ガンジスに還る

ALLTIME BEST

劇場公開日:2018年10月27日

ガンジスに還る

解説・あらすじ

インドの新鋭シュバシシュ・ブティアニ監督が弱冠27歳で手がけ、ベネチア国際映画祭などで賞賛されたヒューマンドラマ。雄大なガンジス河を背景に、誰にでもいつか訪れる「死」というテーマを、ユーモアと人情味を交えて描いた。ある日、不思議な夢を見て自らの死期を悟った父ダヤは、ガンジス河の畔の聖地バラナシに行くと宣言する。家族の反対にも決意を曲げないダヤに、仕方なく仕事人間の息子ラジーヴが付き添うことに。安らかな死を求める人々が集う施設「解脱の家」にたどり着き、ダヤは残された時間を施設の仲間とともに心穏やかに過ごそうとするが、ラジーヴとは何かと衝突してしまう。しかし、雄大なガンジス河の流れが、次第に父子の関係を解きほぐしていく。

2016年製作/99分/G/インド
原題または英題:Hotel Salvation
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2018年10月27日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10

(C)Red Carpet Moving Pictures

映画レビュー

4.0 生の最期の締めくくりを考える

2018年11月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

夢で死期を悟った父が息子の付き添いでインドの聖地バラナシを訪れ、死期を待つ物語。何事もことごとしく起こらず、静かに死への時間を過ごす。27歳でこんな老成した作品を作る監督は何者なのだろうと思う。

父と働き盛りの息子、そしてさらにその娘の世代間の違いも反映されている。ヒンドゥーの死生観にどこまでも忠実な父、インドの経済発展を象徴するかのように仕事に追われる息子、そして自立して自分の道を自分で決めようとする新世代の女性の長女。新世代よりの年齢の監督がむしろ、インドの伝統的価値観に寄り添っているのが印象的だ。

バラナシにはこのような死を待つためのホテルがいくつもあるらしい。死という生の最期をどのように締めくくるかは、全ての生きる人がいつかは考えなければならないことだ。この映画の父のように良い死を迎えるためには、きちんと今の生を全うしなければ。そんな気にさせる映画だ。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
杉本穂高

4.5 残る余韻がしばらく後を引く秀作

2018年10月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

笑える

ガンジス河畔のバラナシは、死して解脱することを待つ人々が集う待機場所。ある日、バラナシに行くと宣言した老父と、多忙な仕事を何とかやり繰りして同行する息子にとって、そこは、なかなか相容れることがなかった親子の"最期の"対話の場所になる。日本に置き換えると養護施設ということになるだろうか。でも、バラナシに漂うインドならではのスピリチュアルな空気が、なぜだか、この物語に奇妙な至福と少しのユーモアをもたらしている。死ぬことは悲しいけれど、残された時間を過ごす少しの知恵さえあれば、もしかして不幸ではないかも知れないと思わせるのだ。そして、同時に、だからこそ、人の命のはかなさが胸に迫って苦しいのだけれど。親子の和解、別れ、人生、新たな旅立ちetc。残る余韻の普遍性が、しばらく後を引く秀作だ。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
清藤秀人

3.5 文化の違いを垣間見る

2025年6月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

不思議な夢をみて死期を悟った父は、最期の時を迎えるためガンジス川のほとりにある悟りの家にいくという。
病気だとか、もう本当に死んでしまいそうなほど老人であるとかそんなわけではないところが興味深い。
ただ夢をお告げだと「信じている」わけだ。

この作品中で描かれることは2つかなと思う。作中における「解脱とは」と、息子の父離れだ。
まずは「解脱」について。
悟りを開くことで安らかな死を迎えることができるわけだが、一体何を悟るのかが重要なのだ。作品の中では、やり残したことがなくなることかと思う。
残された人がしっかりやれるように導くこと、示すことなのではないかと思う。

父親は息子の精神的な自立を促すことで「解脱」する。それは2つ目のテーマである息子の父離れに直接繋がる。
ヒンドゥー教とかイスラム教圏の人は親に対する愛情が過剰に深い。それは全ての中心が親であるかのごとく。文化の違いなので批判するつもりはないが、父親のために息子が命を投げうつなんてことが映画などではよくある。
例えば父親が命の危険がある人質になっているとする。日本などではその場にいる息子に対して、危ないからお前は逃げろと父親が言うものだ。これがインドや中東の国になると、自分が人質になるから父親を離せと息子が言うわけだ。酷いやつだと人質になっている父親が自分の息子に代わることを強要したりもする。
つまり、文化的な違いからくる息子の父親への依存ともいえる状況が出来上がっているわけだ。

穏やかな映像と演出で、文化を破壊しない程度に行う家父長制へのアンチテーゼだったように感じた。
ドギツくやりがちな欧米と違ってマイルドなところが本作の魅力かと思う。
最期の時を迎える解脱の家が舞台なので人が幾人か亡くなるわけだが、悲壮感よりも美しさが先にくるところも魅力的だ。
全体的になんか優しいんだよね。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
つとみ

3.0 異文化に触れる

2020年3月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

死期を感じるた父と、それを支える家族の物語。
インドの文化が強く表現され、色々な価値観を知ることができた映画。
日本では考えられないなぁと思う事も、インドから日本をみたらきっとそう思う所が沢山あるのだろうなと感じた。
淡々とストーリーが進む為、やや退屈になりがちではあったが、ドキュメンタリーと思うとしっくりくるか。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
Pathfinder