志乃ちゃんは自分の名前が言えないのレビュー・感想・評価
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言葉を紡ぎ出すことに苦しむ貴方のための映画
人気漫画の安直な実写映画化が批判を浴びている昨今だが、本作はそのようなものは一線を画する、本気で作られた映画である。
そもそも原作は人気漫画といっても作者の実体験をベースとした私小説的なものであり、よく言えば文学性の高い、悪く言えば地味な作品である。漫画実写化が流行っているといっても、そのような種類の漫画が映画化されることはそう多くない。
映画は原作を丁寧に再現しており、改変部分についても納得がいくものであると思う。(賛否両論あると思われる結末の改変は、自分としては正解というか必然ではないかと思う。理由はネタバレになるため省略。)パンフレット代わりに発売されたオフィシャルブックを見ると、原作者との密な連携のもとに映画化が進められたことが伺える。
オーディションで選ばれたという主演の南沙良と蒔田彩珠は、すでにいくつかの作品で優れた演技をしており、報道によれば今後の出演作も多数決まっているようだが、現時点での知名度は低く、所謂「客を呼べる役者」ではない。撮影当時14歳と役よりも若い年齢であったと聞いて驚いたが、このキャスティング一つとっても、この映画が本気で作られていることが伺える。
そして、南沙良の演技が凄い。難発性の吃音症という非常に難しい役を完璧に演じているだけでなく、モデル出身の美少女でありながら鼻水を垂らして顔をぐちゃぐちゃにして泣く演技を2度も行っており、その熱量にただただ圧倒された。南沙良自身が原作のファンだったそうで、並々ならぬ覚悟で役作りに取り組んだに違いない。今年の映画賞では新人女優賞を多数受賞してほしいと思う。
以上、褒めてばかりいたが、この映画には問題点もある。時代考証が行き届いていないので80年代後半に青春を送った私にすらいつの時代の物語なのかわからなかった、とか、吃音症の表現をリアルにしたあまり物語のテンポが悪く大方の人には退屈な映画なのではないか、という点である。
だが、私から見れば、この映画を退屈に感じる人は、人とのコミュニケーションに苦労していない幸せな人なのかなあ、と思ってしまう。私は吃音症ではないけれど、人に話しかけるときにストレスを感じたり、一人ではすらすら言葉が出てくるのに人前では言葉に詰まったりするので、吃音に苦しみながら必死で言葉を紡ぎ出す志乃ちゃんの姿が他人とは思えず、ああ、こうなんだ、こうなんだよと思い、何気ない場面でも何度も泣きそうになってしまった。
少なくとも私にとっては、長く心に残り続ける映画になると思う。他の映画と比べて今年度ベストワンとかいう映画ではなく、自分のためだけに作られたオンリーワンの特別な一本である。
(2018/11/29追記)
南沙良と蒔田彩珠が第43回報知映画賞新人賞を受賞とのニュース。本当に嬉しい。長い報知映画賞の歴史の中でも、同一作品から女優2名が新人賞に選出されるのは初めてとのこと。
みんなコンプレックスを抱えてる
大人になって汚れきった心をキレイに洗い流してくれるような、繊細で美しい清涼感のある映画だった
高校に入学したばかりの志乃は、吃音がひどくて、同級生と上手に会話することができない
しかし、ある時、クラスメイトの加代と友達になり、一緒に過ごすようになる
そして志乃は、加代から一緒にバンドをやろうと声をかけられ…
志乃は、とても繊細で、感受性の強い子だ。
周りにいる人たちの感情の波動を人並み以上に受信して、人並み以上に飲み込んでしまう
だから、上手に話せば話そうとするほど、吃音が酷くなってしまう
それに比べて、加代はとてもクールな子だ。
周りで起きていることを「適当に受け流す」というスキルを持っている。
そんな加代でも、大好きな音楽のことで笑われると耐えられない。
その辺は、まだまだ高校生なのだ。
そんな、プラスとマイナスのふたりだからこそ気が合ったんだろうと思う
しかし、そこから、そんな2人の間にもう1人入ったら、2人の関係はどう変化していくのかが描かれている
