劇場公開日 2019年5月17日

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「ドキュメンタリーとドラマの秀逸な融合」アメリカン・アニマルズ andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ドキュメンタリーとドラマの秀逸な融合

2019年5月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

作りとしては最近よくテレビで見かける「再現ドラマ」的構成である。ドキュメンタリーパートでご本人が登場し、ドラマパートで彼らの過去の行動を見せるというやつだ。だがしかし、さすが映画としての「画」の繋げ方は秀逸だ。ドキュメンタリーとドラマシーンが非常に美しく繋がり、単なる実録ドラマに止まるのを防いでいる。演じている彼らは特段本人に似ていないのだが(特にバリー・コーガンは全然似てない、本人はどっちかといえばアンドリュー・ガーフィールド似だ)、うまく引き込まれる。
この本人語りが若干相互矛盾を含んでいるのも興味深い点だ。そしてそれに応じてくるくると変わる映像。結局何が真実なのかは本人たちに聞いても分からない。誰かが嘘をついているというより、記憶というのは本来そんなものだと思うし、何ならなかったことすら本人の中ではあったことにできるかもしれないものだ。
犯罪モノは頭脳戦で痛快、駆け引き、という展開が劇映画の醍醐味だが、本作品はまさに「True story」であるため、精緻に見えて何から何まで杜撰だ。彼らはどことなく現状に満足していなくて、それを乗り越える「冒険」として高価な本の強奪を企むわけだが、とにかく想像力が圧倒的に足りない。リスクマネジメントもなにもあったものではない。そして「人を傷つける」ことを理解していない。
当然のように破綻して刑期を終えた後でも、彼らにリアルさはあるようでない。ある意味では「青春の苦味」は存分に味わったのだろうが...。
側から見ていればこういうのは馬鹿だなー、で済むのかもしれないが、願望自体は誰にでもあるものだ。彼らも計画だけで満足できたなら、最初でやめていたなら...と思わずにはいられない。

andhyphen