半世界のレビュー・感想・評価
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「半世界」しか知れない孤独
映画作品として非常に完成度が高いと思う。
日常がわざとらしくなく、自然に表現されているところに好感を持った。
稲垣吾郎氏が演じる主人公は、私の父親によく似ている。他者全般に興味がなく、家族に対しても無関心なところがそっくりだ。そして、私もそっち側の人間だから、主人公の側の「半世界」しか体感したことはない。
一方、長谷川博己氏が演じる友人は、自衛官時代に亡くなった部下に償いをし続けるほど情に厚い人間である。彼にも、他者に無関心な主人公の気持ちは理解できない。彼も「半世界」しか知らないのである。
主人公と友人たちの交流を通して、それぞれの世界は一瞬、接点を持ったかに見える。しかし、すぐにまた離れてしまい、それぞれの世界の中で終わりへ向かって進んでいく。その孤独が、なんだか胸をえぐるような感じで伝わってくる。
蛇足かもしれないが、誤解を恐れずに書くと、私の見る限り稲垣吾郎氏は他者にあまり関心を持たないタイプのように思える。監督はこの作品の本質的な部分で、稲垣氏が自然に表現できるような役を与えることに成功しているように感じた。
この配役も、本作を映画作品として非常に完成度の高いものにしていると思う。
半世界の意味は映画を見るとわかります!
ゴローさんが「炭焼き職人(紘)」役と聞いたときは正直驚きでしたが、意外と様になってる!役どころは無骨で子供のことも妻任せ。今は自分の仕事を全うするのに必死なのでした。
自衛隊を除隊してふるさとに戻ってきた瑛介(長谷川博己)、家族で中古車販売をしている光彦(渋川清彦)とは幼なじみで、3人で集まると学生時代に戻ってバカ騒ぎ。昔からの友達っていいもんですよね。
でもいくら気心知れた友達同士でも、すべてをわかりあうことはできない、特に就職してからのことはお互い把握できない部分もあるのだなと思ったり。
ハセヒロさんの怒りの爆発力はいつもながら見事で、渋川さんは紘と瑛介の間を取り持つ、ムードメーカーを絶妙に演じていました。
ストーリーはネタバレになるのであれですが、後半は結構急展開…。思い返せば伏線となるシーンもあるんですけどね。
初乃を演じるのは池脇千鶴、童顔の彼女ですが思春期の男の子を持つ母親に見えましたし、紘と倦怠期に見えつつも実は夫を心配し、しっかり支える強い女性がよかったです。
アラフォーの方が見るとより染みる映画だと思います。
佳作
老人お二人のベテランの演技。そう、70年以上あの土地に暮らしてきたおじいさんならどういう話し方、声、動きをするのか、きちんと引き出しを持っているからだろう。
プロの俳優が一本の主演映画の役づくりに命をかけて臨んでこそ出せたであろう「人」を描く寡黙な世界観の映画。軽を運転してもポケットに手を突っ込んでいても力仕事をしていても取引先にペコペコしても、その背中からうらぶれた身勝手なうだつの上がらない田舎の中年の背負っている人生がにおい立ってこないと共感するのは難しい。絋は立ち姿や白飯を口に運ぶ所作、目線の伏せ方から指の先まで上品なのであった……
妻と息子のあの家屋で生活している感の邦画的リアリティは秀逸。
男性に観て欲しい作品でした。
人それぞれ自分の世界をもっている…
日常、でもそこに…
続いていく私たちの半世界
近年の日本映画のなかでは出色の出来。
美しい山間の小さな世界で生きる人々。ささやかな暮らしのなかに、友情があり、親子の愛があり、夫婦の愛がある。
森や海の美しい風景とともに描かれる3つの愛が、
強く深く心に響く。
俳優陣もみな素晴らしい。小さな世界を生きる住民と、大きな世界から帰る男を、それぞれがリアルに見事に演じている。
難関な重い映画ではなく、笑いも随所にある。
