存在のない子供たちのレビュー・感想・評価
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ゼインの演技力に圧巻
映画である以上、演技らしい構成というのは常に発生し、そういったお約束の台詞や動きを受け入れた上で常に映画を見ているわけだが、この作品においてはこれまで見たどの演技よりも真実に近しい迫力を感じた。
特に主人公ゼインの眼力は凄まじく、子どもとして見てはいけないほどの迫力を携えていた。
はたまた、それも子どもだからという過大評価なのか。
レオンか存在のない子どもたちか、子役の演技だけでも見る価値がある作品リストにまた一つ作品が増えた
世話できないなら産むな
映画「存在のない子供たち」(ナディーン・ラバキー監督)から。
貧しい両親が出生届を提出していないため、IDを持っていない。
「IDがないってこと=この世に存在していないこと」
言い換えれば、何をやろうとしても、人間として認められない、
そんな意味にもとれる。
それは、主人公ゼインだけでなく、中東の貧民窟には、
多くの「存在のない子供たち」がいる実態を浮き彫りにした。
作品というよりも、ドキュメンタリーに近い気さえする。
特に主人公が育てる赤ん坊は、ミルクを飲ませてもらい、
つかまり立ちをし、立ち上がり歩き始めるまでのシーンは、
これってまさか演技じゃないよな・・と思わせる。
冒頭の裁判シーン。「なぜ法廷に?」「両親を訴えたい」
「何の罪で?」「僕を産んだ罪」は、まだ理解できなかったが、
ラストの裁判シーン。(冒頭のシーンへ戻ったのだが)
「大人たちに聞いてほしい。世話できないなら産むな。
僕は地獄で生きてる」と訴え続ける。
「両親への要望は?」という裁判官の問いに、
「子供を作るな」と言葉を投げ捨てるが、
さらに「大きな声で・・」と裁判官に促され
「子供を作らないで」と懇願する台詞に変わった。
こんな辛い思いは僕だけでいい、お願いだから・・
そう言われたようで、胸が締め付けられる思いだった。
この国では「新型コロナウィルス対策」どころではないな。
コロナによりもっと悲惨な状況
コロナ以前のレバノンのシリア難民の現状を表している映画として鑑賞した。
児童労働の悲惨さと同時に、子供のために何とかしてやりたい親のいら立ちも画面から伝わってきます。
先日、レバノンのシリア難民キャンプのNHKBSの海外ドキュメンタリーを見たが、コロナにより、状況は更に悲惨で、臓器売買、子供の誘拐、体の良い人身売買、難民キャンプの襲撃など、何でもありの状況です。多分、ヨルダン・トルコのシリア難民やロヒンギャ難民も同じような状況に置かれていると思われます。コロナ以降、先進国も自国のことで精一杯で、援助どころでない現状です。
映画を見ていて、悲しいと同時に、どうすることもできないイライラを感じた。
ラストシーンで涙する
ゼイン君のフレッシュな演技に圧倒されました。
また1人素敵な役者さんに出会えて本当に嬉しかったです。
ずっと涙を堪えていたのに、ゼイン君のラストシーンの無邪気なぎこちない笑顔を観た時に目から涙が流れていくのを止めることが出来なかった!
この世で1番不幸せなのは産んでくれた両親から愛されないことなのかもしれないのかな
と思いました。
映画って本当に素晴らしいエンターテインメント☺︎
私の趣味は映画鑑賞ですって最近は事あるごとに言ってます🤗
今の自分
「存在のない子供たち」を観てゼインの勇気と行動力、優しさに何度も泣きました。
そして衝撃を受けたゼインの言葉は、やはり「両親を訴えたい」「その罪は?」
「ぼくを産んだつみ」です。
親はなにをゼインにしたの?それからの映画の進行は驚きの連続でした。
ゼインは勇敢で妹思いで、強い子ですよね。あの両親からあの子?
