夜明けのレビュー・感想・評価
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広瀬監督の今後が楽しみ
地方の木工所という男臭い世界を舞台にしているが、奇妙なほどにフェミニンな印象を受ける作品だ。男の柔らかい部分というか、弱さのようなものが非常に上手く描かれた作品だ。
ある過去を持って逃げてきた青年と、息子を失った過去から前に進めない中年男性、二人は共依存の関係になりながら前に進みたくてもがく。
前半は青年の素性の謎とともに、青年側の葛藤を描いているのだが、いつの間にか中年男性側に視点を移動しているのが巧みだ。男はいくになっても弱い。しかしその弱さを批難しないのがこの映画の良いところ。誰にでも立ち止まってしまう時はある。それは悪いことだと思わなくていい、ゆっくりでいいいので前に進む力を貯めればいい。
広瀬奈々子監督は脚本、演出ともに荒削りな部分はまだあるが、確かな実力を示した。これからが楽しみな監督がまた1人増えた。
新たに名前を覚えなければいけない監督
是枝裕和の愛弟子うんたらかんたらとか言う煽り必要か?と思うほどの素晴らしい脚本でした。
終始、「ああ」とか「おお」とか声が漏れてしまうほど感心するシーンの連続で、終盤は涙ぐみながら観ていた。
観る前の期待以上だったし、柳楽優弥、小林薫、共に良かった。特に小林薫さんは、今までそんなに良い俳優だと思っていなかったのもあり、感嘆するしかない。
父親の期待に応えられず、それに反発することも出来なかった光。ガスが漏れていることを知っていながら引火すればいいくらいに嫌いだったアルバイト先の店長が、その火事が原因で亡くなった。光はその事で自分を責め自殺を図り、川で倒れていたところを哲朗に助けられるが、ここではその事は語られない。
哲朗の家で名前を聞かれた光はヨシダシンイチと名乗る。ここで哲朗が一瞬固まり、仏壇に目をやる。なんだ?と感じるのだが、やはりここでその理由は語られない。
翌日、木工所のスタッフがヨシダシンイチの名前で固まり、夜の居酒屋では叱られる店員を光は見つめる。やっぱり、なんだ?と思うのだが、理由は語られない。
その場ですぐには語られない、ん?なんだ?と感じる場面がずっと続き、引き込まれる。
伏せられた息子の写真。そのままにされた息子の部屋。哲朗が息子の死に向き合えていない事を表す。
光は哲朗の息子の名がシンイチあることを知り、それまでやる気のなかった木工の仕事に、カンナの刃研ぎを皮切りに打ち込み始める。
光という自分からシンイチになることは自分を無くすという意味で自殺と同じだ。
シンイチの服を着て髪を染め、光はシンイチになろうとした。哲朗の息子になろうとした。
湯タンポは体を温めるものだ。印象的に何度か登場する湯タンポ。哲朗は光のために、光は哲朗のために湯タンポを用意する。
哲朗と光はお互いがお互いを温め合う存在なのだ。
息子を求めた哲朗。自分を認めてくれる父親を求めた光。自分のせいで息子と妻を死なせたと感じている哲朗。自分のせいで店長を死なせたと思っている光。
心の穴を埋めるためにお互いが必要だった。お互いがお互いの湯タンポだった。
そのあと出ていこうとした光に対し、息子シンイチと最後に交わしたであろう場面と同じ状況になる。口論になり殴ってしまう。
去ろうとする光に「お前が必要なんだ」と言う場面は涙を誘う。本当のシンイチに言えなかったであろう言葉を言えたのだ。
光にとってそれは父親に言われたかった言葉でもあった。
そして親子のような関係が完成していく。と、ここまでが前半。
後半に入り、哲朗はシンイチに求めたものを光に強いていく。父親の言いなりで反発できなかった光は本当の父との関係のように陥っていく。
疑似親子になったことで本当の親子との失敗に戻っていってしまう。
光は髪を元に戻し、シンイチから光に戻ることで状況の脱却をはかる。仏壇のシンイチの写真も立てた。シンイチでいることをやめようとしたのだ。
それでも哲朗は光にシンイチを重ねる。
それに対し、今まで出来なかった反発をし光は去っていく。
「待てよシンイチ」と呼び止める哲朗は止まらない光に「光」と叫ぶ。
光は光でありシンイチではないのだと受け入れた瞬間だった。
走り去った光は、足を痛めて靴を脱ぐ。恐らくサイズの合わないシンイチの靴だったのだろう。シンイチから光に戻る巧妙な演出だ。
そして朝の海に出る。タイトルにもなっている「夜明け」だ。
「夜明け」が新しい始まりを意味するならば、作品内で二回出てくる。
一度目は光が倒れていた朝。哲朗と光が疑似親子になっていく始まり。
二度目がエンディング。哲朗と光の心のしこりが解消され、新しい何かの始まり。かもしれない。
踏切の向こう、「シンイチ」ではなく「光」を迎えに来ている哲朗の姿があるように思う。
約二時間でこのボリューム。巧妙で緻密な隙のない脚本。
一から十まで言葉で説明されないと理解出来ない人には面白くないかもしれないが、控えめに言って最高でした。
また一人、名前を覚えなければいけない監督が誕生した瞬間でもある。
え。
エンドロールになって びっくりした。
あまりにも観客に 投げすぎじゃない?
