バッド・ジーニアス 危険な天才たち : 映画評論・批評

バッド・ジーニアス 危険な天才たち

劇場公開日 2018年9月22日
2018年9月11日更新 2018年9月22日より新宿武蔵野館ほかにてロードショー

集団カンニングを犯罪映画のスタイルで魅せる独創と洗練

本作は実話に着想を得ている。2014年、米国留学への条件となる大学進学適性試験(SAT)で、中国と韓国の学生多数によるカンニングが発覚。受験予備校が主導し、時差の関係で数時間早く実施される外国の試験会場から、雇われた受験生が試験問題を携帯電話で連絡係に伝える組織的な手口が各国で報じられた。

この話の映画化に動いたのがタイの映画界だ。製作陣が白羽の矢を立てた監督は、1981年バンコク生まれ、長編デビュー作のシチュエーションホラー「Countdown」(2012)がいきなりアカデミー賞外国語映画賞のタイ代表に選ばれた俊英ナタウット・プーンピリヤ。脚本家2人とシナリオを共作し、天才女子高生リンを中心とする高校生チームが大がかりなカンニングに突き進む物語へと翻案した。

まず主要人物のキャラクター設定がいい。離婚歴のある教師の父に育てられたリン。親が印刷所を経営し勉強が苦手な美少女グレース。試験中に解答を同級生たちに教えて対価をもらうビジネスをリンに持ちかける御曹司のパット。リンと並ぶ秀才で母のクリーニング店を手伝う苦学生のバンク。片親で貧しい天才2人と、裕福な親を持つ凡才2人の対照性。格差社会の縮図のような4人は、才能と金銭のやり取りでつながる危うくてもろい関係だ。

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CMと音楽ビデオでキャリアを築いたプーンピリヤ監督らしく、アップやスローを要所で配したスタイリッシュな映像と小気味よい編集で観客を引き込む。特に印象的なのが、リンがカンニングを可能にする方法をひらめく“アハ体験”の瞬間や、現場で不測の事態に追い込まれながらもインプロヴァイズ(即興)で切り抜ける場面だ。ある試験会場でリンを正面から写したショットは、ヒッチコックの「めまい」(1958)で有名なドリーズーム(カメラ移動とズームによって背景の遠近感を変化させる撮影法)を使っているかと一瞬錯覚させ、背後からの視点に切り替わるとリンが机ごと前に移動しているというファンタスティックな演出で楽しませる。

映画のスタイルとしては明らかに、「オーシャンズ」シリーズや「インセプション」(2010)のようなケイパー/ハイスト(泥棒・強盗)ものだ。個性豊かな仲間たちが各々の知能や特技を活かす作戦を立て、困難な犯行をやり遂げる痛快さ。想定外のトラブルと追っ手から逃げるチェイスシーンで高まる緊張感。かつて学園コメディのネタにしかならなかったカンニングを題材に、スタイリッシュな犯罪映画を仕立てたプーンピリヤもまた非凡な監督と言えよう。

高森郁哉

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