「"円谷英二"と"永井豪"をこよなく愛する後継者たちが作った傑作」パシフィック・リム アップライジング Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
"円谷英二"と"永井豪"をこよなく愛する後継者たちが作った傑作
"日本人に生まれてよかった!"、そんな誇らしさを全身で感じられる作品である。「シェイプ・オブ・ウォーター」(2018)で、オスカーの栄冠に輝いたギレルモ・デル・トロ監督の精神は、見事に受け継がれた。
"前作(2013)を中途半端になぞるだけになるのでは?"という一抹の不安を、吹き飛ばしてくれた。
というのも、前述のデル・トロ監督が製作側に退いてしまったことと、製作主幹のレジェンダリー・ピクチャーズが、中国の大連ワンダ(万達)グループに買収されてしまったから。同じく日本生まれの「トランスフォーマー」シリーズが、中国資本に殺されてしまったことは、記憶に新しい。
「パシフィック・リム」は、日本の特撮やアニメの単なるパクりや焼き直しではない。"円谷英二"と"永井豪"をこよなく愛する後継者たちが作った傑作である。
ジャパン・ポップカルチャーへの並々ならぬリスペクト。巨大ロボット、"イェーガー"は、"マジンガーZ"から"機動戦士ガンダム"、そして"ヱヴァンゲリヲン"へと至る、"人間搭乗型スーパーロボット"の系譜であり、それらと戦うKAIJU(怪獣)は、"ゴジラ"や"ウルトラマン"からはじまる、円谷プロの"特撮怪獣"の原点だ。
その両方が対決するという構図は、まさに子供が空想する、右手にソフビ人形、左手に超合金フィギュアの世界なのである。
もちろん、ロボットやKAIJU(怪獣)の造形も素晴らしい。それらはオリジナルという意味ではなく、今回の造形はジャパン・ポップカルチャーの正統進化型なのである。
新世代"イェーガー"は実にカッコいい。主役ロボットの"ジプシー・アベンジャー"、赤くて速い"セイバー・アテナ"、"ブレーサー・フェニックス"や"ガーディアン・ブラーボ"など。各々一体ずつで誕生エピソードを作ってほしいくらいである。
敵は、謎のイェーガー、"オブシディアン・フューリー"かと思いきや、やっぱり怪獣。
そこからの展開が早い。"シュライクソーン"、"ハクジャ"、"ライジン"の3怪獣は合体して、"メガ・カイジュウ"になる。この合体怪獣も、ウルトラシリーズの常套手段だ。小さなバルタン星人がいっぱい集まって合体するシーンを思い出したり、ウルトラマンA(エース)で登場したジャンボキングや、ウルトラマンタロウでの暴君怪獣タイラントなどなど、合体怪獣も枚挙にいとまがない。
そして今作のキープレイスは、"富士山"だ。"富士山"は幾度もゴジラシリーズに出てきたし、マジンガーZの"光子力研究所"があるのも富士山麓。そしてヱヴァンゲリヲンの"第3新東京市"のある箱根や芦ノ湖畔も、富士山を望む場所である。決戦場所に"富士山を選んでくれてありがとう!"である。
余談になるが、東京の戦闘シーンで登場する看板が、中華系の日本語フォント(iOSで見たことのあるカタカナ表記)だったりするのが、鳥肌モノだ(おぞましい)。
さらに、ガンダムがチラ出演するのは、来週公開のスピルバーグの「レディ・プレイヤー1」と同じ。サンライズの公認ではあるが、ガンダムは公式の実写版作品がないのに、端役でハリウッド出演しまくりである。
なんといっても前作(2013)と違うのは、日本全国に4D上映館があること。一度は4D系で観るべきだし、"人間搭乗型スーパーロボット"の疑似体感とはこういうものだろう。VRが進化すればするほど、さらにパシフィック・リムは面白くなっていくに違いない。
GWに向かって「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」をはじめ、多くの4D対応作品が控えているので、観るなら今のうちかもしれない。4D版が終わってしまうぞ。
(2015/4/13 /ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/吹替翻訳+字幕:松崎広幸)