聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのレビュー・感想・評価
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心の闇の恐怖の正体
外科医のスティーブン一家に起こる悲劇。スティーブンが手術で死なせた患者の息子マーティンの不吉な予言が現実になり、またはスティーブン一家がそれを現実にしてゆく。
この違和感は、どこから来るのだろう?
登場人物の会話には、家族間でも同僚間でも、社交性や共感を示す所作がまるでない。愛想笑いも。能面の下から次々に現れるのは、現実の社会では抑え込まれているだろう欲求、欲望、恐怖、攻撃性。社会を成り立たせている人間の共感を排し、心の闇だけを表に出せば何が起こるか?非現実的な世界の恐怖にリアリティを感じるのは、誰もが持つ、心の闇が表出することへの恐怖がリアルなことの裏返しだろう。
縫合
私は神話的アイロニーが好きなんだと再認識した。ギリシャ人は常に超自然的な現象を前提にしている。
オープニングの心臓の縫合シーン。縫合はラプソディーの語源だ。詩と詩を繋ぎ合わせたものが音楽。そして人と人を仮縫いしてくっつけたような家族。
マーティンは呪術的正義の下で、豪奢な暮らしの主人公に罰を下す。
マーティンがスパゲティを貪るシーンは、神である父の再生(継承)と、それとともに、「身代わり」を殺害することを象徴している。
そして物語の肝は、彼の予言そのものにある。
一方、主人公は神をも恐れぬ支配者だ。子供を自分の所有物とみなし、どちらか優秀な方を残して生贄に差し出す。
こうした「身代わり」の観念は、家族(共同体)から何かを追い払うという行為を正当化させ、その行為を行事化させていく。
人間社会の「おぞましさ」。ゾッとする。
唯一、神と人間の両界を行き来する姉。彼女が生きていることで、復習の連鎖を想像させて映画は終わる。
映画でしか表現できない、なんとも言えない不気味さ。前作「ロブスター」と同様に、この監督の独自性に魅力された。
タルコフスキーかと
いきなり手術のグロ映像から始まる本編(最初、動物のペニスの挿入シーンかなかんなのかと勘違いしてしまったが)
映像は骨太で終始不気味で、これでもかと鳴り響く不協和音が恐怖が迫り来るんじゃないかという雰囲気を演出する
ニコール・キッドマンのベッドでの奇妙な寝相辺りから、これどっかで見たことあるパターン?
あれ?
タルコフスキーの…Zzz…と気がつく頃には睡魔に襲われ、中盤は睡眠学習状態に
意識を取り戻すと、少年が地下室に監禁され自分の手首を噛みちぎったり
ゴア表現が苦手な自分には苦手なジャンル
自分の子供2人も下半身が呪い?で動かなくなり、終いには目から涙を流し出す
最後の覆面ロシアンルーレットでの終わり方といい謎が多い作品だった
ただちゃんと理解できても制作者は本意ではないんだろうな、こういう作品の場合
よく言う世界観があるっていう褒め言葉的なものがあるが、このジャンルは本当に微妙で1ミリ自分の価値観とズレるだけで分からなくなる
この作品はそういう意味で自分には合わなかった
予習していくと、もっと楽しい
父ちゃんの選択
聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア
2018年22本目の劇場鑑賞。
心臓外科医の男が、
亡くなった元患者の息子と親しくしていくうちに、
自分の子どもたちに不可解な異変が起きるさまをミステリアスかつ不穏な筆致で描き出す。
「聖なる鹿殺し」という意味不明なタイトルであり、
本編には“鹿”など一度も出てこない。
本作はギリシア悲劇と似てる部分があると語る監督。
ギリシア悲劇「アウリスのイピゲネイア」とは、
アガメムノーンが女神アルテミスが可愛がっていた“鹿”を射殺して逆鱗に触れ、
愛娘を生贄として捧げるよというもの。
手術中の過失によって患者を死に追いやったスティーブンがアガメムノーンであり、
脅迫するマーティンがアルテミスである。
そもそも原作を知らなので理解が難しい。
耳障りな音楽、
不条理で、
特徴的なカメラワーク。
一瞬たりとも気を抜けない。
マーティン演じるバリー・コーガンの感情を表さない演技が不気味。
フォークで音を立てながらくちゃくちゃとスパゲティを食べるシーン。
あの食べる表情が素晴らしい。
失われたものを返して欲しいというマーティンの願いが引き起こした悲劇でした。
リアリティーがない
後味が悪い
難解。でもこういう楽しみ方もあると知った。
ゆっ...くりカメラが動いております
大傑作!あまり難解ではないよ。
ヨルゴス・ランティモス監督は、いつもヘンテコな人たちをヘンテコなシチュエーションに置いて、異常な行動に導きますが、今作ではあまりヘンテコでは無い。父親の一つの過ちから、家族がとんでもない事に巻き込まれてしまう。父親以外、あまり悪い事やった人はいないんですが、その事実と向かうべき悲劇的な結果が明らかになった時の個々の行動が色々ヒドい。それが家族であろうとも。人間の心理と行動は、既にブラックな笑いに転化。そういや、「籠の中の乙女」も「ロブスター」もコメディだよね。前の諸作のザワザワヒリヒリする様な展開は多くは無いが、人間の心理の追求をフツーの方向にしない所がこの監督の真骨頂。サスペンスフルな映像と音楽は素晴らしくスタイリッシュで完全に一皮むけました。全く飽きずに鑑賞出来る大傑作!ギリシア人監督らしい元ネタ...というかモチーフになったお話が、ズバリ劇中に出てきます。ヨルゴス・ランティモス作品の中でも非常に親切で分かり易い作品だが、人間という存在のイタさの描き方は最上級クラスです。アリシア・シルバーストーンが出てますが、何かの暗喩ですかな?アカデミー外国語映画賞を取ってもらいたかった!
ホラーとの相性は抜群!
酷い(大好き)
こいつはただものじゃない
やばいけど最高
試写会にて。やばい。やばすぎる。
常にヤバそうな雰囲気が漂っている。そんな中でも主人公の背中を追うようなカメラや、天から見下ろすようなカメラ、そして地から見上げるようなカメラなど、とにかくカメラワークが冴えているのが目立つ。そのおかげで映画に釘付けになってしまっているのも事実。
ここは笑っていいのかというような異様なユーモアが散りばめられているのも癖になる。ニコールキッドマンが○○○してるのはびびった。
そして、なんといっても謎の青年、マーティンが出てくるシーンになると流れる厭な音楽が素晴らしい。心理的な不快感をただひたすら煽ってくる。それが画面の中で行われるどうしようもない不条理と見事にマッチしている。その、安全地帯から見つめる素晴らしさ!
ストーリーもさすがカンヌ脚本賞というようにかなり良くできていると思う。難解ではあるが、中盤、丁寧に青年が何者なのかを説明してくれており(その説明自体が難しいのだが)それを理解できればとても面白いと思う。自分は元々このような悪趣味な映画が好きなので大ハマりでした。正義を具現化し、鹿という神格化されている動物をあるものにたとえている。芸術性もあり、純粋に楽しめる要素もある。そのバランスがとても良かった。
聖なる鹿殺しというタイトルだけでもそそられる本作。見て損することはないと思うのでとにかく見て欲しいです。
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