劇場公開日 2019年3月8日

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スパイダーマン スパイダーバース : 映画評論・批評

2019年3月5日更新

2019年3月8日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

祝オスカー受賞!ヒーロー映画の常識を覆す、興奮、陶酔、驚愕の大傑作

思えば、昨年は「スパイダーマン」ファンにとって悲しみの年だった。原作者スタン・リースティーヴ・ディッコが揃ってこの世を去ったのだ。そんな矢先に公開される本作は、さながら彼らへの感謝を込めた打ち上げ花火のよう。その思い通り、かつてない革新性に満ちたアニメーションが誕生した。

本作は過去のどの実写シリーズともまるで違う。ある時はコミックのコマ割りを取り入れた手法が光り、またある時にはCGに手描きのタッチが加わり、美しさを超え、より有機性を増した映像が胸を貫いてやまない。

そして注目すべきは奇想天外なストーリーだ。主人公はヒスパニック系とアフリカ系の血を持つ13歳の少年、マイルス。特殊能力を手にした彼は、ある日、暗黒街のボス、キングピンが時空を歪め、その手で本家スパイダーマンの命を奪うのを目撃する。ヒーローを失い、深い悲しみに沈むニューヨーク。だが脅威はなおも続く。もはやこの街を守れる者はマイルスしかいない・・・。

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まだ駆け出したばかりの彼は、新ヒーローになれるのか。少年が背負うにはあまりに重過ぎる命題だが、しかしここからが本作の真骨頂。いつしか多元的世界から彼の元へ、多種多様なスパイダーマンたちが次から次へと集結し始めるのだ。

登場するのは、40歳になったパーカーやら、俊敏な動きの女性版スパイディ、古びたギャグを連発するブタ型のスパイダー・ハム、さらに白黒映画から飛び出したスパイダーマン・ノワールや、小さな少女とロボが一丸となった不思議ちゃんキャラまでいる。

かくも個性や作画タッチのバラバラな6人が、同じ空間で違和感なく共存し、力を合わせてバトルを繰り広げる。その描写はまさにアニメの文法だからこそ成し得たものであり、今自分が目にしているものがとてつもなくシュールで、想像を超えてクールなものであることに興奮せずにいられない。

この世は決して一元的ではなく、可能性は多元的に開かれている。誰もがヒーローになれるし、何にだってなれる。それにもし人生で壁にぶち当たっても、マルチバースの5人の自分が共に戦ってくれる姿を想像するだけで、たったそれだけでどんな困難も乗り切れそうな気がしてくる。

正直言ってまだ興奮から醒めないし、醒めるとまた観たくなる。体内をこれほどアドレナリンが駆け巡る体験もそうないはず。ヒーロー映画の常識をはるかに超えた一撃を受け、天国のスタン&スティーヴもさぞや大満足の拍手を送っておられることだろう。

牛津厚信

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