ダンシング・ベートーヴェンのレビュー・感想・評価
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斬新な振付と肉体美
バレエの世界は疎くて、
ただギエムのボレロが好きで観に行った事がある。
そんな、バレエにあまり興味のない人でも、このベジャールの振付けなら楽しめるのではないだろうか。
ダンサーが円陣を組むところは、何か呪術的な雰囲気すら感じる。これはボレロでも同じだ。
加えて黒人を多く採用しているところと独特の振り付けからも、民族調に見える。
舞台裏の人間ドラマや
随所に語られる舞踏・音楽・芸術に対しての哲学的見解も楽しめる。
ただ、最後の舞台そのものが少なかったのは残念だったが、これは舞台裏を見せるための映画なので仕方ないのだろう。その代わり、練習場面での美しい肉体の動きを堪能できる。
第九にも然程興味が無かったが、〝人類は皆兄弟〟というメッセージが込められていると知り、今後聞き方が変わりそうだ。
【”人類よ、一つであれ!”バレエダンサー、オーケストラ、合唱団、総勢350人による「第九」を「バレエ」で表現した躍るコンサート『第九交響曲』の舞台裏及び東京公演を描くドキュメンタリー作品。】
■天才振付家、モーリス・ベジャールの伝説の舞台『第九交響曲』に共同で取り組むこととなった東京バレエ団とモーリス・ベジャール・バレエ団。
その壮大なステージが上演されるまでの過酷な練習とリハーサル、ダンサーたちの情熱や苦悩を余すところなく捉えたドキュメンタリー映画。
◆感想
・このドキュメンタリーの随所で発信される”人類よ、一つであれ!”というメッセージが印象に残る。
・第二部のメインを任されていたカテリーナが、恋人オスカーの子を身籠った時のインタビュー。彼女に涙はなく”新しいチャレンジ”と明るい表情で言い、オスカーも”僕の父、祖父は黒人の血が流れている。”と語っている。
・練習中に、足首を捻挫して涙する女性ダンサーの姿。
ー このドキュメンタリーは、人間ドラマでもある。-
<今作は、再演不可能とされていた伝説の舞台を、東京バレエ団創立50周年記念シリーズ第7弾として実現させた舞台の裏側に密着したドキュメンタリー映画である。
夢を追う多くのダンサーの姿とラストの東京公演の『第九交響曲』のシーンは素晴らしき作品でもある。>
ベタ足の素足でタップ見たいな踊り
第四楽章の終盤にバレエシューズを履かずにベタ足の素足でタップ見たいな踊りを踊る場面が、印象的だった。そのまま、歓喜の歌のテーマに入る。カットされていたが通して見てみたい。
躍動
2014年のNHKホールでの本公演を観ていませんのでメイキングである本作を評して良いものか悩みます。今年の上野での再演もコロナで延期になったようで残念ですね。
ドキュメンタリーとしては様々な切り口で描いているので感心しました。
第2楽章のプリマドンナのカテリーナ・シャルキナさんが稽古途中で妊娠降板というのも驚き、日本だったらプロとして云々などと批判的な声がでるでしょう、ところが劇団の皆が新しい命の息吹を喜んでいました、素晴らしいお仲間ですね。振り付けも花や鳥、虫たちの仕草に模しているように感じます、ですから自然であることの大切さが尊ばれるのですね。
ナビゲターのマリヤ・ロマンさんはモーリス・ベジャール・バレエ団の芸術監督ジル・ロマンさんの娘さん、お母さんのキーラ・カルケヴィッチさんも第三楽章を踊られたダンサーです。マリヤさんが指揮者のズービン・メーターさんに「耳の聴こえなくなったベートーヴェンが公演をみたら音を観ることになりますね」とインタービュー、どう思ったか興味のあるところですね。ひょっとして企画を立ち上げたモーリス・ベジャールさんもベートーヴェンに捧げる気持ちで創ったのかも知れませんね。驚いたのは円舞のシーンで能舞台のような踏込みを演じているように見えたことです、日本文化の造詣が深いモーリス・ベジャールさんの感性はまさにワールドワイドですね。
ベートーヴェンとバレエの融合、なんと壮大で幻想的な舞台なのでしょう。
佐々木忠次さんの功績
映画ではエンドロールに名前が出てきただけだけど、日本舞台芸術振興会の佐々木忠次さんの夢が実現した公演だという事を改めて実感しました。オペラの客はオペラしか観ない。バレエの客はバレエしか観ない。クラシックの客はクラシックしか聴かない。そんな状況を打ち破るには、うってつけの作品だからです。