数々のエピソードの中でも国籍のない女性と子供と暮らし始めたけれど、
母親が帰って来ない日が続きました。
彼女の子供を見捨てることなく、よく頑張りましたよね。
本当に強くて優しい子です。最後はなんかホッとしました。
あの笑顔、きっとあの子はもっともっと感慨深い大人になって両親をも許すと思えます。
ゼインを演じた子も移民なんですね。
今の自分と書いたのは、この年になっても少しも悟れず、決断できずなのですよ。
この映画を観て良かった!反省、反省です。
文句なく傑作、だけど…
自分が生まれたことを罪だと親を訴える、こんな悲劇、他にあるだろうか。
最近の邦画作品「Mother」は実際の事件が基になっているが、これだけ子供の権利や福祉が整備されているように見える日本においても親の人間性と価値観で、子供の人生は破壊されるのだから、国にその基盤がないならその恐ろしさはどれほどのものだろう。
親に生まれた日を届け出てもらえないばかりか、記録も記憶もしてもらえない。誕生を祝福されない、人間として扱われない、愛されないなんて。
父親は、自分たちは虫けらのように扱われていると言うが、自分の生み出した子供を虫けらのように扱っているではないか。なんだその矛盾は。
母親は、子供を育てるためなら罪を犯すと泣きながら訴えるが、ニワトリと引き換えにしたり、泣き叫ぶまだ幼い娘を男に渡したりしてるではないか。
育てる苦労を訴えるくせに、また妊娠してるではないか。しかもそれを神からの贈り物だと言う。
娘を失った直後のはずなのに、なぜセックスしようと思うんだろうか。
ディゲストも同じようにとても貧しく、違法滞在中の移民で、決して褒められる育て方ではないが、彼女達親子はゼインのそれと決定的に違う点がある。
「愛してるかどうか」だ。
ゼインは帰らないディゲストに対する様々な感情より、何も出来ないヨナスを守り育てることを優先する。
まるで、自分が本当は親からそうして欲しかったことを与えるかのように、何をしても最優先するのだ。
この優しさ、これが本来なら子を持つのに一番必要なものではないのか。
無戸籍の子供は残念ながら日本にも沢山いる。
我が家には犬が2匹いるが、犬だって登録していれば鑑札から飼い主のデータくらい辿り着ける。身分証があるに等しい。飢えたことも、当然、暴力にさらされたこともなく、空調の効いた清潔な部屋で過ごしているのに…
なぜ人間に、その最低限を与えずにいられるのだろう。
本当にこのメッセージを強く訴えてくる傑作だ。
育てられないなら産むな
こんなことを子供に言わせる世の中であってはならない。
悲しいが現実
レバノンの12歳の男の子が主人公。
学校にも行けず、ジュースを作って販売してお金を稼ぎ親に渡すような生活。
仲の良かった11歳の妹がわずかなお金で結婚(実態は親が子供を売った)させられ、妊娠したが死んだ。(実態はレイプみたいなものだろう)
親に反発した男の子が家出して、知り合った女の子の赤ちゃんの子守しながら生活してたけど、女の子が不法滞在で留置所に入れられて帰って来ない。
こんな現実がレバノンでは起きてるんだろうと涙が出た。
毎年のように子どもが生まれてくるのも両親が避妊をしないでセックスするからだろうし、学校にも行かさず小さい頃から働かす。
なんとも言えない悲しさ、何も出来ない自分が情けなくなった。観終わって、どうしたら少しでも変われるのか、何が出来るのか、考えていきたいと思う。
盛りだくさんの社会問題。考えさせられる。
子供はどんな親でも愛するものではないかと思うのは間違いで、無責任に子供を産んだ両親を裁判で訴える、という。貧民窟に住む一家の長男ゼインは年子の妹以下4~5人の弟妹がいる。両親は健在だが失業中で、学校も行かず近所の雑貨屋のゴミ捨てなどの手伝いをしている。一番仲の良いすぐ下の11歳の妹に初潮が来たことから、両親が妹を雑貨屋の男と結婚させるのを知り、妹を連れて家から逃げようとするが失敗し、一人でバスに乗って家出をする。バスで出会った老人をきっかけに遊園地でバスを降り、そこで働くことを思いつくが上手くいかず、出会った若い黒人女性ラヒルの世話になる。しかしラヒルは赤ん坊を抱えた不法移民で、偽造の滞在許可証の期限がもうすぐ切れるのだった。ラヒルの仕事中にゼインが赤ん坊の世話をしてしばらく同居するが、ラヒル自身もギリギリの生活の中、新しい滞在許可証を入手するには大金が必要で、赤ん坊を里子に出せと迫られ、金の工面に奔走するうちに警察に拘束されてしまった。