「観る側のポイントを何処に置くかで変わるかと。」劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
観る側のポイントを何処に置くかで変わるかと。
シティーハンター直撃世代なので、思い出も思い入れもひとしおで2017年にテレビシリーズの30周年を迎えた訳ですが、何故今になってシティーハンター?と言う思いと安直な新作ならちょっと…と言う感じもあって、腰が少し引けつつも当時の主題歌がバンバン掛かって、キャッツアイの来生三姉妹まで出ると聞いて、興味が俄然沸いて鑑賞しました。
で、感想はと言うと…悪くはないけど、ちょっといろいろと盛り込み過ぎかなとw
大きく気になった点は3つ。
まず、往年の主題歌が掛かるのは楽しみの1つでもあったのですが、意味なく掛けるのが多いなぁと。
シティーハンターは主題歌も良いのですが、挿入歌も名曲が多くて、特筆なのは棲み分けが出来ている事。
主題歌はオープニングやエンディングの様なMV的な映像だから栄えるし、挿入歌はその場面場面の映像のイメージを膨らませていたので、劇中にこれでもかと主題歌をバンバン掛け過ぎて、“このシーンでこの主題歌掛ける?”と言うのが多々あるのと、曲が劇中に流れてもワンコーラスも流れてないのが多くて、ただ掛けましたでは正直、往年の主題歌を掛ける意味合いが薄く感じました。
もっと、そのシーンに合ったと言うか、主題歌のイメージに合ったシーンをあらかじめ配置しておくぐらいの配慮はあっても良かったのではないかなと。
個人的にはPSY・S の「EARTH〜木の上の方舟〜」は秀逸の挿入歌なので、入れて欲しかったなぁw
また、いきなりの「Angel Night ~天使のいる場所~」でスタートしているのに、オープニングの主題歌は今回の新曲になるAMAZONSの「Mr.Cool」。
この曲が悪い訳でなく、往年の名曲主題歌が掛かるのなら、それこそ「Angel Night」でオープニングを飾れば良いのに、新曲が入っている事でこの曲だけ浮いている感じがします。
あと、出来れば「キャッツアイ」の曲はオリジナルの杏里バージョンで流して欲しかったです。
二つ目は新宿を舞台にしてるのは良いとしても、シティーハンターの世界での新宿はニューヨークの様なイメージの新宿なので、リアルな新宿とは似て非なる物。
だからこそハードボイルドのイメージにも合うのに、随所随所でリアルな新宿を描いている所が逆にシティーハンターの世界観を薄くさせてる感じがします。
三つ目は異様にコメディ色を出し過ぎかな。
適度には良いけど、ちょっとやり過ぎで、海坊主の渋さよりもオマケキャラの様なコントキャラ感が強いし、獠のギャグも盛り込み過ぎ。特に「Get Wild」から始まるエンディングが秀逸過ぎるのに、最後の獠の“もっこり”の台詞で終わる締め方には残念感が強いです。
他にもストーリーの薄さやキャラの立ち位置や意味合いも薄い。キャッツアイの来生三姉妹を入れるのは良いとしてももう少し出番が少なくても、効果的な使い方があったのではと思います。
いろんな部分がこれでもかと盛り込み過ぎで入れたい気持ちも分かるけど、バランスが悪くなってる感じがします。
それでも、「Get Wild」で始まり、「STILL LOVE HER (失われた風景)」のエンディングロールは秀逸でちょっと涙腺が緩むぐらいに感動。
これだけでも観に行く価値はあるかと思います。
懐かしいと言う気持ちで観る分には問題が無くても、それでは過去の劇場版をDVDで見返せば良い訳なので、新作としての制作するシティーハンターの世界観と秀逸なキャラクターの意味合いをもう少し意識しても良かったのではないかなと。
観る側のポイントを何処に置くかで評価は変わるのかなと思います。
厳しめに書きましたが、シティーハンターは大好きな作品だし、神谷明さんも仰られてましたが、ルパン化するのに値する作品でもあるので、懐かしいと言うポイントだけでなく、そこを踏まえつつ確りと新作としての意図がもう少しあれば良かったかなと思います。