柳楽優弥は 最近の最大のオシ ですので視聴。
再婚相手の娘のセリフが
どっちも(2回とも)いらん と思ってしまった。
そんな事 子どもに言わせなくても
堀内さん演じる再婚相手の 小林薫演じる男の気持ちがどこかに熱中していくことに対する焦りや妬みのような感情は見ている側はとっくに読み取ります。
「おじさんはお母さんのこと好きじゃないから」
は?
子どもが言いそうで言わないやつ。
全然リアルじゃないし、そんないらんセリフより
必要な映像を。
独りよがりで未熟な作品だった。
ラストの行動に納得できず
川辺に倒れていた青年を保護した哲郎は、シンイチと名乗る青年が何かを隠していることに気づくが…。
柳楽優弥主演作。自分の存在意義を見つけられない青年と家族としての依存先を求める男の関係は魅力的だが、ラストの行動に納得出来ずスッキリとした気分にはならない映画でした。
救われない
結局嘘をつき続けることなんてできない。きっと自分のことがイヤになるし、こんなんでいいのかと何度も何度も自問自答していろいろな思いを抑えて生きていくことになる。とりあえず、何も救われない映画だったなぁ
希望はあるのか
観ていてもやもや感がずーっとあった作品
主人公の柳楽優弥はなんかしらの問題を抱えて
それを見せつけられ心がもやもや
彼を助けて彼の世話までする
小林薫にも、もやもや
普通助けた後には警察とかに任すだろうに
彼は柳楽を家に住まわせる
柳楽は秘密があり小林はその秘密を知るが
「2人だけの秘密にして生まれ変わればよい」と言う
誰もわからなければよい
しかし、そのシーンを観ても私は良かったと思えなかった
観ていて楽しいとか爽快とか感動とかはなく
ただ人間の苦しい生きざまを見せられているような
でも作品としては人間の心の闇を考えさせてくれる内容だと
思った
柳楽優弥はどこへ行くのだろうか?
夜明けは来るのだろうか?
人生に絶望した男の話
ドキッとしたシーン。男が職場の先輩とラウンジで飲んでるシーン。店の女が男の先輩に「あの男見たことある」と告げた。「近くのファミレスでバイトしてた。その店火事で燃えた。放火って噂」と男がいないところでひそひそ話。ドキッとした。その男そんなヤバい奴なのか。男の秘密を知ったてしまい困惑する先輩。男は自分の過去を秘密にしている。この温度差が第三者の視点からみて面白い。この先必ずひと悶着あると思わずにはいられないシーン。まるで指名手配犯をそうとは知らずに匿って後に犯人には気づかれずに真相を知ってしまったときの緊張感。信頼していた人間の黒い過去を知ってしまったときの複雑な感情。
思わせぶり
どんな罪を犯したんだろう、とサスペンスを見るような気分でいたが、そんな話?!そんなんで??といった期待外れ感。息子の死が受け入れられず、偶然助けた少年と重ね合わせる哀れな男。2人が光を受け入れることで、何か変われたのだろうか。最後に光が向かう先は。
柳楽さん 小林薫さん 改めて凄い役者である事を認識する
身元不詳の訳ありな青年を演じる柳楽さんと彼をある理由から保護し、共に暮らす初老の男を演じる小林薫さんがとても良い。
不穏な空気を漂わせながら進む物語に引き込まれる。
派手さはないが、滋味深い邦画の佳品である。
<2019年1月31日 閉館してしまった半田コロナ劇場にて鑑賞(メインストリームではないが、良い作品をセカンド上映で掛けてくれる映画館だっただけに実に残念である)>
静かな作品
全編通して非常に静かで、言い方を選ばなければ、率直に言って大変地味。
そして語られているようで何も語られない。
でもその分、この人は何を考えてるんだろう、どうしてこうしたんだろう、どうなっていくんだろう、と考える余白が多い作品。
こういう、観客側に委ねていく作品は個人的に好きなので私自身は結構楽しめた。
ただ、映画に感動やエンターテイメントを求めるタイプの人には物足りないかもしれないので、見る人を選ぶ作品かな、という印象。
逆に、じっくりと小説を読むような作品が好きな方にはオススメ
なんかなぁ
28本目。
もどかしさだけが残らないかな。
心情の機微は分かりやすくていいんどけどね。
スッキリしない夜明け。
最後の踏切も、あ、やっぱりと匂わせてる感じはするけども、個人的にはエンドロール終わりにクロスする様に鉋を研ぐ音が聴こえてきたら良かったかな。
脇役は絶妙だけど、堀内敬子さん芝居がね、ちょっとバランスが悪いかな、芝居がかり過ぎて。
情報番組の一編でしか西川美和作品を観た事しかないけど、監督の事を調べたら成程、何かそんな雰囲気だもんな。
でも雰囲気をトレースしただけなのかな?
西川作品観た事ないから、これ以上は。
リアル感は良いがラストが…
日本映画がドラマの実写化が多い中で、つまらない掛け合いではなく自然な演技が出来てたと思う!
ただしラストに向かうストーリーが何の希望もない、虚無感だけが残る残念な仕上がりにガッカリ!
柳楽優弥の挙動ってる感が、良かったが、それだけ!なんか期待外れでした!
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