ラヒルがいつまでも帰ってこないので、ゼインは赤ん坊のためにミルクを盗んだり、自動車工場で体を洗ってもらったり、家にあるものを売ったりして暮らすが、市場で同じように花を売る少女からスウェーデンに行けばこんな生活から抜けられると教えられる。ポケットの中に処方箋を見つけ、手に入れた薬を海水で溶かして売り、渡航費を稼ぐが、大家に鍵を変えられて家を追い出されてしまう。背水の陣となったゼインは、すっかりなついた赤ん坊を置き去りにしかけるが、それもできず、同じ手放すなら男に売ることにし、お金を手に入れる。しかし渡航には身分証が必要だと言われ、家に取りに帰るが、父親に「身分証はない。誕生日はわからない。戸籍登録はしていない」(第一子の誕生日くらい控えておいても良さそうなものだが)と言われ、さらに嫁に行った妹が死んだことを知り、激高して雑貨屋を刺し、収監され、ラヒルに出会う。少年院に面会に来た母親が、おなかに弟か妹がいる、と嬉しそうに言うのにゼインは苛立つ。そんな時、テレビの生放送番組が視聴者からの電話に答えているのを見て、電話をかけ、無責任な大人への怒りを伝え、社会に反響を巻き起こす。それが映画冒頭の裁判につながる。
貧民窟というどん底の環境に暮らす人々、多少の盗みは当然になっている暮らし、口減らしのための児童婚と早過ぎる妊娠、不法移民の問題といった厳しい現実社会の一方、何日も赤ん坊を連れ歩く少年をシャワーで洗ってあげたりする暖かな目もないわけではない。また両親が、裁判所でスーツを着た弁護士や裁判官に向かって「こちらの状況にいることが理解できるか」というような言葉は、子供からすれば身勝手な言い草であるが、結局問題はそこに行き着く。
12歳にしては小柄に見えるゼイン、もともとはどういう子なのかと思いながら観ていたが、最後の身分証の証明写真撮影の時に初めて笑顔を見た。
とても辛かった
・出生証明書のないゼイン達、11歳で結婚させられる妹、偽造証明書で暮らすエチオピア移民のシングルマザー、酒浸りで無計画に子供を作っては仕事をしない両親など…誰も余裕がなく苦しい映画だった。
・唯一金を稼ぐ方法が処方箋で買えるけど興奮剤とかなのか、それを砕いて混ぜたジュースを販売するという…とにかく救いのない事ばかり。
・そんな中で救いを感じたのは水道もままならなそうな町で身体を洗いたいとゼインが作業着の大人にホースで水をかけてもらったシーンと市場で瓶のコーラを開けられない?とゼインが町で働いている少女にお願いしたらわかったわと開けてくれたこと。両親もゼインに酷い言葉と暴力ばかりでしんどい中で、そういったシーンはしみてくる。当たり前に思っていたけど、誰かが誰かを助けるシーンは観ていて嬉しくなるんだと初めて感じた。
・弱者が弱者をいたぶる世の中っていうのが現実なのだと痛感して切なくなった。
・ゼインがサハルとヨナスを大人から守ろうとしている姿がとても良かった。
・アスプロが外国へ逃がしてやると金を貰って倉庫に監禁していたけど、なぜ赤ん坊だけ金を払って監禁していたのかが疑問だった。後から何かしようとしていたという事か?
・ラストにゼインが母親から子供ができたという報告に、心がないのかと言っていた。自分もそのようなことを思った。母親がえ?みたいな顔をしていたのが凄く嫌な気持ちになった。こういった事が現実にあまた起きているのかと思うと辛かった。
・裁判で両親が自分たちもっと違う生活をしていたらと言い、今の生活をしているのは被害者だといった事を言っていた。じゃあその中での子供たちは?って思えてならなかった。血のつながりといいつつ物のように扱っているのが辛かった。
・ラストにゼインが証明書の写真だよと撮影している人にいわれニコッとした。それもとても切なかった。
・当たり前としていた事すべてがとてもありがたく感じさせられる映画だった。
たくましい少年
いやー悲しい。
「育てられないなら生むな」と少年がいったセリフがすべてを象徴している。
娘のため、と強制的に子供を売る親。
娘を売った金で生活費の足しにする卑しさ。
貧困が故に地獄を生きる人間がリアルに映し出されている。
移民、人身売買の最前線が垣間見れる作品だ。
存在する子供たち
見る前から期待はしていたものの、一抹の不安もあり。中東の貧困、虐待、移民、人身売買などを扱った作品を日本人が見て理解や共感出来るのか…?
