劇場公開日 2018年5月19日

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「いまの山崎努と樹木希林を「時間の冗長性」と共に40代監督が映し出す贅沢」モリのいる場所 ぷらさかさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0いまの山崎努と樹木希林を「時間の冗長性」と共に40代監督が映し出す贅沢

2018年7月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

幸せ

モデルとなった人物の予備知識ほぼなし、演者と監督に惹かれて観賞。
基本的に長ったらしい映画は嫌いだが、沖田修一はむしろ「時間の冗長性」を映画の最大の贅沢と考えている節があって、それこそがこの監督のメッセージ性なのかとも思う。この作品では、外界とは時の流れが異なる画家の庭という極めて限られた空間が主題のため、まあ上手くハマっている。
山崎努の存在感は流石で、一瞬彼とわからぬほど。
家族映画における樹木希林の佇まいはやはり一流で、どの家族映画でもそこの家族の中に溶け込んで一員としてそこにいる。
この二人の会話はずっと聴いてられるなぁ。老夫婦の生活感とそれに根ざすおかしみが混じり合った会話。
この両名がこの先に演じられる作品も時間も無限ではないので、やはり連ドラよりは少しでもこうして多くの映画監督(特に若手から中堅になりかけの世代)と仕事をしてもらえるとありがたい。もちろんTVドラマ等でも気を吐いている人々がいるのは承知だけども、どうしても制限と拘束負担が大きいのでね。
何より、最近の中堅世代監督の中に、映画・人・役者の三者に対して誠実であろうとする姿勢が窺える監督が複数いるのは心強い。そうした監督が本作のように実力あるベテラン役者と仕事をできるというのは、邦画にとっていい状況のように思える。
とはいえ作品として難がない訳でなく、ちと映画としての「転」に拘りすぎたというか突飛な印象を受けるシーンがあって、やや蛇足のように思った。ただただずっとゆったりとした時間が進む映画でも構わないんだが。
もう上映映画館もほとんどないが、庭にいる身近な虫や小生物などの愛らしさを追った虫萌え映画でもあったので虫好きは映画館で観るべき。音響も丁寧。大掛かりな映画とはまた別の方向性で、手間暇かかった豊かな映画だった。

ぷらさか