劇場公開日 2018年3月1日

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「ストリックランドを擁護してもいいですか?」シェイプ・オブ・ウォーター 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ストリックランドを擁護してもいいですか?

2018年3月2日
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想像してみてください。
ストリックランドが自分の父親、あるいは自分自身だとして、官僚や軍人やサラリーマンとして同じような環境や状況に置かれていたとしたら‥‥。
許しがたい傲慢さや自尊心の強さが鼻につくところはあるけれど、客観的には『有能な人』という評価を得るはずです。

〝彼〟と直接触れ合う機会を得たイライザやデミストリ(ホフステトラー博士)の方が特別な感情を抱くことのできる極く限られた少数派のはずなのですが、映画を観ている我々はイライザや博士の立場での感情の方が普遍的・一般的で正しいと思い込んで感情移入してしまいます。

現実社会において、恐らく誰もが、この映画のように、本当に大事にしなければいけないものはなにか、ということを分かっているはずなのに、大半の人がそれに気づかないまま、或いは気づかない振りをしながら、ストリックランドと同じような価値観や方向を向いて仕事や日々の活動における判断をしているのではないでしょうか?
一般的な仕事において、限られた時間の中で、最小限のコストで最大の効果を発揮しようとする時に特定の顧客の為にそれなりの手間やリスクのかかる選択(あたかも半魚人を救うみたいな)をするでしょうか?

本当に大事なものを自分のペース、自分の世界観の中で、愛し慈しむことは、現代の慌ただしい競争社会の中では、ファンタジーでしかないということなのだと思います。
とても悲しいけれど。

グレシャムの法則