そんな不安は全く無用だった。
気付いたら作品世界に引き込まれ、時に胸苦しく、時に胸打たれ、非常に非常に素晴らしい作品だった!
それにしても、こんなにも底辺も底辺の生き方を強いられている子供たちが居るとは…。これを思い出すだけでまた胸が苦しくなってくる。
まだ『パラサイト』や『万引き家族』の方が恵まれているかもしれない。
レバノンの劣悪な貧困窟で暮らす“おそらく”12歳の少年ゼイン。
彼には身分を証明出来るものどころか、戸籍すら無い。
つまり、こうして生きてはいるが、存在して居ないという事。
無論学校には通えず、朝から晩まで働かされている。
ボロ家住まいで生活は家賃や食べるものに毎日困るほど貧しく、両親は毒親で時々虐待も。
それでもまだ幼い妹や弟たちの為に必死に働いていたが、ある日ゼインの我慢も遂に爆発する出来事が。
11歳の妹と特に仲良かったゼイン。
その妹が親の勝手な都合で望まぬ結婚をさせられる。これが日本だったら、一体いつの時代の話どころか、犯罪。
ゼインは家を飛び出す。両親などどうでもいいが、幼い弟妹を残していくのは心苦しかっただろう。
あちこち放浪した末、掃除婦として働くエチオピア移民の女性ラヒルと知り合う。
ひょんな事から彼女の家で暮らす事になる。赤ん坊が一人居て、面倒を見る。
全く赤の他人の少年と母子。血の繋がりのある家族より血の繋がりの無い擬似家族の方が幸せな事がある。束の間のひと時。
…再び、苦境が。
ラヒルが仕事に行ったっきり帰って来なくなる。
あんなに優しい人だったのに、赤ん坊を残して…?
そうではない。ラヒルは不法移民。拘束されたのだ。
そうとは知らず、帰りを待つ。
ゼインは“存在して居ない子供”だが、考えてみれば、母親が不法移民であるこの赤ん坊も。
そんな少年と赤ん坊、肩を寄せ合って。
このまだ幼い“存在して居ない”子供たちに、世の不条理は何故にこんなにも過酷を強いる?
自分の弟妹ならまだしも、赤の他人の赤ん坊の面倒を見るゼイン。
もう立派過ぎる!
我が子を虐待する世の大人どもは、黙ってこの映画を見て、彼の爪の垢を煎じて有り難く低頭して頂け!
ゼインだって本当なら親に育てられ、まだ甘えたいだろう。
それなのに、こんなにも逞しく。
…しかし、12歳の少年と赤ん坊がたった二人でどん底の暮らしを続けていく事には限界がある。
家を追い出される。
ゼインは時折相談していた男性に赤ん坊を託す。
無論ゼインは、喜んで手離した分け与えではない。手離す時、溢れ出る涙を何度も何度も拭う。拭っても拭っても、止まらない。
ゼインにとっては、二度目。自身の妹やこの赤ん坊を守れなかった。そんな自分への怒りと、悔しさ。
が、ゼインは預けたその男が、人身売買者である事を知らなかった…。
再び、実家に戻ったゼイン。身分証明を出来るものを手に入れる為に。
真っ当な仕事をする為にも、夢である余所の国へ行く為にも、身分が証明出来るものが必要。
が、先にも述べた通り、ゼインにはそんなものは無い。
勝手に家を飛び出したゼインに、両親はとてもとても実の親子とは思えない辛辣な言葉を投げ付ける。
「俺たちは虫けらも同然」
「お前など産まなければ良かった」
さらにゼインは、信じたくもない悲劇を知らされる。
嫁いだ妹が嫁ぎ先で…。
ゼインは包丁を持って飛び出し、相手を殺しはしなかったものの、気が付いたら刑務所に居た。
本当に本当に何処まで苦しむのか。苦しまなければならないのか。
ゼインや子供たちが何か悪い事でもしたというのか。
こんな劣悪などん底で、この世に生を受けた事自体が罪だというのか。
救いはないのか…?