涙を禁じ得ないシーンもあるが、それが希望へつながっていくラストもまた素晴らしい。
阪本順二監督の代表作になるだろう
語りたくなります
「稲垣吾郎」はいない
半世界
試写鑑賞。
幼馴染みの男3人。昔と今の境遇と関係性の微妙なズレが悲しみを生む。
稲垣吾郎演じる炭焼き職人の大変さ。長谷川博己の「こんなことをずっと一人でやってきたのか」という一言に、孤独と過疎化の進む寂れた地方の現実を突きつけられる。
主演の稲垣吾郎にはいい意味で裏切られた。あの都会的な伊達男のイメージは全くない。とにかく全然カッコよくない。自分勝手で子供にも疎まれているが、特に気にやむ様子もない。鈍感で不器用なオッサンを、妙に悲しみを背負わせたり同情を誘うようにドラマティックにしたりしないで、あえて淡々と演じている稲垣吾郎。だから観ていてとても腹立たしいのだ。それが後半少しだけ変わってくる。少しだけ。だから悲しい。とてもうまい。
長谷川博己は安定の演技力と身体能力でトラウマを抱える元自衛官を演じ、渋川清彦は気のいい男をまんまのキャラクターで演じる。そして、、なんといっても池脇千鶴のリアルな生活感と艶かしい可愛らしさがこの映画をはピシッと締めてくれる。
色んな想像を書き立てられるエンドロールに涙。息子役の男の子もうまい。
多くは語らず、観客に委ねるような映画だが散りばめられた色んな要素を発見できたとき、この映画のホントの深さに気付く。とてもいい映画だ。
東京国際映画祭にて試写、のちに観客賞授賞
東京国際映画祭 観客賞
登場人物それぞれの立場で考えることができる作品。阪本順治監督のオリジナル脚本。
職人の世界。田舎の生活。妻の役割。学校のいじめ。家業の継承。友人との絆。離婚。心の傷。グローバルとローカル。等々。
何度も観たくなる、秀逸な作品。
あなたが意識している世界とは
東京国際映画祭「観客書受賞作品」で鑑賞。
伝えたいテーマとストーリー自体はとても重厚で良く、かといって堅くまとめるのではなく、随所に笑えるポイントが散りばめられている演出は観やすかった。
ただ、2時間では描ききれなかったか、それぞれの感情の変化や、それらの関わり合いの描き方が足りなかった気がした。(過去にトラウマを抱える男や、親子関係など)
世界は広く、人それぞれの人生があり、自分が中心だと思っていることが、他の人にとっては意識しないことがほとんどで、でもどれが正しいというわけでもない。それぞれが精一杯生きている現実だし、その関わり合いが生きるということなのだろう。
ところで、炭づくりってやはり大変だよね。ご多聞にもれず、その世界も大量生産の効率化の波に流されてしまっているんだろうね。。
情けない男たちの物語
個人的な感想は、この映画を好きという人と嫌いという人は、極端に分かれるのでないかと思う。
この物語に出てくる男の登場人物は情けない人が多かった。
物語が始まって前半、わたしは稲垣吾郎をぶん殴りたくて仕方がなかった。家族を守らない、自分が一番、、父親なら家族のこと守って幸せにしてやれって素直に思いました。
でも、そんな稲垣吾郎にも何だかんだ葛藤があった。
人間の葛藤が広くわかる作品であった。
そして、ダメな人間でも人に必要とされ、かけがえのない仲間がいて、愛されるというのが伝わり、価値観が広がる作品であった。
稲垣吾郎の息子役と池脇千鶴、長谷川博己の存在感がとても良かった。
ただ、省いている描写だったり、登場人物の思いに共感できない場面も多く、もやもやした場面が多かった。
世代、性別によってこの映画の感想は大いに分かれるであろう。わたしはこの映画を見た人と自分の理想の世界を語りたいと感じた。
役者と監督の力量が見事に発揮されている
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