東京バレエ団を作り、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場などの一流歌劇場の招聘。パリ・オペラ座バレエ団、英国ロイヤルバレエの招聘など、その恩恵を受けたファンが多く存在しています。でも、ファンはバラバラ。
モーリス・ベジャール、ズービン・メータ、イスラエル・フィル、東京バレエ団を結びつける事が出来たのも、日本のインプレサリオと賞賛された佐々木忠次さんの存在があっての事でした。
「第九」公演自体は、東京で上演されたパリ・オペラ座バレエ団と今回の公演を観ていますが、ベジャールの作品としては大掛かりというだけで平凡なものでした。
映画では、本番もリハーサルもいいとこしか見せないので、作品の傷が分からないのです。リハーサルが一番面白いので大満足ですが、バレエ評論家の三浦雅士さんの俗っぽいところや東京バレエ団の飯田宗孝さんのコメントなど、かなりいたたまれない感じになります。
オプチユニストで行こう
音楽をそのまま踊っているかのような、素晴らしいバレエだった。彫刻が動いているみたい…
人類はみんな兄弟。この楽観性にこそ未来がある。繋がってない人はいない。辛い孤独に苛まされている人はまだこの繋がりが見えないだけ。
バレエダンサーは選ばれし人
バレエダンサーは贅肉とは対極の位置にいて、でも踊るための筋肉は必要で、さらに美しくなくてもいけなくて。怪我をせず、もししたとしてもうまく付き合える能力も必要で。
見事な踊りをみせる彼らは選ばれし人だなあとつくずく思いました。
「希望はつねに勝利である」
故モーリス・ベジャール の振付によるバレエ作品 ベートーヴェン『交響曲第九番』公演の舞台裏をインタビューや練習風景などで構成する。
インタビューに驚かされるのは、演者や関わる制作者(振付、音楽、舞台芸術など)たちがみな深く抽象的な思索をしている点。その点、インタビューに応じていた東京バレエ団の振付師は感覚的で稚拙な言葉しか持っていなくて、とても残念な感じだった。
作中に出てきた「ベートーヴェンは第九を作曲した当時、すでに聴力を失っていた」「それでは、ベジャールの第九は音楽を見るための試みといえるのでは」というやりとり、ラストにインタビュワーの独白で引用されるベジャールの「希望はつねに勝利である」という言葉がとても印象的だった。
ベートーヴェンの第九×モーリス・ベジャール×ズービン・メータという天才たちによる豪華絢爛な舞台
今は亡き、バレエ界きっての振付師であるモーリス・ベジャールによって完成された”第九交響曲”。当初は再演不可能とされたこの舞台が2014年に東京のNHKホールで上演され、21世紀史上最高と称賛されることになる。
圧倒的なスケールで魅せたこの公演には、ベジャールの後継者であるジル・ロマンはじめ沢山のダンサーたちのたぐいまれなる努力と覚悟があったことは優に想像はできるが、映画を鑑賞して更にその凄みを感じられた。しかし、そこにはベジャールや作品、仲間への愛が溢れていて、その”人間臭さ”が心地よく、ついついわたしも彼らの世界にのめりこんでしまった。
晩年難聴だったベートーヴェンがこの舞台を観たらなんと言っただろうか・・・。きっと頭の中で彼の思い描いた音が鳴り響いたに違いない。
2017年の年末をこんな作品で締めくくれたことが嬉しくてならない。
ドキュメンタリー色が強めです
もっと踊りのシーンが見られるかと期待していたら、予想より少な目。
ラストはスクリーン上で圧倒的なシーンを見せ付けてもらい、余韻に浸りたかったので、ちょっと物足りない感じ。
あくまで「ドキュメンタリー」映画です。
ベジャール自身も写真でしか登場せず、2014年の『第九』の再演にかかわったメンバー達を追う構成。
実際にモーリス・ベジャールバレエ団の日本公演を見に行くレベルのファンなら、関係者・ダンサーのインタビューや練習風景といった舞台裏を覗くのは楽しいと思います。
私は三浦雅士さん(舞踊研究者)の語りがすごく印象に残りました。
でも「バレエ興味あるかな」くらいの方だと、少し退屈かもしれません。
(試写会で鑑賞しましたが、居眠りしている方が散見…)
コアなバレエ好きのための映画です。
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