劇場公開日 2019年12月20日

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「難産ではあったが、恐らく考えうる最良の完結編」スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5難産ではあったが、恐らく考えうる最良の完結編

2019年12月20日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

字幕版を鑑賞。遂にスターウォーズシリーズが完結した。初作の Ep.4 を見たのは 42 年前で、まだ大学生だった私はこのシリーズにのめり込んだ。3年おきに作られた 5 と 6 までは非常に順調に物語が進んで、世界観を確立したのだが、実は 4 だけがジョージ・ルーカスの監督で、5 と 6 は違っていたのが意外であった。監督が違っても統一感のあるシリーズが作れるのかと感心したものであった。

6 から 16 年も経ってから、1〜3 が3年おきに作られて、この3作は全てルーカスが自ら監督したものであったが、CG 技術の飛躍的な進歩を喜んだルーカスが、やたらとドロイドの大量出現シーンを繰り返し、ジャージャービンクスのようなウザいだけのキャラクターを登場させたりしたために、期待していない方向に世界観が引っ張られていくのに耐え難い思いをさせられた。この 1〜3 では、後にダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーの誕生と成長が物語の柱となっていたが、アナキンの未熟さが終始鼻につき、例え愛する妻を思うあまりとしても、シスの暗黒面に引き込まれるという流れには全く納得が行かなかった。

Ep.3 から 10 年を経て、Ep.7〜9 が2年おきに作られたが、7 公開の3年前に、ディズニー社がルーカスフィルムを買収しており、物語が大きく変更されてしまうことになった。4〜6 の主要メンバーは伝説的存在と化して脇を固めるのみならず、1人ずつ死去させられるという消耗品のような扱いとなったため、ファンの不満を買った。特に、8 はデタラメさがあまりに酷く、レイが未熟だったためにルークが死ななければならなかったような話になっており、更にレイアが宇宙服も身に付けずに宇宙飛行するという世界観ブチ壊しのシーンなどでファンの逆鱗に触れた許し難い作品であった。

7 と 9 の監督を務めたエイブラムスは、良くぞここまで 8 の致命的駄作から話を回収してまとめ上げたものだと感心させられた。エイブラムス監督で 8 をこれから作り直して欲しいと思うほどである。8 を監督したライアン・ジョンソンは、長編映画4作目での大抜擢であったが、一体誰があんな無能な奴に監督などオファーしたのかと腹立たしい思いはいまだに消えない。

さて、7 で登場した新キャラクターたちは、4〜6 と違って互いの関係性が非常に希薄であり、主人公レイについては出自さえ不明のままであった。フィンもポーも何故主要キャラ扱いなのか全く不明のまま 8 まで過ぎてしまった訳で、遂に本作でレイの出自が明かされ、壮大な伏線だったことが判明するのだが、これを伏せたままのストーリーは釈然としない訳であるから、7 と 8 の脚本家は気の毒であったと思う。

だが、見終わった後でも不明なのはカイロ・レンの存在である。必要もないのにマスクを被る幼児性、両親に対する反逆心の理由は結局不明であり、実の父に対してやらかした行為も全く釈然とすることはなかった。プレステのゲームのファイナルファンタジー7で、折角育て上げた主要キャラのエリアスを訳もわからない理由で殺されてしまうという展開とよく似ていた。単に悲劇性が必要だからという理由しか思い付かないのである。結局のところ、全く容認できない話であった。

8 では、フォースは特定の家系に遺伝するものではなくて、誰にでも持ちうる能力だという話になって、まるで女系天皇を容認しろとでもいうような方向性が嫌悪感を増していたのだが、本作では完全に血統の重要性が復活してシリーズの一貫性が保たれたと思った。ただ、あの結末ではこれまで受け継がれてきた重要なものが絶たれてしまったことになり、大きな喪失感に襲われた。レイの最後の一言に大きな感動を受けたのは、失われたものの大きさゆえではないかと思った。

結局 7〜9 でちゃんとキャラが立っていたのはレイだけで、他はかなり不満の残る結果となった。ポーは 7 の冒頭で自軍をほぼ壊滅寸前まで追い込んでおり、いくら成長した姿を見せるためとは言っても、あれで犠牲になったクルーには何の慰めにもなっていないと思った。フィンがストームトゥルーパーの脱走兵だという設定は何のためだったのか、レイに伝えたがっていた話は何だったのかも未回収ではないかと思った。

誰かの犠牲によって皆が救われるという話は、古今より感動作で繰り返し使われてきた鉄板の手法であり、ワーグナーもプッチーニもそうした作品を多く残している。本作で自己犠牲を見せるキャラは、このために 7 と 8 があったと言われればそうなのかも知れないが、やはり起点にそもそも無理があるので、やはりあまり釈然としないと思った。

このシリーズに最も貢献したのは、ジョン・ウィリアムスの音楽である。全9作とも、上映中に音楽が途切れることはなく、まるでワーグナーの楽劇のような作りになっているためにスペース・オペラという別名がある訳であるが、各シーンのタイミングに合わせて音楽を書くというのは容易なことではなく、それを 42 年にも亘って継続してくれたことにはもう敬意を払うのみである。26 年かけて「ニーベルングの指輪」四部作を書き上げたワーグナーの偉業を凌駕していると言っても過言ではないと思う。途中での作曲家交代などがなかったことは、我々にとってこの上なく幸運なことだったと思わずにはいられない。今作の予告編では、従来より増4度も高いテーマが流れて、トランペットのハイトーンに非常に痺れたのだが、本編では流れなかったのだけが心残りであった。

怪我した大蛇の造形が、スターウォーズのクォリティとは到底思えないほどチープだったり、惑星の爆発があまりにスケール感に乏しいものであったり、いつからお前ら恋仲だったの?とか、物質転送などのフォースの拡大解釈といった難点もいくつか気になったが、ひとまずエイブラムス監督には感謝したいと思う。誰が作ってもコアなファンからの不評が避けられないのは分かり切った話であり、特にあの悲惨な 8 を受けての 9 の製作には頭を抱えたはずである。根っからの SW ファンを自認するこの監督ならではの偉業であったと思う。
(映像5+脚本4+役者4+音楽5+演出4)×4= 88 点。

アラ古希
アラ古希さんのコメント
2021年2月20日

お役に立てて何よりです。:-D

アラ古希
nikuumaiさんのコメント
2021年2月18日

素晴らしいレビューだったのでUltraHDのBlu-rayを購入することにしました。ご馳走様。

nikuumai
アラ古希さんのコメント
2019年12月30日

有難うございます!

アラ古希
よぞらさんのコメント
2019年12月30日

素晴らしいレビューでした。

よぞら
アラ古希さんのコメント
2019年12月25日

畏れ入ります!

アラ古希
hiroさんのコメント
2019年12月25日

重厚かつ的を射たレビューありがとうございます!全面的に同感です!

hiro
アラ古希さんのコメント
2019年12月22日

身に余るお言葉有難うございます!

アラ古希
terumin31さんのコメント
2019年12月22日

素晴らしいレビュー有難うございます!

terumin31