万引き家族のレビュー・感想・評価
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富裕層にはさっぱりピンとこないアジアの異世界
凍てつく冬の東京の下町。治と祥太はスーパーで万引きして帰宅する途中に団地の廊下で蹲っている少女を見つけ家に連れて帰る。ゆりと名乗る少女を家主の初枝と孫の亜紀は暖かく迎えるが治の妻信代は不満顔。深夜にゆりを帰そうと治と信代は団地に向かうが外に漏れ聞こえてくる声は普通の家庭のそれではなかった。
狭くて小汚くてガラクタが積み上がったあの家は思春期の原風景そのもの。あの世界から何としてでも這い出したい、その切実な願いだけで思春期をやり過ごしてきた自分にとっては全然シャレになっていませんでした。運良くあの世界から抜け出せたのに似たような世界は中川沿いに今も横たわっている、これは物凄く痛い。
触れられたくない過去から逃げて来た者たちが肩寄せ合って暮らす様を暖かく見つめる目線と、彼らがふと零す言葉の端々に滲む社会に対する憤りが深い余韻を残す作品。是枝監督の作品は今回初鑑賞ですが社会の底辺で逞しく生きる人々の心情を日常のあるあるを織り交ぜながら丁寧に描写する演出は見事としか言いようがなく、それに応える演技陣の巧さにも感銘を受けました。特に樹木希林、安藤サクラ、松岡茉優、それぞれの立場で母性を滲ませる演技には何度も泣かされました。“捨てたんじゃない、拾ったんです。捨てた人は他にいるんじゃないですか?”とボソッと吐き捨てる安藤サクラのセリフが特に印象的。
ちなみに本作を鑑賞したのは高級コンドミニアムが建ち並ぶ界隈にあるシネコンのプレミアムスクリーン。客層は近所に住む富裕層ばかり。貧乏をした経験もなければ下手すれば汗水垂らして働いたことも家事も洗濯もしたことがないような人達にとって、遠いアジアの小国にも厳然と横たわる貧困は全くの異世界だったのか全くピンときていない様子でした・・・まあそりゃそうでしょうけど。
家の中の雑多な生活感が見てて楽しい
ミニシアターでの見逃し上映回で、遅れての観賞。
「自分で選んで来た家族の方が絆は強いのかも」に同感。役者全員の演技が素晴らしい。面白く笑えるシーンもあったしお奨めできる。
夕立のシーンはスクリーンのこちら側まで風が吹いてくるような臨場感があった。
家族が、ほしくなった
是枝監督が描く「家族」の作品はいつも心に沁みる。
そして、彼が投げかける家族の理想の在り方は、おそらく私が理想とするそれとよく似ていて、それでいつも切なくなるんだと思う。
肩書で見えなくなってしまう本質とか。一緒に過ごす時間の大切さとか。お互いを真摯に見つめることの難しさとか。
本作は、ものすごく極端な家族の話であった。倫理的に問題ありありなんだけども、貧しくも温かくて小さな幸せと笑いに溢れており、ある瞬間は奇跡のように「美しく」すら見える、という皮肉さ。
ただ、単なる美談に留まらないのがこの話のキモであり面白いところ。
成長と老いにより、家族のバランスは少しづつ狂っていってしまう。
リリーフランキー演じる治は子供がそのまま大人になったようなオヤジで、ダメさ全開なんだけど憎めない。安藤サクラ演じる信代もちょっと人生に疲れた力の抜けたおばさん、くらいに思ってたんだけど後半の展開でいい意味で裏切られた。
もう信代の事情聴取のシーンは思い出しても涙が出てくるし、治が面会に来るシーンの信代の「本当に幸せだったからこんなんじゃおつりがくるくらいだよ」という言葉にも号泣。
もちろん犯罪であることも問題があるのもわかってるんだけど、どうかこの家族を元に戻してやってくれないだろうか、一緒に生きる道も探してあげてくれないだろうか、と願わずにはいられない自分がいる。
鑑賞記録
公開されたタイミングに、日本で傷ましい児童虐待の事件がありました。この作品を観て、それを想起しない人はいないのでしょうか。
「正しい」とか「悪い」とかという一議的な概念では測れないものがこの世にはあるのだと思います。血の繋がりがなければ家族とはならないのか。お腹を痛めて子を産まなければ母親にはなれないのか。朝ドラヒロインの安藤サクラがふくちゃんとは180度異なる表情で魅せます。決していい気持ちにはならないですが、観終わった後に何かを残してくれる作品です。
賞狙いの駄作 もっと練って作れよ
