「水島監督は勘違いしたんじゃないのかな?」劇場版 SHIROBAKO ヨジンさんの映画レビュー(感想・評価)
水島監督は勘違いしたんじゃないのかな?
TV版が面白かったのはサクセスストーリーだったからです。
アニメ制作現場のリアルさが面白さの一部だったことは間違いないですが、そこだけがウケたわけではないでしょう。
にもかかわらず、アニメ制作現場のグダグダをさらに全面に出せばウケるだろうって意図が思い切り出ていた気がします。
『いつかこの5人でアニメーション作品を作りまっす!』と高校時代に誓った5人。
なんだかんだで結局全員が第三飛行少女隊の制作に関わり、七福陣への夢がさらに加速していきそうな感じで終わったTV版。
ところが、そことの繋がりはお義理程度に触れてるだけ。
TV版で散々見せられた木下監督のグダグダぶりを劇場版でも見せられ正直ウンザリ。
カレー屋での丸川前社長とのやり取りもなんだか安っぽいんだよなぁ。
終始ドッタンバッタンやるだけの内容の中にお義理でメッセージ性を付け加えてそれっぽく・・・
SHIROBAKOはもうこれで終わりなんだろうか?
次への展開を期待させるものがありませんでした。
伝わらなきゃ意味がないって言ったじゃん!
私は少し違う意見です。
サクセスストーリーだったから受けた…というのは半分は合って、半分は違うと思います。
『未生(ミセン)』というドラマご存じでしょうか。
あれも『Shirobako』と似たような作品で、商社マンの話ですが、
商社の仕事をリアルに見せながらも、仕事の大変さ、社会人としての人間関係の大変さ、理不尽なことを、作品を通して伝えています。
ミセンも結局サクセスストーリーではありませんが、人気の理由としては「共感」と「キャラの魅力」だったと思います。
同じく、『Shirobako』が受けた理由は色々ありますが、ヨジンさんが仰った通り、サクセスストーリーもあり、現場のリアルさもありますが、ここでも共感が重要なポイントだと思います。
社会人になれば、学生時代に抱いた理想や希望溢れていた未来のことを段々忘れてしまいます。上司の理不尽なことに耐えて、仕事の辛さに耐えて、休みが足りないことに耐えて、耐えて耐えて耐える… そのうち、絶望し鬱になる人も多いです。
『Shirobako』では仕事の辛さ、トラブル、面倒な人間関係が色々出てきますが、現実の辛さを辛さとして受け入れるのではなく、視聴者に「夢」を見せてくれるんです。
「アニメを作ることは夢を作ること、そして夢を伝えること」。 これがテレビ版と劇場版の『SHIROBAKO』で伝えようとしたメッセージで、テーマはテレビ版から変わっていません。
社会人になって忘れかけていた夢の話や理想、情熱、人生の楽しさをもう一度思い出させてくれるところが、この作品が受けた理由の一つになるのではないでしょうか。この場合、必ずサクセスストーリーである必要性はありません。
だから、水島監督は勘違いしている訳ではないと思います。とは言え、今回の劇場版、尺が足りないと感じて、クライマックスが足りないとは思いましたけどね(笑)
それとミュージカル・シーンは比較的、適当に作った感じがあって、逆に入れない方が良かったんじゃないか?と思いました(笑)
p.s. 最後に、作品性を考えるなら、これ以上の続編は作らないほうが良いと思います。テレビ版(オリジナル)、テレビ版(原作あり)、劇場版を宮森たちが作ったため、これ以上見せる現場のストーリーがないでしょうね。商業性目当てなら、いくらでも作れますが、それは個人的には見たくありませんね(笑)