タクシー運転手 約束は海を越えてのレビュー・感想・評価
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とても面白かった。いいバランス
観てよかった。
カタルシスのある映画だった。
出だしは少しうとうとしてしまったが、それでちょうどよいくらいの密度があった。
光州での軍による民衆弾圧(殺戮という悲劇)を舞台の中心に据えながら、その深刻さや恐怖だけに押し込めず、庶民の生活をベースにしたストーリーがよかった。
封鎖された光州から逃げられるかという脱出劇のスリルとサスペンス、社会派映画としての体制糾弾、庶民の暮らし その中でも父娘の愛情を描くハートウォーミング、それら3つのバランスがちょうどよいのだろう。
そしてその中でいちばん根底にあるのが、家族の為に必死に生きる庶民 だってところがこの映画の人気の秘密だと思う。
だからこそ、ストーリーのテンポやアクションの派手さ、ギャグのはまり度合いなどそれぞれの点では劣っていても、この映画が自分の中では最上位のひとつにランクされるのだ。
友人曰く「ドイツ人記者が その後 来韓した際に探したが、タクシー運転手は名乗り出なかった と終了後にコメントが出るが、あれはきっと処刑されちゃったんだろうな…」
たしかにそうかもしれない、怖。
この7年で・・
先日の南北首脳の握手の後に、この映画を見ると、なんともいえない気持ちになる。時の軍事独裁政権下で、民主化を目指した一般の市民は、アカと謗られ「虐殺」されていく・・。
銃を手にした者たちが正当性を隠れ蓑に、その邪気をそれとは異なる者たちに向け、彼らを「敵」とみなした時、いつの時代も悲劇は始まる。
『光州5・18』では市民蜂起として、銃を持つ市民が描かれていた。
しかし、この映画では、市民は完全に丸腰だ。この7年でこの国の光州に対する見方も変わってきたのだろう。
この映画は、一介のタクシードライバーという側面から見たもので、「ソウルの春」も「三金」も描かれてはいなかった。いやそもそも、全斗煥の粛軍クーデターさえ登場していない。このあたりは、「光州事件(虐殺)」が、これから色々に「脚色」されていくことになることを仄めかしているのかもしれない。
そして、かの国では、すべてにわたって捏造と改竄が当たり前のようになっている。その上で、根幹の最高法規も変えんと主張する。このような国に、彼の国を語れる資格はあるのだろうか。
軽すぎる!
知られたくないこと。それを伝える勇気
鉄砲で撃たれるって、どんな気分ですかね?。進むと、撃ち殺されるかも。それでも踏み出す勇気は、どこから捻出したら、いいのでしょう。
誰にでも、知られたくないことは、あるはず。それが国家レベルになると、納税者の血と引き換えになる。なぜかな?。不都合な真実が、報道されない時、私達は、どうしたらいいのかな?。
少しネタばれしますが、検問所にいた兵隊さん、トランクの中身に、何を託したのでしょう?。知られたくないことと、それを伝える勇気。今の私達にも、要求されている気がするのですが…。
名作「光州5・18」も、そんな名も無き勇者の思いがあってこそ、今に残すことができたのかも。ずいぶん重たいバトンを渡された気分です。このバトン、誰に渡せば、いいのかな。
人間として
韓国映画すごい
傑作です。
コメディ風のスタートから、後半の地獄絵図、そしてクライマックスへ。
これだけ深刻な問題を単なる史実再現や政治風刺ではなく、ちゃんとエンターテイメントとしてみせてくれた。
そして現在、まさにここに描かれたテーマに日本、そして世界が直面しているということも踏まえて、まさに今観るべき傑作だと思う。
ソン・ガンホをはじめ、役者陣の演技も素晴らしい。
所々で『靴』や『結ぶ』ことにスポットを当てる演出は、「バラバラではいけない」というメッセージなのかな。
クライマックス前の検問での軍人の対応など、ちゃんと種明かしせず、観客に投げかけてくるのもニクい。
上映館数、期間もおそらくもう残りわずか。こういう作品が場内ほぼ満席だったのは嬉しいこと。
人間同士がお互い相手にレッテルを貼り、傷付け合うことの愚かさをあらためて教えてくれた。
個人的には『ハクソーリッジ』の様に「もういい、お前はもう十分頑張ったよ。お前がここで命をかけても大勢は変わらないよ…。それでもやるのか…」と声を掛けたくなるシーンがツボなので、後半は涙が止まらなかった。
思い返す度に発見もあり、いっぱい語りたくなる作品。
是非劇場で観て欲しい。
自分の信念にどう正直に動くのか
見てよかった
笑えて泣ける
なかなか
今年前半に観るべき傑作のひとつ
個人的に今年1月~4月に映画館で観た作品は約100本あるが、本作はナンバーワン級である。
封切りの"新宿シネマート"は、マイナーアニメや韓国映画を主に上映している、新宿三丁目のジミな箱だが、その"シネマート"が超満員になっている。なんとも不思議な感覚であり、あまりの集客に、5月12日からは松竹系メジャー館である、"新宿ピカデリー"でも拡大公開が決まった。
シネマートらしく、もちろん韓国映画である。1980年5月に韓国南部の光州市で実際に起きた"光州事件"を描いているのだが、その描き方が変わっている。当時、事件を現場取材して世界に伝えたドイツ人記者と、その記者を乗客としてソウルから光州の現場まで送り届けたタクシー運転手の実話を基に、熱いヒューマンドラマに仕上げている。
いまから40年前の"光州事件"のきっかけは、全斗煥らのクーデターと金大中らの逮捕で、抗議活動を起こした学生デモから、約20万人の市民デモに発展した。それを政府軍が武力制圧し、多数の死傷者が出た事件である。
戒厳令下の政府軍は、通信規制や道路封鎖のみならず、テレビ局の封鎖や報道管制などで、光州事件自体をわい曲して伝えていた。
主人公のタクシー運転手マンソプは、ソウル市民であるため、光州事件の真実などそんな知るよしもない。ソウル市と光州市を往復するだけで、法外な謝礼金(10万ウォン)をもらえる送迎ドライブにのぞむ。
不純な動機で、危険な仕事を請け負うことになったタクシー運転手を韓国を代表するベテラン俳優、ソン・ガンホ。また外国人記者を「戦場のピアニスト」(2002)のトーマス・クレッチマンが演じている。
意外にも前半までは明るいコメディタッチで進み、やがて事態が明らかになるにつれ、深刻なシチュエーションが緊張感を高めて、サスペンス度合を高めていく。歴史的事件を扱った史実映画でありながら、再構成と創作されたコメディとサスペンス、アクションとヒューマンドラマを盛り込んだバランスのよい傑作だ。
シネマートのおかげで、ふだんから多くの韓国映画と触れ合うことができるが、多くの作品が描く韓国社会は、先輩絶対主義のデメリットばかりの儒教感覚、腐った政治家や財閥一家、金にまみれた一部のセレブ、他人事ながら病んだ環境に同情するばかり。
(2018/5/5/シネマート新宿/シネスコ/字幕翻訳:神田外語大学字幕制作チーム/字幕監修:本田恵子)
もっと公開館増やせよ。クソが!
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