ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 : 映画評論・批評

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書

劇場公開日 2018年3月30日
2018年3月13日更新 2018年3月30日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

“20世紀の映像記録人”が描く、世紀を跨いで心に突き刺さる今日的なテーマ

20世紀に起きた様々な出来事を映画にして後生に伝えることがライフワークだと語るスティーヴン・スピルバーグ。彼がトランプ政権誕生の瞬間に製作を思い立ち、たった1年で撮り上げたという最新作は、ベトナム戦争の最中に発覚したアメリカ政府による隠蔽工作を広く国民に告知しようとしたメディアの闘いを描きながら、狙い目は過去ではなくたった今。政治に対する抑止力としてのメディアの立ち位置をはっきり描いて、過去のスピルバーグ作品と同じく、そのテーマは世紀を跨いで人々の心に直球で突き刺さる。

1971年、ベトナム戦争があらゆる意味で実は失策だったことを記した機密文書の存在を、まずはニューヨーク・タイムズがすっぱ抜いた。それを知ったホワイトハウスのお膝元であるワシントン・ポストは、さて、どうするか? 文書のリーク元からコピーを受け取り、独自の取材を展開しようとする編集主幹のベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、時のニクソン大統領が刑事告訴に踏み切ることを睨んだ上で、ある人物に記事掲載の是非について決断を委ねる。社主のキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)だ。

画像1

歴代大統領と公私共に蜜月関係を続けて来たブラッドリーが、時代の変化に呼応するメディアのあるべき姿を、少しの諦めと懐かしさを感じつつ語りかけるのに対し、グラハムはあっさり掲載を即決する。夫亡き後、新聞社を引き継ぎ、無能で社交好きな女性オーナーと蔑まれ、差別されて来た彼女が、会社存続か良心かという二者択一を迫られた時、当たり前のように後者を選択するのだ。

それは、男性主導の世界に身を置き、秘かに疑問と怒りを溜め込んできたグラハムの痛烈なしっぺ返し。メリル・ストリープのこの種の設定でありがちな力演でなく、肩すかしのように軽妙な演技が、男女平等という最も今日的な問題を、約半世紀昔から今も変わらぬ現在へと運ぶ大事な役目を果たしている。

女性のさらなる社会進出と、国民には見えない政治や社会の裏側に隠れた事実を次々と暴いてきた新聞及び新聞文化へのエールが、当時使われていたタイプライターや電話機、印刷所内の機器やシステム等、優れた時代考証と共に描き込まれた本作。“20世紀の映像記録人”スピルバーグが今、扱うべきテーマは、他にもまだたくさんありそうだ。

清藤秀人

関連コンテンツ

特集

スピルバーグ監督×メリル・ストリープ×トム・ハンクス この《奇跡のチーム》の“実現”=傑作!超・極秘文書の“中身”が今暴かれる!
特集

政府の闇が記された最高機密文書を手に入れたら、あなたは世に公表するか、それとも……? まるでアクション映画のようなスリルと痛快感を実現した驚がくの実話映画を、スティーブン・スピルバーグ、メリル・ストリープ、トム・ハンクスというハリウッ...特集

関連ニュース

関連ニュース

フォトギャラリー

DVD・ブルーレイ

愛と哀しみの果て[Blu-ray/ブルーレイ] ディア・ハンター[Blu-ray/ブルーレイ] アントブリー[DVD] 永遠に美しく…[DVD]
愛と哀しみの果て[Blu-ray/ブルーレイ] ディア・ハンター[Blu-ray/ブルーレイ] アントブリー[DVD] 永遠に美しく…[DVD]
発売日:2012年4月13日 最安価格: ¥1,391 発売日:2012年4月13日 最安価格: ¥1,634 発売日:2015年7月17日 最安価格: ¥972 発売日:2012年5月9日 最安価格: ¥927
Powered by 価格.com

映画レビュー

平均評価
3.7 3.7 (全227件)
  • 実話 元ネタの事件を知らなかったので前半少し寝てしまった。 でも途中復活してそこからはすごく楽しめた。 旦那と鑑賞。 旦那はとても楽しんでいた☆ ...続きを読む

    HIRO HIROさん  2018年5月18日 22:58  評価:3.0
    このレビューに共感した/0人
  • 必観 観られてよかった。 “Post” が “local paper” だったというのも、知らなかった。 英字新聞📰の組版が見られたのも、よかった。英字には、活字を「拾う」ことなどないのは当たり前だが... ...続きを読む

    灰山羊 灰山羊さん  2018年5月18日 22:00  評価:5.0
    このレビューに共感した/0人
  • 報道のあり方とは この件に関しては、やはりタイムズの方に脚光が浴びている時間ではあるが、そこでワシントンポストの方に焦点を当てている。ウォーターゲート事件へ結びつく事件ということでそういう構成になったのかとは思う... ...続きを読む

    ちゃーるすとん ちゃーるすとんさん  2018年5月18日 09:43  評価:3.5
    このレビューに共感した/0人
  • すべての映画レビュー
  • 映画レビューを書く
このページの先頭へ

最近チェックした履歴

映画の検索履歴

他の映画を探す

映画館の検索履歴

他の映画館を探す

特別企画

新作映画評論

  • 犬ヶ島 犬ヶ島 ウェスの色彩センスが日本でいっそう花開いた “犬ヶ島”の背景が鮮烈!
  • ファントム・スレッド ファントム・スレッド 一糸乱れぬ映画術で観客を夢見心地に誘う、媚薬のような作品
  • 男と女、モントーク岬で 男と女、モントーク岬で 老境を迎えた巨匠が描く恋愛は驚くほどみずみずしく、老練で深い洞察が垣間見える
新作映画評論の一覧を見る
Jobnavi