「背徳のスパイスと強かな罪の香」アメリカン・アニマルズ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
背徳のスパイスと強かな罪の香
小さな世界で日々多くの人に紛れてただ生きる私にとって、背徳のスパイスや強かな罪の香は時に憧れの対象になる。
非情な殺し屋になりたいし、スマートな怪盗になりたいし、ドロドロの不倫がしたいし、芸能人と繋がってSNSで匂わせしたいし、人肉は食べたい。
きっと誰しも少しくらいは同じ思いを抱いたことがあるんじゃないか。
しかしそれらの「特別」の裏に悲しむ家族や失われる命や傷付く人間や閉ざされる己の未来が無ければ、それを考えなければ、の話なのである。
現実ではどうなるかが容易に想像できるから、妄想と脳内現実の別世界だとか、映画や小説などの創作物だとかで仄かな欲望を昇華させているんだから。
二重になった登場人物たちやドキュメントタッチのストーリーに引き込まれつつ、演出の隅々まで光るセンスと工夫に頭を殴られるような面白さを感じる作品。
映画のファーストカットが好きだ。
予告編と映画館マナーの映像が流れ、劇場内が暗くなり、スクリーンが広がり、製作や配給のロゴムービーが流れ、いよいよ本編の掴みとなるファーストカットが映し出される。一連の流れが好きだ。
週に何本、一日何本観ても、どんな名作でもどんな駄作でも、ファーストカットへのワクワク感は作品の度に更新されるのである。
本作ではロゴムービーの頃からジャングルを思わせる鳥や動物の鳴き声が聞こえて、「さてどんな初対面になるんだろう」とドキドキした。
そして画面いっぱいに出てくる映像に胸掴まれる。
何十年も前から世界中で膨大な量の作品が創り出され続けている映画において、完全に新しい表現や完全に新しい題材を扱うのはとても難しいことだと思う。
しかし、細かい工夫を重ねて新鮮で刺激的なものを次々と提供してくれる意欲ある人たちがいる限り、映画の表現はこれからも広がり続けるんじゃないか、とも思う。
本人達と家族、関係者と被害者の実際のインタビューを挟み、再現ドラマのように演技と創作の映像を進める本作。
フィクションでもドキュメンタリーでもない狭間のバランスがとても新鮮に感じた。
15年前の事件を語る上で時折表れる食い違いもご丁寧に描写。
スタイリッシュで綺麗で無骨でスピーディーな演出とカメラワークや映像の切り替えに心奪われ、これらの表現方法だけで興奮してしまう。
オープニングでは猛禽が小動物を捕食し、エンディングでは鳥たちの家族や感情を思わせる絵が入るのも非常にグッとくる。
上下反転した映像に「これから私の価値観がひっくり返されてしまうかもしれない…!」とヒリヒリする。
映画へのワクワク感や映画の楽しさ、可能性の大きさを改めて感じることの出来る作品だった。
こんなに好きにさせてくれて夢中にさせてくれてありがとう。と、全ての映画に関わる人たちに伝えたい。
作品ごとの好き嫌いは置いておいて。
ストーリーと言えばいいのか回想録と言うべきか、とにかく映画の本筋もとても面白かった。
着地点も秀逸。
計画段階、肌を刺すような好奇心やゾクゾクする興奮を味わう4人と共にテンションを上げた先の現実。
蓋を開けてみれば、犯罪エンタメ映画のようなテンポの良い緊迫感など到底演出できないもので。
グダつく作戦、大声で怒鳴り合い罵り合い喚き合いジタバタと進行するその中身のみっともなさよ。
大きなリスクを冒した先に得られた物とは。
口籠もり涙ぐむ本人達の様子からもう全て全て窺える。
彼らと自分の指の間からサラサラと色々なものが流れ落ちていくのが目に見えるようだった。
特別な人間なんかじゃない、と言われる。
その通りだと思いつつ、敢えてその言葉に私は異を唱えたい。
俯瞰で観れば私の人生など平凡な日常かもしれないが、毎日色々なことが起きて、些細なことですら特別だと感じ、私以上に特別な人間なんていないんじゃないの、くらいの心持ちで生きているので。
犯罪をしようとしなかろうと特別も平凡も皆持っているものなんじゃないのと言ってやりたい。
いや私も自分の現状を惨めに感じたり人生に落ち込んだり未来に失望することがあるけれど。
ポジティブとネガティブのどちらかに針を振り切るのは難しいから。
それでも何とか自分だけは自分を愛してあげたいじゃない。この人生では私以外主人公になれないじゃない。
綺麗事だと切り捨ててなんか欲しくないじゃない。
しかしこの事件を題した映画に出演したり本を書いたりなんて、それって結局「分かりやすい特別」になれる道じゃないか、とふと思ったり。
捨てきれないね。自覚は無いのかも。でもそれで良いのかも。
どうせ共感も理解もできる。私が彼らだったら今何をしているんだろう。
結論が出ても一筋縄ではいかないのが人間。
4人それぞれの背景とその奥、日常に戻っていく様に何故だか涙がボロボロ出てきた。
いつかは死ぬんだ、さてどう生きてやろうか。
さてどう生きてやろうか。に痺れちゃいました!!!
そして人肉好きのスタンスをずっと貫いているのが地味に好きですw
身体にぐさぐさ刺さってくる映画でしたね。
昨日見たまま心が憑りつかれたような感覚になってます
何者でもない、ただの普通〜の人間です笑
よくあるケイパームービーでは絶対に得られない、深い痛みと深いカタルシスで頭を殴られ、ついめちゃくちゃ語ってしまいました…。
映画の始まりはどんな作品でも良いものですよね!
作り手さん達のこだわりも強そうですし。
手にしっかり持っていると思っていた、自分達の価値と成功と結果の対価、社会性などそういうものが砂みたいに落ちるイメージだったのでそう表現してみました。
彼らのような事件は起こさなくても、我々が普段感じる後悔とはそういうものですよね。
凄く褒めてくださってありがとうございます…!
でも絶対、私の感想文なんかより映画のほうが面白いです!笑
人肉に関しては個人的な欲望がダダ漏れてしまいました笑
KinAさんっ!
一体全体ぬぅわぁに者なんーっ(*_*)
この作品から、こんなにも深ぁ~く考えを発展?想いを馳せ巡らせる脳細胞はドーなっとーぉんよー!恐れ入りまするぅ(^。^;)
ふと、映画上映開始時の描写を挿入する感性にも驚かせれますワ☆ふふ、わたしもKinAさんと同じくファーストカットにいつも胸躍らせてますよー♬非現実世界への没入感に期待しまくりですぅ~(^_^)/
「指の間からサラサラと色々なものが流れ落ちていく・・・」って言い表し方も凄くイイっ!うぅぅ、最近、わたしが引き起こした“後の悔い先に立たず”を思い出しちゃいましたけどもネ(^。^;)
しっかし、KinAさんのレビューは、映画より面白いですね!今回は、より人生哲学的で、いろいろと考えさせられましたワ☆
んンン~?!、「人肉を食べたい」と誰しも少しくらいは思い抱く???KinAさん、だいじょーぶですかぁー(^_^;)いや、それでこそ、そうじゃなきゃ、そうこなくちゃKinAさんに有らずっ!でしょーかね♬妄言多謝。