シシリアン・ゴースト・ストーリーのレビュー・感想・評価
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悲惨な事件の美しい愛の物語
題材となった事件は凄惨なものだが、本作は詩的な美しさがある。美しいシチリアの自然の中の少年少女の青春ドラマから一点、少年の失踪によって物語は犯罪ドラマへとシフトしていく。撮影監督がイタリアきっての名カメラマン、ルカ・ビガッツィだが、事件そのものがまるで幻想であるかのような印象を抱かせる映像を作っている。結末が圧倒的に悲惨なものだが、それすら美しく撮ってしまう。
実際の誘拐事件の犯人を告発する素振りは映画には一切ないし、悪を断罪するでもない。本作が描くのはゴースト・ストーリーというタイトルが示す通り、死を超越した愛だ。少年と少女の想いは肉体と現世の縛りから逃れ昇華する。
これを事件を美化していると観てしまう人もいるかもしれない。しかし、悲惨な事件を悲惨だと消化して、どれだけの人がその事件を憶え続けることができるだろうか。この美しい愛を観た人は、それゆえに残酷な現実を決して忘れないだろう。
この世界は暗澹として、それでも美しい
ジュゼッペを想うルナ、好きな男の子のことを「夢みて」想い続けるルナの、夢と現の間で展開するラブ・ストーリー。
その中にも思春期らしい親への反抗や成長が描かれ、イタリア社会が抱える問題が見え隠れする。
いなくなってしまったジュゼッペを探して、彼のバックを拾いに戻ったルナは散らばったノートや筆箱を集めていく。その中に、多分ジュゼッペの宝物であろう悟空のフィギュアもあった。
悟空の髪が青い、というのが重要。青はジュゼッペの色で、彼とルナをつなぐ色だ。希望の色、愛の色、ふたりの絆の色である。
印象的なルナのコートは赤で、青い髪と赤い服の悟空がバラバラにされていることが、この映画の悲しい結末を予感させる。
ジュゼッペがいなくなった。どうする?
その問いかけは、社会に対する問いかけだ。大人はみんな何が起こったのかわかっている。わかっていて、関わらないようにしているのだから。
そんな態度に対してルナは問いかける。
ジュゼッペがいなくなった。どうする?と。
探して欲しい訳じゃない。ただ、変わってほしいだけだ。ジュゼッペがいなくならない社会のために、あなたはどうするの?
髪を青く染めるルナ。ジュゼッペの不在を気に留めないクラスメイト。ルナを問題視して髪を剃らせる親。
表面上は反抗の物語が綴られるが、その内部に潜むのはマフィアとの闘いの物語だ。
卑劣な行為を許さない、と声を上げる者。安寧のために目をつぶる者。そして、異分子を抑えこもうとする者。
周囲の人間が見たくないものから目を反らす中で、ルナだけはジュゼッペを見ている。ルナの心の中を「夢」という映像で見せながら、「夢」はその主であるルナを導く。
ルナ自身が薄々ジュゼッペの運命に気づいているから、ルナの夢は彼女を「死」へと誘おうとするのだ。
青い殺鼠剤をお菓子のように口にするルナ。ルナにとってジュゼッペとのつながりはもう「死」しかないのか…と思うと、胸が締め付けられるように痛む。
ルナを「死」へと誘う夢の中と、「こんなところで夢など見れない」と嘆いていたジュゼッペの夢が交錯したのは、ジュゼッペの愛がなした業だと思いたい。
ジュゼッペの夢を運んできたのは、小さなフクロウで、彼の思いがルナの親友・ロレダーナに届く。
ロレダーナだけは、ジュゼッペとルナのお互いを想い合う気持ちがはっきりと見える。
現実にはない出来事を巧みに視覚化することで、虚実織り混ざった幻想的な物語に多重な意味を持たせながら、仄かな希望を感じさせる美しい映画である。
悲惨な事件を忘れないという事と、悲惨に生きていくことは違う。
ルナはジュゼッペを忘れない。でもルナの目の前には天国のような青い海が広がっていて、友達がいて、抱きしめてくれる人がいる。
海は再生の象徴だ。雨が川となりいずれ海に帰るように、死者は生命が誕生した海に帰っていき、また新たな生命となるのだろう。
海は「私」につながり、「あなた」や「彼」や「彼女」とつながっている。
このつながりを、どうか忘れないで。
ジュゼッペがいなくなって、「私」に出来る事。その小さな一歩は、「彼」を忘れないことなのだ。
全身青い服に身を包んだルナの笑顔が、そう言っているように見えた。
多くを語らぬストーリー
南無阿弥陀仏♥
カトリック教徒と言えど、自分達の利益の為ならなんでも出来る。
人の命なんてオブラートに包んで、ラップミュージックと一緒にパレルモ沖に流せば良い。
以上。
しかし、こう言った出来事ってシチリアだけなのだろうか?
