「彼はどんな大人になるんだろう」存在のない子供たち komasaさんの映画レビュー(感想・評価)
彼はどんな大人になるんだろう
貧しく自分たちが生きることに精一杯の両親と多くの子供達の生活。両親や社会への憎しみと無力な自分への怒り。子供は文字通り親が生きるための糧であり、大人たちに簡単に売り買いされる存在でしかない。
初潮を迎えたばかりの妹を、底辺の生活を守るために知り合いに嫁がせる両親。両親や社会への憎しみと無力な自分への怒りに家を飛び出す主人公は、赤ちゃんを抱えた女性に助けれ一緒に暮らし始める。
しかし、女性が不法就労のために逮捕される。そのことを知らない主人公は、女性の帰りを待ちながら赤ちゃんとの生活を必死に守ろうとするも当然成り立たず、甘い言葉を囁く男に赤ちゃんを売り渡す。その構図は幼い娘を好色家の知り合いに嫁がせた自分の両親と重なって見える。
自分を産んだことを罪とし両親を訴える主人公が「育てられないなら子供を産むな」と叫ぶ姿には、ただただ圧倒される。その叫びは、憎むべき親と同じことを自分にさせた社会に向けられると同時に、将来の自分に向けた戒めにも思える。
『ひょっとしたら自分の両親も彼と同じような怒りを抱えた少年だったのではないか?』『自力では抜け出せない状況下で擦り減らされた未来の自分の姿なのではないか?』そんな考えを、未来を必死に振り払おうとしている姿にも見える。
映画の舞台は中東だが世界中で存在し続ける問題だと思う。あまりにリアルで演技とは思えないような登場人物たちの姿に、色々なことを考えさせられる。
コメントする