「娯楽映画の手法で」ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 Toshiさんの映画レビュー(感想・評価)
娯楽映画の手法で
スピルバーグの見事なまでの語り口。メリル・ストリープの名演技。期待通りのトム・ハンクスのヒーロー振り。政治的メッセージを発信するだけの映画なのになんとも贅沢な!
鑑賞中は彼らの職人芸に引き込まれる。見事な娯楽映画だ。その手法はね。
しかし発信するメッセージは単純過ぎる。作り手トリオから容易に想像できる内容でシラけてしまった。政治権力に戦いを挑む報道のひとたちと云えば聞こえは良いが本作の主人公はエスタブリッシュメント。この戦いに負けても名声は更に高まるというような台詞が出てくる。命がけの戦いをしているのは文書を持ち出した彼だけだ。
PC、政治的正しさを語るエスタブリッシュメントに辟易した大衆がトランプ大統領を産み出したという。本作は彼らには響かないだろう。30年に亘るアメリカ政府の隠蔽を描いているのにJFKを懐かしみ、ニクソンは極悪人扱い。ラストのウォーターゲートビルの件では思わず失笑。アメリカのある立場のひとたちの正義ってことだろう。
現場の記者の命がけの戦いを描いた「大統領の陰謀」とは比べられない。
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