「久々にいい作品に出会った。」存在のない子供たち キッスィさんの映画レビュー(感想・評価)
久々にいい作品に出会った。
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ちょっと前から気になっていたので、他の予定をずらしてでも見に行ってよかった。
ベイルートで貧困に苦しむ兄弟の多いザインは両親との確執から家出し、そこで出会った女性も不法滞在で子どもを抱えながら綱渡りの生活をしていた。
女性が捕まり、乳児とともに生活することになったが、悪徳ブローカーの餌食になり、それがきっかけで義弟(だいぶ年上だけど)を刺して捕まってしまう。刑務所で偶然出演した番組がきっかけで、「なぜ自分を産んだのか」という罪で両親を訴える。
レバノンの孤児(出生届も出さずに学校にも当然行けない)の現実、シリアからの難民、アフリカ諸国からの移民(もしくは不法移民)の問題を誇張することもなく、伏せることなく、フィクションながらもありのままに描こうとしているのが伝わってくる。事実をもとにした映画でもあり、出演者の多くが同じような境遇で育ってきた人を採用しているのも映画の質を保っている由縁だろう。
全く笑うことのないザイルが最後の最後で刑務所に収監するために取られる写真に初めて笑顔を見せる。今まで出生届もなく、この世には存在しないとされたザイルが犯罪という評価できない状況ではあるものの、自分のアイデンティティを確立した瞬間だった。それを共有できただけでも光栄である。
ドキュメントかと思うくらいの高クオリティだった。
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