しかしやっとやっと、ゼインに救いの手が。
刑務所で電話を掛ける。
それは、TVの生放送の相談番組。
ゼインの訴えは波紋を呼び、弁護士が付く。
そして彼は訴える。両親を。
罪状名は、“僕を産んだ罪”で…。
映画は回想形式で、実の親vs子の裁判の様子も途中途中挿入される。
ゼインが不利になったり、
ラヒルも証言して赤ん坊を奪われた事を悲しみつつも、ゼインに対して恨みは無いと有利になったり、
実の両親の賛とも否とも取れる反論あったり。
母親の涙の叫びは、あれは嘘偽りではないだろう。毒親とは言え、自分のお腹を痛めて産んだ我が子を手離し、亡くした事を微塵も悲しまない親は居ないだろう。
が、「お前など産まなければ良かった」と言った親に弁解の余地は無い。
そんな母親のお腹には、また新しい生命が。
これには唖然とした。
こんな最低最悪の暮らしの中で、また子供を産むというのか。
産まれてくる子供に罪は無い。
が、また一人、ゼインのような恵まれない子供が増えるだけ。
一体、何を考えているのか。
自分のようになって欲しくない。
ゼインの心からの訴えが胸に突き刺さった。
自身の実体験も盛り込み、だからこそのリアリティー。ドキュメンタリータッチのナディーン・ラバキー監督の演出が素晴らしい。(余談だが、弁護士役でも僅かながら出演していて、とても美人さん!)
でも何と言っても、ゼイン役のゼイン・アル・ラフィーア少年。
子役ではなく、役柄の環境に近い貧困窟でスカウトされた全くの素人。
本当に素人!?…と思うくらい、圧倒的な演技力、存在感! 例えるなら、恐ろしいくらい。スゲェ…!
強気な口調、性格で、ずっと仏頂面ながら、澄んだ瞳と内に秘めた切実な思いが、不条理な世界に対して爆発するほど訴える。
それから、赤ん坊のヨナスくんが愛らしい。
ラストは少々出来すぎになったかもしれない。
でも、いいじゃないか。ずっと過酷な現実を強いられて、せめて映画だけでも報われ、救われて。一筋の希望。
この世に生を受けた事に何の罪も無い。
産まれて来なければ良かったなんて事は、断じて無い!
産まれてきた事には、きっと何かしら意味がある。
歴史に名を残す偉業、世を動かす力、その人一人のささやかな幸せ…何だって構わない。
我々は生きている。
僕たちは存在している。
ラストシーンのあの笑顔にーーー。
愛もなしに、なぜ産んだ
降りかかる過酷な状況にひたすら抗う少年ゼインの逞しさ。
本当の難民少年を主役に抜擢したとあって、試写室の席でふんぞり返って本作を観ている自分が恥ずかしくなるぐらい、バイタリティ溢れる彼の演技(と言っていいのか分からないが)に圧倒される。
ついでに言えば、中盤に登場する赤ん坊ヨナス君も名演技(まぁ演技してないと思うが)。
難民が貧困によって人身売買や強制結婚を強いられる問題は今もなお続く。
強制結婚を扱ったドキュメンタリー映画に『ソニータ』があるが、本作はフィクションではあるものの、ゼインの妹サヘルに待ち受ける悲惨な実態をも浮き彫りにする。
「愛もなしに、なぜ造った」は、ケネス・ブラナー版『フランケンシュタイン』のキャッチコピーだが、本作終盤でゼインが法廷で発する言葉がまさにそれ。
安全に生きられる場が刑務所の中という皮肉。
そして辛い辛いことばかり起こった末に待つ、ラストが救い。
格差社会なんてレベルじゃない
様々な困難に直面しそれでも前を向いて生きるゼイン。彼の表情を見ているだけで泣けてしまう。中東舞台の作品なんて食指が伸びづらいけど、これは万人に観てもらいたい傑作です。
新自由主義下の格差社会なんてレベルじゃない半地下なんて幸せすぎるよと思えてしまう。
レバノン版「万引家族」と評している人もいるようだが、レバノン版「誰も知らない」がしっくりくるかも。
ラストシーンで涙する
ゼイン君のフレッシュな演技に圧倒されました。
また1人素敵な役者さんに出会えて本当に嬉しかったです。
ずっと涙を堪えていたのに、ゼイン君のラストシーンの無邪気なぎこちない笑顔を観た時に目から涙が流れていくのを止めることが出来なかった!
