「空気を読む?自分の人生を生きる?」響 HIBIKI Maple Mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
空気を読む?自分の人生を生きる?
作中のお伽の庭という作品がどれだけすごいのかは、作中の批評からしかわからないが、生きるという事の概念が変わり、過去現在未来という概念が吹っ飛ぶくらいの物らしい。
それを書いた響こそ、作中のそういった概念を体現して生きているのではないかと感じた。
彼女が暴力を振るうのは、正論で、相手が間違っている時と誰かが傷つけられそうな時。そして、生命に未練がない。それは、他人を気にせず今を全力で生きているからなのではないか。
最初は、周りとのコミュニケーションが上手くなく小説の世界でしか居心地が悪く、また15歳と若いから、守るべき物もまだなく、生きる事に執着していないのではないかと思ったがそうではない。
響は、周りにどう思われようとどのように評価されようと関係なく、全力で感情表現し、全力で表現したい事を原稿用紙にぶつけて表現し、生きている。
口で売られた喧嘩を買い、暴力で返すのはどうかと思うが、見た目にそぐわず実は根っからの表現者。
大人は響を見て、大人になる必要があると考えるが、響は実は大人より大人で、本質を見抜いた上で誰にでも態度を変えずに直球勝負していて、生命を全うしていると感じた。
友達のアヤカウィルソンはその真逆。空気を読み大人達の意向に沿った結果、本当に表現したかったものを見失ったまま、二世として作家デビューしてしまう。でも、心の迷いに勝てなかった、妥協してしまった作品への評価は正当に本人に返ってくる。
響ほど極端に人を暴力で傷つけ周りの流れを無視する必要はないのだけれど、一度きりの自分自身の人生、思いっきり生きてますか?周りにや自分を、諦めてませんか?と聞かれているような作品。
ただし、響の両親が一切出てこないのは演出上仕方ないのだが、出てきていればもう少し響のキャラに生い立ちや育ち方が加わり、キャラクターに深みが増したかなと思った。