「映画らしい映画」シェイプ・オブ・ウォーター しずかさんの映画レビュー(感想・評価)
映画らしい映画
映画らしい映画で大満足です。物語の筋として、イライザが恋に落ちる過程がシンプル過ぎて途中までハテナが浮かびましたが、男女の恋や愛の類とはそういうものなのかと妙に納得してしまいました。そう思わせるのは、ディテールにはリアリティをしっかり表現してる為と思います。まさかヒロイン・イライザの出勤前の日課まで描くとは。
仲間には恵まれていますが、障がいもあり変わらぬ平坦な毎日の中で侘しさを抱えている状態なのですが…テレビの中の女性シンガーが、歌を歌っている場面が映し出される場面がありますが、そのシーンのみで湧き出るような孤独な女性のさびしさ、を表現していたり、2人が結ばれた後のあるシーンで、2つの水滴が一つに融合する場面があるのですが、映画特有のメタファーもふんだんで良く考えられており無駄が無い。
追うものと追われるものという二軸も描かれ、間延びしない2時間ほどでした。
おそらくストリックランドはトランプ大統領をイメージして人物描写をされており、ゼルダ、ジャイルズもマイノリティ。ほかの映画を引き合いに出すのは良くない事と承知だが、グレイテストショーマンはサーカス(見世物小屋)を人類の賞賛と銘打ち、とってつけたようなポリコレを打ち出したけど、シェイプオブウォーターの様な見せ方の方が入りやすいなと思いました。
確かにそこまで入り組んだ脚本ではありません、すごい分かりやすいです。ただ冒頭に書いた映画らしい映画、というのは、私たちにとっても理解できる大衆性と、映画でしか表現できない芸術性、わざとらしくならないメッセージ性のバランスで成立するものと思うのです。
全体的にグリーンの色合いを強調していたり、音楽もよく、一貫した美意識で統一された世界観が描かれておりアカデミー監督賞、作品賞も納得でした。パシフィックリムやパンズラビリンスではそこまでこの監督に興味を持てなかったのですが、本作は監督の意志・価値観・美意識がちゃんと結実しており、ギレルモデルトロの完成品と言えるものかと思います。監督の本作への愛と本気度を感じられる…
俳優の演技も素晴らしいので、ぜひおすすめしたい映画です。食わず嫌いしないで見てみて!!