「屈折した攻撃性、中途半端な変態性、出来の良い準カルト映画」シェイプ・オブ・ウォーター osanさんの映画レビュー(感想・評価)
屈折した攻撃性、中途半端な変態性、出来の良い準カルト映画
ラストが良かった。ラストのお陰でそれまでの気持ち悪さが少しは消えてくれた。
音楽が良い。というか音楽がよくなかったら酷いことになってる。
映画としてはよく出来てる。できの良い作品であることは確か。映画の教科書として使える。
けど、出来が良いから、感動したりリピートしたいわけではない。リピートしたくないのは、気持ち悪いからだ。
この気持ち悪さは、モチーフのせいや図柄のせいばかりではなく、中途半端さや、攻撃性の存在(寛容性の不在)から来るものだ。
表面的にはリベラルで優しさがあるように見えるが、画面からセリフから屈折した攻撃性がにじみ出ている。素直さがないともいえる。ストリックランドの描き方なんかはまさにそうで、まるで子供向けアニメの悪者みたいな単純な役付け。子供向けにするならそれを徹底すればいいのに、自慰やセックスやガールズトークを散りばめるから、中途半端な大人向けになってる。
セックス描写にしたって中途半端で、ストリックランドの汚いセックスシーンを描くなら、魚人とイライザのセックスシーン(初夜)も堂々とみせるべきだった。「昨晩やったよ!ゲットしたよ!」「まじ!すごいじゃん」的な事後報告のガールズトークがあるだけ。ここをちゃんと描けば水中セックスなんだろうから、それはかなり新しいはずで、エポックメイキングな映画になったはずですよ。そこまでやればお見事であって、「21世紀の変態進化版ルキーノ・ヴィスコンティ」としてリスペクトできます。
そういうところから微妙に逃げているよね。良くいえば「意図のある表現」だけど、悪くいえば「姑息」。変態芸術家になりきれない中途半端さ。
同じ気持ち悪い系でもザフライのような優しさも感じられない。
観るつもりはなかったのに、話題についていくためだけに観た自分が愚かだった。「この作品はきっと屈折していて気持ち悪い」という直感は当たってた。
映画として出来がよくなかったらカルト映画の認定をしてるところだ。3点もつけてしまったのはカルト映画としては抜群に出来が良いから。カルト映画のクリエイター向けに「カルト映画で売れて賞もとれる方法」として教科書にするとよいかも。
「準カルト映画」とは言い得て妙な表現で納得です。
数年経つと、熱気も醒めるタイプの映画だと思います。
画面作りはともかく、脚本・演出が底が浅く、いわゆる中二病的映画のような気がしました。