あの方のあの言葉
『殺人はビジネスさ、規模が小さくてはてはうまくいかない』を思い出し、ガテンが行く。
そして、そう言った彼をコミュニスト呼ばわりして排斥する。
この映画もそれを避けたのだろう、と良心的に解釈する。でも、もう少し手を加えるべきだ。
ネタバレしてから見るか、最後に全て知るか
前情報無しで見ると静かで暗い雰囲気にスピリチュアルなシーンで「?」となってしまっていたけど、全部見た後にうああああああ〜って悲しみが止まらなくなる。
最後まで見た後だと青春の輝きにこんな表現があるなんて…暗いからこそ若さが美しさが際立っていて…純粋なラブストーリーが鎮魂歌として胸に刺さってくる。
ただ暗くゆったりとした間が見てられない人は先にネタバレした方が良いと思う。
全部見てからの衝撃も味わってほしいけど、この映画の地元のイタリアの人達なんかは元の事件を知っている前提で見ているはずで、そう考えると前後関係分からずに放り込まれる必要も無いと感じます。例えば「誰も知らない」を何も知らずに見るのと同じ事です。
ふと前に何かの旅番組で南イタリアのマフィア問題は根深くて地元に影を落としてるって町のイタリアおじさんが語るシーンがあったのを思い出したんだけど…これ見てあぁこういう事も含めてなのか…とあの言葉に少し実感沸きました。
イタリアでも流行っているドラゴンボール
シチリアの海に癒される・・・とはいえ、最後のテロップには驚かされる。時間の経過があまりにも伝わってこないため、どこからが回想シーンでどこからが現実なのか掴みづらい。もともとショートヘアの13歳の少女ルナ。「つき合ってほしい」とラブレターを書いた直後に失踪した少年ジュゼッペのために、「ジュゼッペがいなくなった。どうする?」といったビラをも配る。が、その時青色に染めた髪。親に怒られ丸坊主・・・時系列がハッキリしてるのはここだけ。
湖の中での妄想や、徹底的に追及しようとする姿など、サスペンスタッチではあったのだが、ここから話が混沌としてくるのです。結構入れなくてもいいシーンを挿入してあるため、ジュゼッペは現実なのか夢なのか・・・がわからなくなる。
悲しい事件ではあるけど、もうちょっとわかりやすく作ってもらいたいところ。湖に何かを沈めるシーンも長すぎ・・・正体がわかったときには思い出したくなくなってしまいます。対照的に美しい風景が登場するため、シチリアに行ってみたくもなります。
【切なくも哀しすぎる少年少女のラブ&ダーク・ファンタジー作品】
舞台は1993年、シチリアの小さな村。
13歳のルナは同級生の美しきジュゼッペ少年に恋をし、想いを手紙に託す。ジュゼッペも嬉しそうだ・・。
だが、その日からジュゼッペは姿を消してしまう。
ジュゼッペとの交際を許さなかったルナの両親始め、ジュゼッペの両親(特に父親)、周囲の大人たちも少年の失踪に無関心を装う。
ルナと親友ロレダーニだけが、髪を青く染め、”ジュゼッペがいない、どうする!”という言葉を載せたチラシを町の人々に配る・・。
ここからは、ルナがジュゼッペを深く想うが故の幻想的なシーンと現実が交互に映し出される。
そして、シチリアの美しい自然も共に映し出される。
傷ついたジュゼッペの姿、だが、ルナに対してはかつての優し気な表情のジュゼッペが寄り添う・・。
<エンドロールでテロップで流れた”戦慄すべき事実”の衝撃に、劇中の幻想的な映像の内容が全て氷解しつつも、
ルナが新しい世界に踏み出したことが分かる、ラストの明るい海岸の姿に少しだけ救われた気がした作品。>
恋の魔法
シシリアンゴーストストーリー、なるほどな。
どう言う展開になって行くのかと思ったら
そうだよな。
実話が元だとドラマチックな結末は訪れないよな、
と分かってくるのだけど、
その悲惨な物語を美しくロマンチックな映画にした
