悪魔
劇場公開日 2018年2月24日
解説
文豪・谷崎潤一郎の短編を3人の映画監督が現代劇として映像化するシリーズ「谷崎潤一郎原案 TANIZAKI TRIBUTE」の1作。大正元年に発表された谷崎の同名小説を「光と血」「オー!ファーザー」の藤井道人監督が映画化。吉村界人、大野いと、前田公輝という注目の若手キャストが共演する。大学入学のために上京した佐伯の下宿先となる林邸は閑静な住宅街に居を構え、大家の千枝、千枝の娘・照子、林家の親戚にあたる鈴木が住んでいた。佐伯はアルコールにおぼれ、大学にもなじめず、幻覚に苦しむ日々を送っていた。高校生ながら不思議な色気と魅力を持つ照子は頻繁に佐伯の部屋を訪れ、佐伯の心を惑わせた。照子を偏愛する鈴木は、佐伯に照子に近づかないよう警告するが、佐伯は鈴木の言葉に反発する。
2018年製作/83分/日本
配給:TBSサービス
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2020年8月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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谷崎潤一郎の短編小説を映画化するプロジェクト「TANIZAKI TRIBUTE」の作品の一つ。
谷崎潤一郎に多少なりとも興味があり、谷崎文学に歩み寄って考察できるならば、いろいろと感じながら観ることができるかもしれませんが、観る人によっては退屈でつまらない、ただの気持ち悪い変態映画かもしれません。」
主人公が列車に乗っているシーンから始まり、強迫神経症(強迫観念)に悩まされ、佐伯は常に死の恐怖と妄想に取り付かれているのですが、谷崎潤一郎の短編小説『恐怖』の鉄道病という病を抱えた主人公の苦悶と重なってきます。のっけから、谷崎文学が始まっていました。笑
携帯電話などを使っているので現代風にアレンジされているのでしょうが、まかない付きの間借りの下宿というスタイルは古典的で古めかしく、障子の隙間からのぞき込むシーンなどは、どこか江戸川乱歩ぽい感じもしました。
今でこそ、脚フェチという言葉は普通に使われているけれど、明治・大正時代に谷崎はすでにフェティシズムについて言及していたのですね。照子に付きまとう居候の鈴木はストーカー。主人公と同級生の女子大生、首を絞められても、佐伯から離れることなく親切に接する姿はどこかマゾヒズム的で正常とは思えない。男性を手玉に取って自分のペースに巻き込み他人を破壊させる照子はいわゆるボーダーラインみたい。現代を巣食うさまざまな病理が浮き上がってきます。
原作を読んでいないのでよくわかりませんが、途中で何度も登場する、不気味な海老は何を意味するのか。
主人公を演じた吉村界人くん、怪演+好演でした。以前に観たドラマ『健康で文化的な最低限の生活』でも、独特のオーラがあって、すごく印象に残っていました。
<備忘録>
「TANIZAKI TRIBUTE」3作品
1.『神と人間の間』
2.『富美子の足』
3.『悪魔』
2019年8月13日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
大学進学のため上京した主人公、下宿先には小悪魔の女子高校生がいた。
しかも下宿人の一人が妄想家で、この女子高生と婚約していると思い込んでいるから厄介だ。
主人公の悩みなんてどこ吹く風。
2018年4月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ノワールとかグロいのとか苦手なのに、役者に惹かれてトークショー付きで鑑賞。レイトショーでしたが席は埋まっていました。やっぱり苦手な内容でしたが、好きな人は好きそうです。
救いのない暗い世界、死でしか逃れられない状況。自分をどうにもできない苦しさ。吉村界人、見ていて辛くなるほどの怪演でした。。
何より大野いとの色気が素晴らしく、あんな高校生いたら狂ってしまうよなあと。みんなの求めている姿にコロコロ変われる女の子。出会う男すべて狂わせるガールといえば水原希子ですが、悪魔の大野いとは、ダーク版出会う男すべて狂わせるガール。
吉村さんと前田さんがどんどん狂わされていく姿は、グロくもないのに目を覆いたくなりました。。
トークショーで話していたことが印象的で、100年前には精神分裂、鬱という枠組みがなく、ますます混沌に陥っていくものだったと。ただそこだけが違うだけで、今となんとでも置き換えられる。震災をきっかけに、死の恐怖に立ち向かい続ける主人公。すべての死を記録し続けることで、自分を保っているような、脅かしているような。
主人公自身に悪魔がいるのか、周りの人が悪魔なのか、それは人によって変わってくる。
また観たくないけど、観るともっと深く観れるんだろうなあ。
※前田さんのフケはパン粉だそうです
2018年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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谷崎トリビュートの連作の中でも今作が一番分かり易く、出来映えの良い作品だと思う。原作的にも現在の闇に直結するミステリーであるし、そのサイコホラー要素は古めかしくない今の時代の問題なのだと感じる。
強迫性被害妄想を抱えたまま大学生活を始めた男がその心の病故、常軌を逸して奈落へ転がり落ちるという古典的なあらすじである。分かり易くその妄想が過ぎると鼻血をだしたり、ヒロインのファムファタール(ま、ほんとの女子高生はそこまで感情操作など出来ないのだが)、運命に従うかのような死への誘いがきちんと流れの中で矛盾を生じず進んでゆく。原作未読なので分からないのだが、登場人物の中の主人公に親切に接する大学の同級女子の件はもっと深く突っ込んで欲しかった。自殺した弟と同じ匂いがするその主人公に身体まで差し出し、首まで絞められてもまだ献身的に接する女神のようなスタンスは、光と影の二原論を表現しているのだろう。だからこそその光がより目映い程、悪魔である女子高生の手練手管の悪さが際立つと思うのだが・・・
メタファー的に映し出される海老のカットは、何かを暗示しているのだろうが、結局意図が読めなかったのは自分の勉強不足である。今作のキモのシーンである、ビンタをされながらの挑発発言の練習は、大変勉強になった。多分、男としてはあれが禁断そのものなのだろうとしみじみ感じた。鏡の裏の盗撮カメラは、よくラブホである都市伝説を利用したトリックなのだが、それならば、鏡の前でタバコに火を付けて、映像が二重に映るシーンを差し込んでくれれば、良いネタ振りだったのにと残念である。
いずれにせよ、ここ最近の理解しやすい『病んだ映画』としての高評価を称えたいと思う。
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