ファントム・スレッドのレビュー・感想・評価
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究極の愛か?ホラーか?
監督作品群は傑作揃いだが、取っ付きづらさと理解しづらさが障害になり、一部の熱狂的な支持を受けるものの、世間一般からは”怪作監督”と呼ばれてしまうのがしゃくだが、何はともあれ、PTAこと我らがポール・トーマス・アンダーソンの最新作。盟友ダニエル・ディ・ルイス最後と言われる出演作でもあります。1950年代イギリスのオートクチュール・デザイナーとして華々しく成功を収めた偏屈なデザイナーと、彼がミューズに選んだ元ウェイトレスの女性との心の葛藤と駆け引き、禁断、倒錯、若しくは究極の愛の姿を描く。鑑賞する側の心持ちや性別(こっちが顕著かな)でかなり見方が変わる作品なれど、これを受入れられるかどうかが、映画本編同様に試される作品ではある。すんなり受け入れられる人は少ないかも知れないし、ストーリーが”愛”か”変態”か”ホラー”か、受け取り手の捉え方、下手すれば体調(笑)で変わる作品なれど、PTAの作品として完全にウエルカム。完璧にノックアウトされました。毒のあるストーリーとは裏腹に、英国上流階級の豪華絢爛な衣装やインテリアなどの世界を、どこかもやっとした映像で描く様が美しい。「ザ・マスター」を超えるノスタルジアによって異世界への誘いを拒絶しなければ、至福の時間を過ごせます。こちらも盟友と言えるジョニー・グリーンウッドが手掛けた流麗でゴージャスな音楽も素晴らしい。ジョニーは、直近の「ビューティフル・ディ」で聴かせた鋭角でヒリヒリする様なサウンドから一転、恐るべき振幅のある才能を発揮して音世界を作り出した。既に名匠の域に到達している。凄い。誰かが『召使』になぞらえていたけれど、そうは思いませんでしたねー、違いは”愛”の存在でしょうか。
美と俗の戦い
衣装目当てに行きました。
アンダーソン監督の作品は初めてです。
映像や音との距離感が近く、独特で、やや戸惑いながら鑑賞しました。
しかしオートクチュールの職人たちや、デザイナーのピリピリした雰囲気などに引き込まれました。
主要3人の微妙なパワーバランスも面白かったです。
女性にとっては、祝福と天罰のアンビバレントな状況なのでしょうね。
フィルムの質感や沈黙のシーンなどは自分好みで、もちろん衣装も楽しみました。
映画の内容とは別に面白かったのが、この作風が好きかどうか、気持ちが揺れながら観たことでした。
好きかも…ちょっと違うかな??などと思っていたら、ラストの食事シーンで、一気に好きになりました。
一本決められたような、爽快感でしたね。
美しくも恐ろしい、苦笑と戦慄の「男と女のラブゲーム」
ポール・トーマス・アンダーソンがまたやった!『マイ・フェア・レディ』のように初まり『ゴーン・ガール』のように終わる、美しくも恐ろしい、苦笑と戦慄の「男と女のラブゲーム」。夫になるとは「君の好きな僕」をロールプレイすることなのだ
コメディ・ホラー両面で冴えまくる演出、眼福極まる衣装、監督自らカメラを持った撮影、ジョニー・グリーンウッドの流麗な音楽、全てが完璧に調和して見事な「芸術作品」に仕立てられている。PTAは個人的にはここ2作(長編映画のみ)があんまりピンと来てなかったけど、これは文句なしの新たな傑作
『ゴーン・ガール』『ファントム・スレッド』とかは自分が結婚してないと理解できてなかったと思う。事実、恥ずかしながら『ゴーン・ガール』については初見時は完全にオチの意味を真逆に解釈してしまっていた。今ではこういう作品の言わんとすることが痛いほどわかる。映画ってホント勉強になるよねー
上品でセンスのいい冗談のような
なにもかもが上品で完成した世界。
だから眺めておくだけでも楽しい映画だが、途中からただ眺めるだけにはいかなくなる。
アルマとレイノルズのふたりがアブノーマルな恋をどのように進めていくのか。
ただそれだけなのに、それがふたりの全てでこの映画のすべてで
不思議と目が離せなくなる。
結果として、お高くとまった冗談みたいな話なんだけれども
観終わった後に色々と考えこんでしまう。
それは主演ふたりの演技があまりにもリアルで巧いからかも。
折り重なる美しさと醜さ
ドレスの美しさと人間の醜さの丁寧な丁寧な重層構造。
美しいドレスを着た女性のワンカットだけで、観ているこちらも凄いものを見た!と思わせる画の説得力の凄さ。
何かを介さないと愛し合えない、わかり合えない、というのPTA作品の中で一貫して描かれているモチーフで、今回もバッチリでした。
今回はそれがドレスであり、母姉であり、死の疑似体験であった。
我々は孤独なんだ、コミュニケーション取れないものなのだ、という諦め、認識が自分に取ってリアルだし居心地が良いのだと改めて思った。
マザコン気質は今まで十分匂わせてきたPTAがいよいよ全開にしてきたのでこらぁ偉いこったと思ったね。
いつにも増してバランスがいびつなまま突っ走っているのも印象的だった。
常に劇音楽がなり続けていて、ある意味一直線のストーリーの補助線というか、退屈しないようになってるなー、と。
この映画がPTAのキャリアの中でどういう位置付けになるかちょっと今はわからないけど、パンチドランクドラブ的なあとから振り替えるとそのときの技術の集大成的な映画だったと、次に偉いの来たな、みたいな映画になることを期待。
男性性の後退、非アメリカ、というのは新境地かもしれない。
当然最高な映画体験だったことは間違いないです。
Daniel Day-Lewis!