脚本と映像は素晴らしいと思う。
ある意味これも恋の魔法だったのかなと
15歳の純真が見せてくれた夢だったのかなと思うと
妙にリアルだった。
川に投げ入れられた残骸を
底につくまで撮っていく、あの映像は恐ろしさの中に
美しさもある不思議なカットだった。
ところどころ、何がどうなってるのか分からなかったり
ダルいと思うところもあったけど、
ラストの海辺のシーンは最高だった。
彼は彼女の中で永遠に生きて行くのだな
と思える最後でした。
驚くくらいに染みず響かず
分かり難い
そんな結末あり?むなしくつっこむしかない。
見終わって、でゴーストはどこにいましたか?という問いが、残りましてね。
なんのこっちゃねんという感想になってしまいました。
この映画は、90年代に起きた実際の事件(ギャングに拉致された少年が数年間禁されたのち酸で溶かされて殺された )へのレクイエムらしいので、
あとから多少はなるほどなと思ったのですが、そういう着地になるとは思わずに
見ていたら、私には合わない物語運びでございました、ということになりまして。
ジュゼッペには、お気の毒にという気持ちはありますし、お気の毒ではすみませんよね、むごいですよね…という気持ちはあるのですが、
いかんせん、いつかジュゼッペは開放される!と思って、その気持ちを支えにしてみていたので、いきなりドラム缶に突っ込まれてなんか液体かけられてっていう結末にうっそでしょ…という…ね。
いきなり車から投げ捨てられた気分になって、え?え?ええええええ?
という衝動が強くてどうにもいい印象が掘り起こせませんでした。すみません…
ジョゼッペ可哀想すぎてツライ… 厨二病的表現
映像は美しい。暗くて青みがかってて。若者は美しいし、ファッションも車も80年代で、おしゃれ。
自分に非はないのに、父親がマフィアで最低なやつというだけの理由で、100日以上拘束されて、身体がぼろぼろに弱ってから、結局殺されるなんて。まだ13歳なのに。やっと好きな女の子とキスしたとこなのに。
沼に捨てられた屍が浮遊する場面長すぎる
あの場面みて、綺麗な映像〜♡とか思えないし
悪趣味
これ実話を元にしてるというけど、この映画作った人は何のために作ったんだろうって、映画館出てからもしばらく考えちゃった。
なんか面白がってない?
わたしは好きじゃないな
少し冗長に感じられてしまった...
イタリア・シチリア島で実際に起きた誘拐殺人事件が下敷きとなった少年少女の悲恋物語。マフィアに誘拐された少年ジュゼペを、彼に好意を抱く少女ルナが捜してゆくストーリーですが、実際に彼女の回りで起こっていることと、彼女が妄想・想像してることとが、切れ目なく描かれているので、観る者からすれば展開が少し分かりづらかったと感じたのが素直な印象。心象風景の映像は観ている分にはとても綺麗なのですが、話の展開がゆっくりなので、ついつい私も夢の世界に落ちてしまって... おそらく、この悲惨な誘拐事件を風化させまいと言う思いでこの作品が作られたのではないかと推察しますが、その思いとは裏腹に、マフィアと言う犯罪組織の中で行われてた一つのリンチ事件を描いただけのように感じてしまったのは私だけでしょうか?作品の舞台となったシチリアの風土や存在悪としてのマフィアと現地の人々との関わり方についてもう少し描写があれば違った受止めが出来たかも知れないな、と思いました。
純愛
闇を照らす月
事件の事は知っていたので結末は残酷なのだろうと思ってたけど、考えていたよりずっと悲しくて美しい話だった。
闇の中に閉じ込められたままのジュゼッペを、ルナだけが夜道を照らす月のように導く事が出来たんだなぁ…。
映像と音楽と二人の純粋さが綺麗だった。
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