良くも悪くも是枝色が満載(逆光気味のライティングとそのものズバリを見せずに感じさせる演出)で何も知らずに見ても「あ、これは是枝」と分かるくらい個性の強い作品。しかしナチュラルな演技を狙うほど逆にカメラアイを意識してしまうのだ。特にファーストカットでボケたスーパーの背景に男の子のがフレームインする所謂「待ちポジ」が最悪。続いてスーパー内を2人が歩く段取りどうりのカメラワークも最低で、のっけからいきなり白ける。ただただ安藤サクラの演技がスゴく今年の助演女優賞確定。タイトルに冠するならもっと万引きをプロらしくテクニカルに見せて欲しかった。
どの部分を切り取ったとしても
あまりにリアル。
環境が、状況がというより、普遍的な人間の心理を浮き彫りにして突きつけられた気がした。
人間は生きるために生きていく。
家族とはその生きていく中での幻想の一つにすぎないのかもしれない。
誰に感情移入するかで見え方が変わる作品
いままで是枝裕和監督の作品は広瀬すず主演の『海街diary』しか観た事がありませんでした。観る側のレベルが問われる系の作風なのかなという印象があり、無意識のうち避けていたのかもしれません。
本作においては、ストーリーとしては理解できるが、監督からのメッセージをどこまで理解できたのか、自信がありません。この物語は、登場人物ごとにストーリーがあり、それぞれにエンディングがあり、それぞれが異なる感情を抱いて幕を閉じるものであると認識しました。ゆえに、誰に感情移入するかによって鑑賞後に抱く感情が異なるような気がします。
わたしの場合は松岡茉優役の亜紀に感情移入しました。彼女の視点で物語を追うと、最も寂しい想いをしたのは彼女ではないかと感じ切なくなりました。真実がどうであれ、彼女が警察から突き付けられた言葉はあまりに酷なものでした。ラストのシーン、かつて住んだ家の前に佇む彼女の姿は戸惑いと哀しみ、あの時間が真実であってほしいという僅かな希望、願望が消化し切れていない姿として見えました。彼女が人を信じる心を取り戻すのには多くの時間を要するのではないかなと感じました。
作品を通してのベストカットは、やはり樹木希林さんの海辺のシーンはだと思いました。血のつながりがあったとしても、皆があの感情に到達できるというわけではないので「家族」という概念を改めて考えさせられました。
切ない
家族の在り方を考えさせられる作品です。
最初から最後まで切ない。
文句なしの演技派俳優陣ですが、作品の内容を邪魔するくらいに
少し豪華すぎるかな、とも。ダメな人をやらせたら天下一品のリリーさんという使い方も少々飽きてきた。社会問題を提起する映画も多少のエンターテーメント性が欲しいところ、終わり方の余韻も今回は弱かったように感じます。是枝ファンなので次作に期待しています。
人物描写が好き
本当の家族じゃないのに家族として共同生活する人達。劣悪で、秩序も、道徳も欠如している。個々の登場人物が抱えている悲しみや闇が、細かくセットされていて、何気ない日常会話の中に、上手く散りばめられていて面白い。
家族って何だろうって考える。
とても考えさせられる映画
捉え方はたくさんあるでしょう
でも、そういう映画はいい映画だなと思います。
ラスト20分とかはもう本当に涙が止まらなくて
正解がわからなくて
きっと正解なんてなくて
しばらく椅子から立てなくて
というか立ち上がりたくなくて
言葉が発せなくて
なんていっていいかわからなくて
いろんな意見があるように
自分の中にもいろんな意見があって
受け入れ難いものや肯定してあげたいもの
そんな葛藤と向き合って
自分の中に答えを出すのが難しくて
悲しくなって
これが社会の問題なんだなと思えて泣けてきて。
つまり
肯定的な意見と
反対的な意見が
どちらも出て
社会問題の議論の場になるから
いい映画だったなと思うんです。
理解できない!ありえない!
と、そんな簡単に片付けて
この映画のメッセージを見逃さないで欲しい
メッセージはひとつではないと思うし
もしかしたら、矛盾してるかもしれない。
すべての意見(立場の人)に
寄り添える柔軟な心と行動力を持っていたい
これぞ是枝作品!
虐待や貧困など重いテーマではありますが、これぞ是枝作品という独特な空気感と心理描写に深みがあります。
俳優人・女優人・子役の皆さんの演技の巧さが圧巻で、これも是枝監督の演出技量の高さなんでしょうね。
とてもいい映画でした。
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