劇場公開日 2019年5月17日

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「ドラマと現実が虚実綯い交ぜになった異色作」アメリカン・アニマルズ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ドラマと現実が虚実綯い交ぜになった異色作

2019年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ケンタッキー州の大学生スペンサーは退屈な日常をひっくり返すような何かが起きないかとぼんやり期待しながら日々を過ごしていた。そんなある日大学の図書館に貴重な鳥類図鑑が保存されていることを知ったスペンサーは、同じく退屈な日常に悶々としていた悪友ウォーレンに強奪しないかと半ばシャレで持ち掛けたところ大乗り気、さっそく綿密な犯行計画を練り始めるが・・・からの実話サスペンス。

冒頭に「これは真実を元にした映画ではない。真実の映画である」と威勢のいい啖呵を切る本作は虚実綯い交ぜとなった特殊な作品。まずドラマにドキュメンタリーが混じり込んでいて、実際の実行犯たち本人が出てきてそれぞれが当時見聞きしたことを語ると、それがドラマに反映される。しかもそれぞれの記憶が微妙に食い違っているのもそのままドラマにしているので、登場人物がいるはずの場所がカットが切り替わると別の場所になっていたり、出会った人物の服装が入れ替わったりとデタラメ。しまいにゃドラマパートに実行犯本人が映り込んだりして呆気にとられます。そんなムチャクチャな演出はちょっとした出来心がどんどん雪だるま式に膨れ上がり暴走するドラマにガソリンを注ぎ込み、ポーンと投げ捨てたかのような結末にはとんでもなく重たいテーマが滲んでいる。今まで観たことがない破天荒な作風に圧倒されました。劇中で言及される映画やクレジットに被さる歌にもニヤリとさせられます。

これは相当レベルの異色作でホントにヤバいレベルの傑作だと確信していますが、観客が私ともう一人しかいませんでした。・・・もったいない!

よね