「"傷跡"を"運命"に変えた作品 祝アカデミー賞受賞!!180305追記」シェイプ・オブ・ウォーター ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
"傷跡"を"運命"に変えた作品 祝アカデミー賞受賞!!180305追記
「テレビの中の怪獣が唯一の友達だった」というギレルモ監督。この映画の評価は多分この一言に共感できるかできないかで大きく変わると思う。
私は幸運にも共感できるタイプだった。ギレルモ監督の怪獣愛、そしてそこに救いと運命性を欲する想い。
美女と野獣の話はどうして王子様はハンサムじゃなきゃいけないんだ?なぜ美女だけが?ギレルモ監督は主人公の傷跡をラストで運命に変えた。まさか首の傷がエラに変わるためのものだったなんて。
どうして怪獣はいつも最後は殺されてしまうの?なぜ怪獣はいつも孤独なの?いや違う。怪獣にもお姫様との運命の出会いがあるのだ。
そしてラスト。邪悪な現実には絶対に手の届かない世界へ主人公たちを救いあげた。
その邪悪な現実とはトランプ政権オマージュのストリックランドだ。グレートアメリカを強調し、女性や黒人に対して差別的な言葉を浴びせる。メキシコ人であるギレルモ監督のささやかな批判である。
ジブリ作品を実写化するなら役者はこういう人だろうなーという純粋無垢な少女のようであり、不思議な色気があるサリー・ホーキンスには惚れ惚れした。イライザはトラウマで話せなくなったそうだが、一体これまで彼女に何があったのだろうか。思わず考えを巡らせてしまう。
音楽はワルツやフルート、アコーディオンでリズミカルに心地良く(どことなく「魔女の宅急便」のような雰囲気だと思ったら両作とも港に近い街で年代も近いね。)、あとは何と言っても画面が美しい。色彩もかなり計算されコントロールされている。
ちなみにわざとらしいボカしのストリックランドのセックスシーンはギャグですよ(笑)一生懸命に腰を振り続ける彼をどうか優しく笑ってあげてください。ポジティブシンキングの本を読んでるところも可愛かったですね。
アカデミー賞がらみで注目が集まってしまったが、私はひっそりと、だけど何度でもみたいそんな映画だと思う。今年の大切な一本。
*アカデミー作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞受賞おめでとうございます!また見に行かなきゃ