私が、この映画で良いなと思ったのは、その吃音という悩みを抱える志乃を特別扱いしないところだった。
誰もが、人には言えないコンプレックスを抱えていて、みんな「心から話し合える友達が欲しい」と思っている
志乃だけが特別な存在ではないのだ
その中で、志乃はどうやって生きていくのか
どうやって、周りの人たちと付き合っていくのか
決して甘やかさず、距離を置いて自立を見守る
その志乃との距離感が良いと思った
なせなら、まさにそれが現実だからだ
自分がブスだと思ってコンプレックスを抱えて生きていても
誰も助けてくれない
どこかで、そんな自分を受け入れるか、整形手術を受けるかして、コンプレックスを克服していく
それは志乃も同じだ
吃音を治すことができないなら、そのコンプレックスをどこかで受け入れて生きていかなければいけない
しかし、いきなりコミュニケーションの達人にはなれないし、コンプレックスがゼロになるわけでもない
少しずつ自分の内側にあるコンプレックスを壊して、少しずつ前進していく
その歩幅とスピードが良いと思った
そして、二年生になった時の文化祭では、あの体育館に奇跡が起きているのではと思った
志乃の助けとなるのが、音楽というのが良かった
音楽には人を救う力があると、私は本気で信じている
ようやく作り上げた小さな世界の儚さ
問題を抱えた人のサクセスストーリーかなと思って見たら、とても現実的なラストで衝撃を受けました。
吃音の描写も吃音協会に取材してるだけあってリアルで、映画のテンポは悪くなってますが志乃だけに感情移入しすぎず客観的に見れるようになってます。
あのまま菊池くんの加入を受け入れ、素直に3人でバンドの練習をして文化祭に参加するのが理想的なのかも知れません。
でも、これまで苦労して築き上げてきた小さな世界に得体の知れないものが入り込む恐怖って、生きづらい思いをしている人にとっては非常に耐え難いものなんですよね。
謝ってくれたとはいえ以前自分を傷つけた菊池くんの前で自分を出せないとか、佳代と菊池くんが音楽の話で盛り上がってて自分はこのまま蚊帳の外になってしまうのではないかっていう恐怖がひしひしと伝わってきました。
僕はこういう失敗を繰り返してしまい、今でも謝りたい人・謝って欲しい人・また仲良くしたい人が沢山いて時々夢に見ます。
志乃、佳代、菊池くんの3人はこれからどうなっていくんだろうと考えさせられるラストでした。
個人的には不器用ながら二人のことを思いやるようになり、最後には孤独を受け入れた菊池くんにホロリときました。
青春のほろ苦さ
精神的に辛い作品、だがそれが良い
やっと見つけた居場所なのに
彼女たちの友情が薄すて、最後は半ば強引。
高校生になり、初めてのクラス内の顔合わせ、自己紹介をすることになり、人前で話すことが苦手な私でさえ、どんどん自分の番が近づいてくる。緊張する。それにしても志乃の雰囲気がおかしい。動悸が激しい。これは尋常ではない。
事前に担任に伝えておけば良かったのではないないだろうか。明らかに「吃音」であり、極度のパニック障害でもありうる。それでも教師は、さした疑問に思わない。思春期に起こり得る症状だ。
ところが、見知らぬ人の前では、はっきりした音程で歌う。このギャップは不思議。
最後まで、加代が歌が上手いと言われていた「菊地」の歌は、結局判らずじまい。
彼女たちを包む景色が大変美しかった。ラストは、半ば強引な終わり方であった。
色々と作品の流れに無理があった。結局、彼女たちのオリジナルが聞けなかったのが残念。友情青春映画ではあるが、青春真只中の彼女ら2人の友情の強さが、映像では伝わりづらい作品になってしまっている。彼女たちの友情とは、一体なんだったのか。
タイトルを言うと笑われるのは何故
青春だな!
吃音だけど歌えるシノちゃんとギターは、弾けるけど音痴のカヨちゃん。2人は、シノカノってバンドを組んだ。路上ライブなんか、素晴らしい。
そこに、空気読めない男の子が加わりなんかずれちゃう。
思春期の揺れ動く10代の気持ちが伝わる。
吃音にイライラする僕がいた。
学生支援の仕事してるのにね。
そんな発見もあったな!
吃音障害の問題に正面から向き合っている点は分かるのですが...
