいろ」と言われて平然とバラバラ死体の傍にいるマチルデも変だし。
イーベンが自分の息子を手にかけたことに自ら気付くのも唐突だし、ミケル曰く「相談しても誰も助けてくれなかった」のも謎。ミケルに逮捕歴があるからとも取れるけど、それにしてもイーベンだって精神病院にいた記録があるのに、そこまで誰にも信用されないのもおかしな話。確認ぐらいはせんか?
ましてやオリバーが殺された後なんて、わざわざ言わずにいる理由もない。もう後がないのだから、「いやまじで俺じゃねーから!」くらい言っても良いもんだと思うけど。失うもんねーだろお前。
全員が全員、ちょっとだけいい感じに隠し事したせいで成立してるサスペンス。
色々とツッコミどころはあるものの、(ほぼ)一人芝居系作品の割には飽きさせない作りで良かったと思います。
いやしかし、(ほぼ)一人芝居系の作品の主役に抜擢される人は流石の演技力ですね。上に挙げた『オン・ザ・ハイウェイ~』のトム・ハーディ然り、『チェイサー』のハル・ベリー然り。脚本がイマイチでも最後まで見させる俳優って、やっぱ演技力がハンパないんだろうな。
社会の不条理に何となく不満を持ってる人、ジワジワいや~な雰囲気の映画が好きな人におすすめ。割とスリリングで(ほぼ)一人芝居系作品にしては退屈するシーンも少なめなので、一人芝居系が初めての人にも。
えっ…
お腹にヘビ… えっ…
どんでん返し映画。
画も変わらず、音楽も無く淡々と進むのに臨場感がすごい。電話の声だけでこんなにもストーリー展開出来るなんて驚き。
時間も短めで、最後まで飽きること無く見入ってしまった。
個人的には良い終わり方だったと思う。
飛び降りる寸前のイーベンを説得の末保護出来たし、レンガで殴られた濡れ衣夫も生きているようだし。
主人公の事情が少しずつ明らかになっていく過程も、最終的に罪を認めるかたちになったのも良かった。
素晴らしい映画だった
コストが一ミリもかかっていない本作。映る場面は一つだけ。コールセンターだけである。キーボードを台パンでいくつも壊しながら本作は一つの電話だけで進んでいく。
こういった類似作品は数多くあれど、「想像」させるその無限大の怖さや臨場感が半端なかった。時間も1時間半と見やすく、緊迫し、展開が二転三転していく。そしてその情報の小出し具合も完璧である。
電話番号は絶対覚えろと言われた。(”暴力親父”がそんなこと言うのなんで?)
子供部屋に入っちゃいけないよ。??
水族館ね。ふんふん。
サメが好きなの。ふーん?????
この小出し具合と、意味が隠されたアイテムの散りばめ方、真実へのつなぎ方も小説的で良かったと思う。
「もう嘘は嫌なのよ」「何度も助けてといったのに誰も助けてはくれなかった!!」というセリフがあらゆるところに反響して乱反射している。嘘を明日つくはずの主人公と冒頭の風俗で強盗にあった通報者は”自業自得”だから駆けつけるのは後でいいと言い放つシーンにも反射している。暴力事件を起こしたレンガ職人の親父の「妻のメンタルブレイクで子供が危ない」という言い分は警察や行政は全く聞く耳を持たなかったのだろう。
トルネードような話の巻き上げ方である。
そして最後に「あなた、いい人ね」とその言葉で終わっていく。
昨今は意味のない描写が多い映画が多いけど、久しぶりに爽快な感じを味わった。配属当初からイライラしてる主人公がイライラしているわけや、子供が番号を覚えた理由などが間接的な情報から自分で「わかった!!!!」となる瞬間はゲームにも似た楽しさがあった。
こう考えると、途中で「酔っ払って自転車に乗って怪我をした通報者」や「僕も好きだよ」というセリフにもなにか意味はあったのだろうと深読みしている。あそこでなぜ「好き」といったのだろうか。普通「好き」とは言わないだろう。どこか小説的に感じた。だが、その不思議さもいい!
本作は久しぶりに吹き替えで見たのだけど、違和感ゼロでむしろ良かった気がした。
まさかの展開
被害者だと思ってた妻が加害者。
加害者だと思ってた夫が被害者。
妻は精神患者。
誰もが騙される。
騙されてからの展開に期待したが
リアルだからこその展開があまりなかったかもしれない。
緊急ダイヤルだけの絵で魅せたのはお見事。
日本のドラマのボイスの原作的な作品。
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