「3年前のあなたはあなたではない」まく子 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
3年前のあなたはあなたではない
映画として面白いか、面白くないか、と聞かれたら、残念ながら後者だと思います。
原作(単純な少年の成長譚などではない)を自分なりに解釈し、さて監督はどう表現するのだろうか、という興味がある方や元々原作者の世界観が好きな方でないと楽しむのが難しいのではないでしょうか。
※半世界の稲垣吾郎さんと同様、草彅剛さんの親父も結構いいな、という点は楽しめます。
人間の細胞は約60兆個あり、部位や年齢による差異を勘案しても、概ね2〜3年で全ての細胞が入れ替わるそうです。
つまり3年前に会った友人は細胞的にはそっくり入れ替わった全く違う〝粒〟で出来ている人なのです。
第二次性徴は思春期に表れ、本人も気付かないうちに繰り返される細胞の入れ替えとは異なり、身体の変化と自分の性(男であること、女であること)を否応なく自覚させられます。
脳の細胞は約1年ですべて入れ替わるらしいのですが(生物学的・医学的に何が起きているのかはわかりませんが、たぶんDNAとかRNA転写とか呼ばれるものなどの働きで記憶などもコピーされていくということだと思うのですが、なんだか凄くないですか?)、その脳が作り出す物語については、なぜ身体の変化と同じように受け入れることができないのだろうか。
キン○マのオェーについてはそのまま受け入れるのに、ドノや類の話はなぜ疑いから始まるのか。
脳の働きだって本来はシンプルで、その個体にとってはある種の必然、つまりその人が生きていくために必要な物語の創出から生じているのではないか、という前提を受け入れることが大事なことなのだと思います。それがきっと『人を信じる』ということなのではないでしょうか。
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