吃音を抱える女子高生・志乃のクラスメートとの交流を描く。この作品を通じて、この障害のことが少し理解出来たように感じました。コミュニケーションが上手く取れない原因を上手く伝えられないがゆえに、益々周囲から孤立してしまうこの障害の難しさを、志乃役の南沙良が迫真の演技で見せてくれたように思います。ただストーリーについて少し不満を言えば、志乃と同じようにクラスで浮いていた菊池くんの扱いが少しぞんざいなように感じました。KYですが実は心根優しい彼も志乃と同じように周りの救いが必要だった筈。実話が下敷きですから致し方ないのかも知れませんが、志乃に拒絶されただけでお話が終わってしまったのはちょっと個人的には残念でした。
加代ちゃんは歌が上手に歌えない
確かに大なり小なり皆が
高校入学時に感じる大きな壁
主人公の志乃ちゃんが入学式後の新しいクラスで絶対あるであろう「自己紹介」をずっと練習しているところからはじまる 小学校、中学校また大学でもない高校の「初対面のクラス」の緊張感は、その後の高校生活を決めかねないだけに「友だちづくり」「一緒に弁当を食べるグループに入れるかどうか」、そんな思いに迫られたことを思い出しました グループに入る、入れないなど結構残酷なやりとりがあるものです 志乃ちゃんのそういった思いが手に取るように伝わってきて、観ていて辛くなりましたが、加代との時間を重ね、橋の上で歌っているときの表情がみるみる明るくなっていきます しかしちょっとしたことでそういった喜びが儚いものとなるのも、この時期の特徴なのかもしれません ちょっとKYのようにみえる男子も、実は同じような悩みがあって、というところも頷きました 高校の入学式後のクラスでの緊張感を今一度思い出しました(7月26日 シネリーブル梅田で鑑賞)
リアル青春!
青春! そして吃音の人の苦労が少しわかる映画。
吃音の苦労は、うっすらと感じていたが、この映画の価値は、吃音のように誰もがある程度、その苦労がわかる特徴だけでなく、音痴、出しゃばり過ぎて浮いてしまう性格など、本人が気にしていることは様々で、もちろん比べるものではないが、他人からはどんなに小さく見えることであっても、気にしている当事者本人にとっては死活問題なんだ、ということを描いた点かな。
自分には、二人が初めて路上ライブに行った日に、(音痴の)加代が言ったセリフ「絶対にやる。初めて部屋から外に出られたんだから」が響いた。
性格は志乃と正反対と思っていたが、実は志乃と同じく、自分が気にしている点にとても苦しんでいたんだ、とわかった。
誰にも気にしている点があり、それはその人の個性とも言えて、ずっと一緒に暮らしていくもの。大切なのは、それとつきあう自分のあり方なんだなあとしんみりした。
しかしこの映画の魅力は、映画の中盤、二人がバンドを組み、弾き方も歌い方もだんだんスムーズになっていく夏の様子。それはとても爽やかで、こんなにキレイに青春の、友情の輝きを描ける腕は凄い!観ていて、ほんっとに気持ちいいよ。
秋の文化祭で二人が見事なデュオを見せて同級生たちがびっくり、というエンディングなら、爽快映画だなと思って観ていましたが、その結末は…そこはみなさん自分で観た方がいいです。
飛び抜けて美人というほどではない二人が、数々の瞬間、本当にキレイに見える。映画の醍醐味であり、監督の腕ってヤツなんだろうな。関係ないけれど、主人公がよく鼻水たらす映画でした。
いずれにしろ、素敵な映画だった。おすすめです。
場所は沼津と下田だったんだ。静岡県東部出身の自分が「なんだか見たことあるような景色だな」と感じるわけだ。
後日談
この映画は、その後も何度か「もう一度観てもいいな」と思った映画でした。「きみの膵臓を食べたい」「ハローグッバイ」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(女優見たさかな?)
おまけ
なるほど、脚本は「百円の恋」の人か。納得。
感情を揺さぶられる作品だった
途中の歌のカット割りと、文化祭のシーンに関しては、あんまり良くなかったけれど、その他は素晴らしかった。
それほど上手いとは思わなかった光の表現も、作品の雰囲気と非常に合っていたし、女の子2人の演技も上手いとかそういうものを超えたナチュラル感だったし、何よりも人の感情を揺さぶるような映像表現や演出に非常に感銘を受けた。
原作は読んでないけれど、読みたくなったし、どんな思い出であれもう一度あの日に帰りたいと思ってしまった。
出だしからタイトルバックが結構肝だったような気がする。個人的には、初っ端のそれで完全に心を掴まれてしまったような感じだった。
キラキラしていたあの日、確かに素晴らしかったけど、やっぱなんだか切ないよね。いい作品だったなー・・・
あの素晴らしい愛をもう一度
この歌はよかった。てか半分青いの影響がだいぶ大きいけど(笑)途中の歌変えずにずっとこれだけ歌ってて欲しかった(笑).
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話は自分的にはうーんだったかな。菊地との和解は?自分だってかよの歌笑った時謝って許してもらったじゃん、なら自分だって許せよ。
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最後も一応かよに頼り切りだったのが成長したってことなのかもしれないけど、ジュース渡してくれた子と結局同じことになると思うんだよね?
叫び
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