Daniel Day-Lewisというだけで観る価値ありですが、内容も興味深いし、オートクチュールのアトリエというのがファッションの知識があるひとにとっては魅力的。
音楽がピアノメインというのと、建物の外の車の音などがまた心地よい。
ファントムの呪縛
PTA監督はいつだって、映像でしか語れない文脈を流れるように語るように完璧な映像で観せてくれる。本作も完璧だった。当代映画監督の天才のひとりでしょう。
容姿に自信のない女性が、完璧主義の天才に「完璧だよ」なんで言われたら、そりゃ惚れるわ。体の採寸シーンは官能的でした。官能的なのは唯一ここだけ。
いつまでたってもマネキンとしてしか興味を持ってくれない彼。「仕事と私、どっちが大事なの!」「イライラさせるな!」みたいな男女のあるあるストーリー。「もういい!」って出て行っちゃって、心配になって迎えに行ったりして。優雅な上流社会も同じです。
恋人や家庭を顧みず、仕事のことしか興味のない男を愛情深く受け入れられるのは母親だけだ。母親の亡霊(ファントム)の呪縛は永遠に解けない。
そこでふたりだけの秘密のプレー。歪んだ愛の形にドン引きだけど、身分違いの壁も乗り越えて、ある意味ハッピーエンド⁈
ぶつかり合いながらもいびつで美しい唯一の形
様々な浮名を流す男前と元ウェイターが出会ってぶつかり合いながら自分たちならではの愛情の形をみつけていく物語。こうくるとは思わなかったですが映画のテンポも魅せ方も美しくてほとんど長さを感じさせずよかったです。また、音楽がいいと思ったらジョニー・グリーンウッドなんですね。最近映画音楽をよくやっているようですが意外な人選でした。
『貴方には無力で倒れていて欲しい』
イギリスらしいゴシックでアイロニカル、叙情的作品である。色々な状況説明も、さりげなく映像に織込まれ(舞台はロンドンという説明も服のタグに刺繍してあるところもグッドセンス)、きちんと伏線も回収してくるので、まるで映画そのものが、この主人公の人格を象徴していうような感じさえ思えてくる。
題名からいうと、『幽霊の糸』が直訳だが、ネット用語だと“スレッド”は掲示板上のスレッド内の投稿に関わる返信が続いていくことでスレッドが形成されるというのが説明で、そういう意味では幽霊との“会話“というのがそんなに遠くない異訳なのかもしれない。
ストーリーは、完璧主義を貫くちょい悪ハンサム親父が、偶然知り合ったウェイトレスに亡き母親の面影を感じ、一緒にすむことになるのだが、この親父は自分のペースに併せない女を次々と棄ててゆくという困った男であり、同じ轍を踏みたくないそのウェイトレスがかなりぶっ飛んだ危険なアイデアを実行に移し、しかしその“死亡遊戯”に、男が引きづり堕とされるという、M転させられる筋書きである。確かにこの完璧な男の人生観を反転させるには、命を掛けなければならない覚悟は、充分感じ取られる。しかし、そんな覚悟そのものよりもこの女のファムファタール振りの方が極めて前面にでている。そんな女だからこそ男は知っていても敢えてその罠にはまりにいく『誘い受け』みたいなものかもしれない。何度も殺され掛け、そのたびに母親の幽霊と邂逅するのだとしたら、正にこの女は三途の川を渡す、さしずめ“ケイローン”なのだろうか。そういう意味でも、この二人は正に共犯なのである。ということを、仕立て屋の清楚にして職人の張り詰めた独特感をベースにしているからこそのサスペンスとしての白眉を演出させているのである。勿論、主人公、そしてヒロインの演技は言うことがない程、称賛である。『ドレスに勇気づけられる』『私が膨らみを作る』等々、台詞の深い意味合いやとんちも又、今作品に彩りを加えている。一つとして欠けることがない物語性に、プロフェッショナルをみせて頂いた。
このタイトロープのヒリヒリ感に脱帽である。
キノコプレイ
マイ・レフトフット以来、ダニエル・デイ・ルイスは好きだったし、引退作との事だったので期待して見に行った。全編、暗い色調だったため、不覚にも寝落ち。色々な解釈はあると思うが、私の結論は表題のとおり。
美しくオシャレでロマンチックなんだけど退屈過ぎた…。眠らずに耐えた...
