バハールの涙のレビュー・感想・評価
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なりふり構わぬ、愛が成せる力強さだった。 彼女達の底知れぬ力は、地...
なりふり構わぬ、愛が成せる力強さだった。
彼女達の底知れぬ力は、地位と名誉のために戦う力とは比にならないものだった。
沸々と湧き上がる彼女たちの感情をよそに、安らかにまるで愛するものを抱くように眠る、支配する者たち。
嘲笑うかの様に彼女たちは力強く立ち向かう。ただ子供への愛情の為に。
戦争の不条理さに胸を突かれました
ISと闘うクルド人女性戦闘員とその部隊を描くヒューマンドラマ。ISの残虐さ、特に女性に対する卑劣な暴力は既に数多の報道で知られているところですが、ISに囚われながら奇跡の生還を果たしたクルド人女性バハールが、兵士になってISの掃討に身を捧げる姿を報道者目線で描いてくれました。作中の戦闘シーンは思いのほか地味ですが、案外それが現実なのかも知れません。しかし、明日も生きていられるのか分からない、ヒリヒリとするようなリアルな戦場の緊張感は十分に伝わってきましたし、命からがらやっとの思いでISから逃れてきたのに、今度はより一層危険な戦場に向かう彼女の生き様を見ていると、彼の地で現在進行形で起こっている事柄の不条理さに本当に胸を突かれる思いがしました。
本当に見たくなくて、本当に見なければならない映画
本当に見たくなくて、本当に見なければならない映画だった。
日本では絶対に聞くことのない無機質な銃声が響く戦場で戦う女性。
「私たちの経験ほど悲惨なものはない」
そう言うバハール達。
世界では、一体何人の女性がそう思っているのだろう。
けれど女性の皆さん。全男性を敵だと思わないでください。
私が鑑賞した回の劇場の観客の大半は、中年の男性でした。
みんな、必死で理解しようとしています。みんな必死で共に幸せに生きようと思っています。
どうか一部の異常者を、一般的だと思わないで。
争いのない世界を、共に作っていきましょう。
性差があっても等しく同等
胎があるということはそれだけで「優遇」されたり「蹂躙」されるのか。畏れのせいか?
戦争モノが好きな人には「素晴らしい戦争テーマの映画」であることを、
人間ドラマが好きな人には「暗闇の中でも諦めずに希望を手にする映画」であることを、
そして戦場という場所が、ただ意図的に数を合わせた活躍ではない男女同権の場であることを見る。
女だって権利があると意図的に女性を選別する映画のうわべだけの薄っぺらいことよ。
だがこの映画は誰よりも悲惨な目に遭わされた女、人間の希望を失わない映画だった。
重苦しい場面も手に汗握る苦しい場面もある。
気軽に見れないかも知れないが、素晴らしい作品だった。
自己責任
クルド人、IS、アサド政権、アメリカの立ち位地など、政治音痴の自分には分からない。僅か数年前に世界ではこういう事があったのだと、平和ボケした自分に気づく。昨年、日本でも自己責任騒動があったが、やはりジャーナリストは危険を冒してまでも、真実を伝えなくてはいけないことを痛感した。
女 命 自由の始まり
限りなくノンフィクション。
現在進行形の戦いと過去に起きた凄惨な経験を交互に見せるつくりが身に刺さる。
女性記者マチルドと女性兵士バハール、立場は違えど目的を持ち勇気を持った行動とその境遇はどこか似たところがある。
力強いバハールの瞳は、大きな痛みを抱えて時折どこか虚ろになる時も。
それでも仲間を鼓舞し、情に厚く作戦を引っ張る姿が本当にかっこいい。
戦場の歌声に胸が震えて涙が止まらなかった。
平穏な生活がいきなりぶち壊され、人間としての尊厳をことごとく削られる恐怖。
バハールの過去はその場の女性皆んなの過去で、戦う人も死んだ人も行き場のない人もそれぞれ壮絶な経験をしているという事実が辛かった。
数少なく差し伸べられる手を掴めるかどうかのせめぎ合い。「逃げて殺されるなら本望」か…。
こんな状況でも新しい命が産まれて、まさに死が生を産む瞬間を目の当たりにする。
母は強し、なんて簡単に言えたものじゃないな。
もう一人のバハールがどうか幸せと平穏のある未来を生きていけますように。
真実を伝えること。マチルドが放った世間の人の反応には耳が痛かった。
日本人記者が捕らえられるニュースが流れても「自己責任」だと冷たく放す世論に私もわりと同意だったから。
ワンクリックで済ませていたことをほんの少しでも知ってしまった時、どうしていいか分からなくなる苦しさに襲われる。
物語がひと段落しても戦いは終わらない。
ISによる暴虐は今なお続いていて、この事実にどう向き合えばいいんだろうか。知ったところでできることなんて何も無い。
それでも、伝えてくれる人がいる限り受け取りたいと思うようになった。
バハールの拳に、マチルドと同じく生命力を貰った気がする。
知らない世界が目の前で繰り広げられていた。同じ地球上にふたつの世界...