この世で1番不幸せなのは産んでくれた両親から愛されないことなのかもしれないのかな
と思いました。
映画って本当に素晴らしいエンターテインメント☺︎
私の趣味は映画鑑賞ですって最近は事あるごとに言ってます🤗
誰も笑わない
このレビューはもう少し落ち着いてから書いた方が本当は良いのだと思う。
とにかく時間内ずっと辛い。
なんでこんな辛いものを観に来てしまったんだろうと終始後悔した。
監督以外全員素人のキャスト陣、
もはや演技ではない。
主役の子が、ただただ無事で居てくれて本当に良かった。
あの黒人の赤ちゃんが無事で居てくれて本当に良かった。
あんなに容姿が良い子が、大人の慰み者にならないわけがない。
たぶん本当は。
現実のほうがきっともっと目を背けたくなる。
移民問題が表面化してきたこの時代に、
この作品はあまりにリアルでした。
誰も笑わない映画でした。
ただのひとりも。
最後の最後にゼインがやっと手にした人間証明書。
やっと見せてくれた笑顔に癒された。
もう二度と観たくない。
でもこれは、まだマシな世界なんだきっと…。
どん底比べ
自分の子供ですらまともに育てようとしない親と、どこの子かわからないけど精一杯面倒をみようとする12歳の対比が悲しいです。
子供に対する責任感の欠如を描いている点は『ラブレス』と共通しているが、背景にある貧困がより強烈。映画館周りの方鼻すすって自分も情けなくぽろぽろ泣いておりました。
シリア紛争下だが、これは他の諸外国でも問題になり得る家族愛について取り上げています。
格差を取り上げる映画は10年代多かったが、どん底比べだけが映画ではないと思います。でも、これも映画です。
二本立て一本目。 これは重い。ネグレクト、口減らしの為の少女強制婚...
二本立て一本目。
これは重い。ネグレクト、口減らしの為の少女強制婚、子供の人身売買、不法移民。何やってんだ!レバノン政府。ゴーンの財産引っ剥がし、これらの対策に当てよ。そうすりゃ日本もちょっとは納得できるはず。
とにかく見るべし。この負のループ、決して主人公の親だけが悪いのではないことが分かるはず。
日本に生まれたこと、日本人であることにほっとせずにはいられない衝撃の作品。エンディング、一縷の希望はあるのか、ないのか。
無責任に子供を産む罪を問う
ゼインは「誰も知らない」の柳楽優弥に似ている。しっかり者で面倒見が良くて、兄弟を愛している。
でもそれはゼインが両親から与えられるべきもの。それを渇望している暇も無く、かいがいしく妹らの面倒をみる彼の姿に胸が締め付けられた。
家にいたら罵られ、休む暇も無く働かされる。しかしいざ両親の元を逃げ出し、行きずりで知り合った心優しき移民の女性ラヒルの元に身を寄せたところで、無為の時間が彼を襲う。
知的好奇心を満たすものも無く、外界からの刺激を遮断され、ひたすらラヒルの赤ん坊のヨナスをあやす時間。
人はどうしたって何かを考えてしまう動物だから、何もできない時間というのはそれだけで辛い。本来なら好奇心いっぱいに目にする物すべてを吸収したい年頃のゼインにとっては、特に残酷だ。
そんなゼインが帰ってこれなくなったラヒルの代わりに、必死にヨナスを養おうとする姿は涙なくして見られない。
しかしこの映画は、ゼインの悲しみに寄り添うものではなく、子供を労働力としかみなさず宗教上などの問題で避妊せず、愛しもしないのに子供を産む大人たちを告発するものだ。
お金や扶養の問題ではない。愛されたい、ただそれだけが得られない子供のなんて多いことか。
本来なら、多くの人が「生まれてこなければよかった」から「生まれてきてよかった」と言える社会にしなけれはいけないのに。
出生届を出されていないため法的に存在しないゼイン。不法移民ゆえに法的に存在しないラヒル。違法だからといって、彼らは悪人だろうか。法律至上主義の人たちにとっては、法を守れない彼らはいなくてもいい(死んでもいい)存在なのだろうか。
法律が弱者を守れないのであれば、それを変えていくのも今を生きる者達の責任なのではないか。
ゼインは本物の難民。彼が幼いながらも「酷い国」「亡命したい」などと口にする場面には重みがあった。
彼の目に希望や笑顔が宿る日を、願わずにいられない。
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