移動都市 モータル・エンジンのレビュー・感想・評価
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本筋ではない確執に感動しました。
文明崩壊の引き金となった"60分戦争"後の遠い未来、そこは僅かに残された人類が荒廃した大地を駆ける移動都市で暮らし、都市が都市を食らう弱肉強食の世界。巨大な移動都市となったロンドンに潜入した少女へスターは母の仇ヴァレンタインを襲撃するが博物館員トムに阻止される。とっさに逃亡したへスターを追ったトムだったがもう一歩のところで取り逃がしヴァレンタインによって荒野に突き落とされてしまう。ロンドンに戻るためやむなくヘスターと行動を共にするトムはヘスターから信じられない話を聞かされる・・・からのSFファンタジーツンデレ冒険譚。
地を這う街、空に浮かぶ街といった奇怪なガジェットが跋扈する異世界のビジュアルが鮮烈な印象を残す作品ですが、幼い頃に目前で母を殺され荒野を彷徨い生き延びたへスターの記憶の断片と母の形見が物語を転がす筋立ては割とオーソドックス。次から次に登場するキャラクターの描写がぬるいので感情移入がしづらいという致命的な欠陥はありますが、へスターを演じるヘラ・ヒルマーの凛とした雄姿がカッコいいので結果はチャラ。ダレ場も各所にありますがクライマックスに向けてテンションが上がっていくスピーディな展開はなかなか燃えます。
個人的にはメインストーリーよりもへスターに対する深い恨みを抱えて執拗にへスターを追う謎の男シュライクとへスターの確執にグッときました。小説の映画化作品なので世界観の構築には隙がなく、移動都市にある過去文明の遺物展示品でクスッと笑えたりもしてなかなか楽しめる娯楽作品になっています。ニュージーランド・シンフォニー・オーケストラによるサントラも素晴らしく、各楽器の定位まできちんと体感できるのはスクリーン鑑賞ならでは。とにかく美しいヘラ・ヒルマーの今後の活躍に期待します。
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