知らない世界が目の前で繰り広げられていた。同じ地球上にふたつの世界が存在する事を改めて痛感、自分は悲劇に向き合っていない側の人間だとつくづく思う。危険地域に入る記者の覚悟に敬意を表する。悲惨な状況の中での女性の強さ、母親の愛が美しかった。
ISの恐怖、すぐそこにある戦争の闇
ISについては日本でも話題にはなっていたが、邦人が関係していない限り、他人事というような報道だった。この作品を見ると、クルド人の特に女性が、どのような状況に置かれたのかの一端を知ることができる。
主人公を女性記者にしているのも、仕事と家庭への愛情の葛藤など女性の目線を重視した作品になっている。
戦闘シーンも、それほどドラマチックにしていないのが余計にリアルさを感じさせる。
ワンクリックの裏の現実
私たちがワンクリックで見る報道の、真実に迫った作品。
女性報道写真家の視点からの現在(戦況)と、
元奴隷であり、いまは前線に立つ女性戦闘員の視点からの過去の出来事と、
二人の視点で描かれている。
(冒頭の場面で、爆発による土煙と、最後のそれとを繋げて見ることができる)
いつ銃弾が飛んでくるか、
いつ死ぬか分からない、
そんな緊迫感を常に醸し出している映像が、見ていて息苦しい。
後ろに流れる音楽が更に緊張を際立たせてくるのだが、若干煽り過ぎにも聞こえる。
アメリカによる空爆が、戦闘員として拉致され訓練された子供たちにも及ぶ、
その危険性というか、いかに無差別であるかも示しているように思われた。
この作品には撮る必然性がある
「ラッカは静かに虐殺されている」「ラジオ・コバニ」に続く自主企画「シリア発見」の第3弾。今作は完全なフィクション。これらの作品を観るにつれ、シリア内戦、アサド政権、IS(イスラム国)などについてわかった気になるから逆にこわい。
主人公のバハールはクルド人の女性武装部隊の隊長。アサド政権やISの暴挙に触れたフランス人の女性ジャーナリストが彼女を追う。バハールの回想を通してISによる理不尽な殺戮、暴行、人身売買、男の子たちの洗脳(戦闘員の養成)などを知ることとなる。
女性たちがこれほど大きなものを背負って戦っていたとは…
もうめちゃ勉強になるし、適度にエンターテイメントでもあり、全編緊張しながら観た。文字通りの傑作であり、今年のベストテン候補に一番乗りだ。
大大大好きファラハニ詣で。 そして世界の現実を垣間見る。
ファラハニを観たくて。観たくて観たくて。
あの『パターソン』のファラハニ。
柔らかな視線、時折見せる虚ろなまなざし。
美しい。ほんとに美しい。
そんな人が立ち上がる。戦う。
戦うことでしか取り戻せない過去がある。
戦うことでしか得られない日常がある。
それにしても凄まじいこの世界の現実。
その現実を伝えようとする女性カメラマン。
ラストシーン、笑顔のないお別れが強烈に印象的。
抜き差しならない世界の現実があのシーンで重く迫ってくる。
【哀しく、強く、美しい女性たちの物語】
敢えて、ISには触れずに感想を。
ある日突然、絶望の淵に落とされた女性たちが、這い上がり強く生きていく未來への希望を紡ぎだす物語。
銃を担ぎながら、”女 命 自由”を歌う女性たち。特にヒロインと女性ジャーナリスト(稀有なジャーナリスト魂を持った実在の人物がモデル)の佇まいが良い。
ゴルシフテ・ファラハニは「パターソン」でそのエキゾチックな美しさに圧倒されたが、今作でもその美しさは変わらない。
いや、母としての強さを表現した今作の方が心に残ったな。
クルド人の哀しい歴史知識があるとなお良いが、無くても大丈夫です。近くに上映館がある方は是非。
<2019年1月19日 劇場にて鑑賞>
2019年ベストムービー!
今年最も見逃してはいけない1本!…だと思う。
テーマはとても重いが、力強い映像と"彼女たち"に目が離せない2時間…。
素晴らしい映画だ。
*原題は、フランス語で"Les filles du soleil"、
英語で"The girls of the sun"だ。
この手の映画は…
非常に後味が悪い。殺し合うのは当事者だが、使用する武器は西側だったり、ロシア圏のものだったり、車は日本製だったりする。それが破壊する中東世界の範囲は依然広がり続けるばかり。本当の敵はライフルを構える者たちではなく、その背後でビジネスとして蠢く者どもである。奴等は戦場から遥か遠くにあるパソコンの前に座って投資先を探すばかりである。全くやり切れない。
それにしても主人公を演じるゴルシフテ・ファラハニはジム・ジャームシュの「パターソン」ではアーティスト志向の奔放かつ我儘な妻を演じ、今回は全く相入れることのないハードな元奴隷のクルド人戦士を演じ、この女優の演技の幅には魅了されるばかり。
戦うことを選んだ女性たち
身を穢され、家族を失い、心も壊れかけ、それでも唯一残った希望のわが子を救い出すべく、銃を手にした母の決意。
あれだけの過去を抱えた彼女たちに、不戦を説いても意味がないだろうなあと思う。取り返すための戦いなのだから。
前線で戦う彼女たちに帯同する女性ジャーナリストの存在もあり。危険にさらされながらも真実を伝えようとする彼女にも称賛を。
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