家(うち)へ帰ろうのレビュー・感想・評価
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クスっと笑える道中でもうっすらと続く緊張感が、ラストの3分で一気に開放される気持ちよさ
ホロコーストから生き延びた老人が友人との約束を果たすためアルゼンチンから祖国ポーランドに旅するロードムービー。
重い設定だけども、頑固じいさんのウィットな言い回しが心地よく、気を張りすぎないのは南米アルゼンチン映画のなせる技か?
頑固じいさんが周りに助けられて旅を進めていくのを見て温かい気持ちになりました。
ドイツが近づくにつれ見えていくるじいさんの辛い過去に胸が締め付けられる……。
ハッとなる名言も多くある。
”聞いたんじゃない。実際に見たんだ。”は強烈なフレーズ。
ラストシーンの二人の演技は素晴らしい。
わずかな表情の変化で長い月日をもの語る名演。
2018年公開映画の中でも上位にくる素晴らしいシーンでした。
案外さらっと終わるけど、このシンプルな出来事がスゴいことなんだと。気持ちいい後味がありました。
クスっと笑える道中でもうっすらと続く緊張感が、ラストの3分で一気に開放される気持ちよさが素晴らしかったなぁ。
辛いことも笑えることもあっても心から泣ける嬉しいことがあるから生きてる意味あるな、と。
思い返すほど良い映画だったと思えてくる良作です。
3.7
忘れない。
家へ帰ろうの真の意味
70年前に交わした再会の約束を果たすための旅
娘たちに家を処分され老人ホームに入れられようとするユダヤ人の老人が人生最後の旅に出る。
アルゼンチン(ブエノスアイレス)〜イタリア(マドリード)〜フランス(パリ)〜【ドイツ横断】〜ポーランド(ワルシャワ)。そこは生まれた土地であり、1945年の終戦のとき、ホロコーストから逃れ九死に一生を得た土地であった。まさに帰郷である。
まるで人生の縮図のような旅。悪いことがあり、いいことがある。人々(特に女性たち!)の優しさに触れ、頑固オヤジが何だか丸くなっていく感じがした。このオヤジがだんだん好きになってきた。
ゴールが近づくにつれ、死に直面した際のトラウマが鮮明に蘇る。その余りにも強いトラウマが故、これまでドイツやポーランドに近づけなかったのだろうか。
70年の思いが堰を切ったように流れ出すラストは実に感動的だ。このオヤジが大好きになった。
重い歴史を背景にしながらも、温かなバイブレーションがみなぎる秀作。いい気分で帰路に着いた。
老いについて考えさせられるロードムービー
アルゼンチンで仕立て屋を営んでいた老人アブラムは一線を退き高齢者施設へ行くことになっていたが、引退前の仕立てた最後のスーツを持って家族に内緒でこっそり家を出る。彼はポーランドからのユダヤ系移民で、そのスーツは収容所から命からがら脱走したアブラムを匿ってくれた親友との約束で仕立てたものだった。アブラムは存命かどうかもわからない友人にスーツを渡すべくポーランドを目指すがその旅は思いのほか過酷なものだった。
こんな邦題なのでほのぼのした物語を勝手に想像していましたが、結構ヘビーなお話。凄惨な過去を背負った老人がトラウマと向き合いながら旅先で出会う人々と心を通わせる中で現実を受け入れていく様を見つめる映像は美しく、やがて自分にも襲いかかってくる老いというものを深く考えさせられる作品でした。3周り年上の老人が主人公なのに我が身のように沁みるのは監督のパブロ・ソラルスがほぼほぼ同い年だからかも。自分も一線退いたところでこんな人の優しさに触れる旅をしてみたいと思いました。
"NIKE"のスニーカー
歴史の重さ、冷たさ、そして希望
ナチスに迫害されたユダヤ人は、ドイツやポーランドという名前も口にしたくない、実際口にはしない。
それでもその国に住んでいた時に自分を救ってくれた幼なじみを訪ねに行く話。
ホロコースト物として、その残虐さをリアルな映像で示したのが「サウルの息子」だとすれば、この映画はその正反対に、主人公の行動だけでそれがどれだけ残虐だったかを示そうという映画だ。
そして、土地も踏みたくない、名前も呼びたくないドイツという憎むべき国を通過する間の出来事が、またいい。
観ている人の心も少し癒されると思う。幼なじみに会えるかどうかという結末よりも、この「ドイツを通ってポーランドに降り立つまで」を是非見てほしい。
俺は、こういう「希望を感じられる映画」が大好きだ‼︎
ドイツ人の気持ちがわかりました。
カッコいい爺さんのロードムービー
リア王みたいな偏屈な老人が地球を半周する旅をするロードムービーである。主人公は頑固で視野の狭いユダヤ人で、人間の尊厳を卑近なプライドと誤解し、ナチスとドイツとドイツ人をまとめて混同しているが、若い頃の第二次世界大戦を生き延び、親の代からの洋服の仕立てで生計を立てて三人の娘をきちんと育て上げた苦労人でもある。プライドを守るために声を荒らげたりもするが、根は善人で変な悪意は持たない。シャイでユーモアのセンスもある。そして、齢90を超えてなお矍鑠としている。一言で言うと、カッコいい爺さんだ。
そんな爺さんならば、若い頃に受けた恩を忘れずにいるのも当然だ。いつか恩を返したいと願い続けて叶わずにいたが、漸く報いる時が来た。意を決して出かける様がこれまたカッコいい。仕立て屋だからおそらく自分で仕立てたであろうスリーピースは、サイズもピッタリでとってもお洒落だが、足が悪いせいで革靴の代わりに運動靴を履いているところに愛嬌がある。
旅の途中で様々な人との出逢いと別れがあり、主人公の人柄にほだされ、見た目からして老齢ということもあって、いろいろな人が彼を助ける。最後に彼を助けた看護婦は、彼がポーランドに来た理由を聞いて、あなたは素晴らしい人だと彼を勇気づける。
偏屈で強がりの主人公がわだかまりを捨てて、かつて人格と身体を蹂躙され続けたアウシュヴィッツ収容所のあるポーランドを訪れることは、大変に勇気のいることだと思う。仕立て屋の彼は、最期に自分の人生の仕立てを終えたのだ。
じいちゃの演技力か!
憎むだけでなく許そう、と。
ほっこりした佳作
アルゼンチン・ブエノスアイレスに住む、仕立て屋のアブラハム爺さんの話し。
頑固で意地悪、すぐうそをつき、人の話を聞かない爺さん。
娘たちに家を売られ財産を取られ、悪くなった片脚を切断の上老人ホームに送られるという前日、家出をしてしまう。
彼が向かったのは、ポーランド。
1945年の昔に命を助けられた恩人であり、幼馴染の親友のところ。
70年ぶりに彼に会って、自分の作ったスーツを渡すために……
腕についた数字。
悪夢として蘇る過去。
頑なであった理由が少しずつ明かされていく。
彼が旅の途中で出会う女性たちとの交流を通じて、意固地な心が解けていき。
そして、旅の果ては……
ほっこり。
大きな展開の映画ではない。
100分程度の小さな話なのだが、今なお第二次大戦による心の疵を抱く者たちへの、優しさに溢れていた。
ちと、頑固爺さんが美女たちにモテモテ過ぎなのが納得できんところはあるが(笑)、それ以外は実に涙を誘う作品でありました。
闇の深さと愛らしさ
エンドロールは涙を乾かすためのもの
家へ帰ろう
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