美しくオシャレでロマンチックなんだけど退屈過ぎた…。眠らずに耐えたのに最後の最後に睡魔が。どうしてあのラストに至ったのかよく分からん…。
ドレスが繊細で美しいのはよく分かった。それ以外よくわからん…。何が禁断の愛だったんだ…と思ったらアレかい。うーん…
どの夫婦にも当てはまること
本作における毒キノコとは比喩である。はたからみると明らかに毒キノコなんだが、夫婦間におけるそれは愛を確かめ合うきっかけなんだ。
しばしば嫁は旦那に毒キノコを与え、旦那はそれをありがたがる。
日本の家庭にもよく見られる光景である。
俺は独身バチェラーだが、ちまたに溢れるおこづかい制度を受け入れる男、イクメン、家事を手伝う男なんかすべて毒キノコを食べた旦那にしか見えない。でも、それが男たちにとっては快感なんだろう。
世の中の旦那に言いたい。この映画を見れば、自分が毒されていることに気づけますよ。見終わってもなお嫁を愛していると言えるのならそれは真実の愛なのかも。
予想を裏切られる
漸く観てきた。母、姉、若い恋人…糸=thread のように女性達に操られ翻弄される主人公が本当に滑稽な男の人に見えたし、2人の関係性が本当に2人にしかわからない特異で閉じた危うさを孕んで愛し合うのか…という感じで、あのメゾンみたいな静謐さと不穏さに満ちた映画だった
美しい画と音楽に浸って、、、
きのこオムレツを挟んだ無言の対決、息をするのもはばかられるよう空気、、、
完璧が少しずつ崩れ、気がついた時にはもう抜け出せないところまで引きずり込まれていた。
仕立て屋の迷いのない手さばきを見る快楽。 厳格な雰囲気そして耽美で...
仕立て屋の迷いのない手さばきを見る快楽。 厳格な雰囲気そして耽美で美しい空気、そこに溶け合う音楽。それだけでも充分であるにもかかわらず、アトリエのワンシーンが絶品、段取りの良さと飽くなき追求、無駄のない動きに身が引き締まる様でいて、なんとも心地よい気持ちになる。
優雅な旋律からのミニマルミュージックが絶妙に物語を引き立てる。
追求の先には共依存とでも言うべき、人間味を感じる愛の形があり、私としては少し拍子抜けだった。
PTA祭その0
私が付いてないとダメな人でいてほしい。
同様の精神的ガチンコバトルでも『ザ・マスター』辺りよりよっぽど観やすかった。が、こんな束縛する/される関係というか互いに依存しあう関係は、個人的には勘弁してもらいたい。
ある意味SMっぽくも見える。
全く関係ないがお姉さんが加賀まりこに見えて仕方がない。
音フェチ
衣擦れの音。
靴が床を叩く音。
食器と金属とが当たる音。
落ち着いたトーンの声。
とても音が心地よい。
もちろん、映像、意匠、音楽、装飾、
全て一級品。
それほど完璧な舞台で繰り広げられる、
物語が、滑稽噺。
天才的なバランス。
そういう映画だったのか!
ダニエル・デイ・ルイス
本当に素敵なおじさまです
かなり前になりますが
思い出すのは
「ラスト・オブ・モヒカン」で最後の
モヒカン族を描いたルイス様は若くたくましくかっこよかった
そして月がとてつもなく流れ
今では素敵なおじ様になりました
今回 そのルイス様がある時を気に
喫茶店で見初めた若きウエイトレスの女を
家に置くことによって
いつのまにやら その女に翻弄されていきます
今回彼の役どころは一流のトップデザイナー
彼がデザインした
ゴージャスな衣装を身にまとう美しき女性たちが
その服を購入するか否かの
マダムたちの前を歩くさまは
ほんと美しく映画を観ている女性は特に
ワクワクする場面ではないでしょうか
やはり 見どころはデイルイスと彼女の関係でしょう
いや 見どころではなくそれがメインでした
彼の気をひくのにそこまでやるかと
女性の私でも恐ろしさに震えましたが
この映画を観た後に ネットで映画評論家の
町山智浩さんがこの映画の評がアップしてたので
読んでみたのですが!
そうだったのですか!!
そこまで理解できない私はバカだった!と
同時に町山さんの話を元にまた 観直したくなりました
みなさんも ぜひ 検索して読んでみてください
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