「何が良くないんだろう」マスカレード・ホテル 華さんの映画レビュー(感想・評価)
何が良くないんだろう
原作未読です。
悪くはないと思いました。
ただ、良くもないと思います。
映像というかホテルの内装、出演陣がとても絢爛豪華で、二時間の現実逃避をしたい方にはいいかもしれません。
ホテルマンの経験はないので実情は分かりませんが、仕事の上での苦労が一貫してお客様のクレームというところに終始していて、それ以外にはないのかな? という疑問とともに、例えば新田さんは英語が堪能な設定なので、英語でのやり取りを見たかったというのもあるし。
クレームのつけ方に関しても、ほぼ全て「大声で怒鳴る」からの「申し訳ございません」というものなので、そこは物足りなさを感じました。
とある地域の方に(人によると思いますが)見られがちだと言われる「逆説的な嫌味」(ほんまに元気な子やなぁ。賑やかでええわぁ。→うるさいから静かにさせろ)というような、変化球的なクレームをつける人がいてもいいだろうし。
実際にホテルに従事している方々が何ヶ国語くらいを話せるものなのか分かりませんが、少数の人のみしか使わない言葉で話す外国のお客様からの依頼があってバタついてしまうとか、そういうエピソードもあると、もっとホテルマンの仕事の大変さという意味では幅が出たのかなと感じました。(原作にない、と言われればそれまでですが)
新田のバックボーン含めて、警察側も、ひたすら「事件の捜査をしている」ことしか描かれていないことと、山岸さんがホテルマンになった経緯もそうなのですが、そこが双方、ちょっとした思い出話のような感じで深く掘り下げられた描写があるわけではないので「何かがあったら、私はホテルマンを辞めます」「俺も刑事を辞めます」という言葉の重みが伝わりにくく、そこに感情移入できなかったことが自分としても残念でした。
新田と山岸がどれだけ自分の仕事を誇りにしているのかということを、もっと丁寧に描いて欲しかったと思いました。
それだと尺的に厳しいならば、あの登場人物たちのショートショートのようなプチエピソードの山を3個ぐらい削ってでも。とまで思ってしまいます。
なるべく原作に忠実に作るというのも信念のひとつとしては好きなのですが、いくつか「これは私だったら削るかなぁ」というものがありました。その代わり作品に深みを出すことが出来るなら、そこは断腸の思いということで。
犯人役の方の正体が最初は分からなかったからドキドキした、という感想を拝見して、それは素直に羨ましかったです。あの方は鼻から口元のラインと声に凄く特徴があるので、私は一瞬で気付いてしまいました。
見終わって
「これは、お正月の二時間特番じゃダメだったのかなぁ」「わざわざ映画館でやるかなぁ」
という感想を持ちました。
キャラ萌え映画としてはいいのかな……
木村さんをはじめ、出演している皆さんは相変わらず素晴らしかったと思います。
特に木村さんは、検察側の罪人から特に感じていることですが、ひとつひとつの作品に対してとても愛を持って丁寧に臨んでいらっしゃるような、そういう思いをスクリーン越しに感じます。あと顔がいい。
生瀬さんのお芝居は相変わらずとても良かったですし、長澤まさみさんは笑顔と姿勢が素敵でした。
追伸
高嶋兄と宇梶さんもっと見たかったー!! すごくいいキャラクターだったっぽいのに、あれだけって。そりゃないぜーー! と叫びたい。