ウインド・リバーのレビュー・感想・評価
全285件中、21~40件目を表示
社会派グライムサスペンスの傑作
2017年作品。
緊迫感が最後まで持続し、ラストの銃撃戦の迫力が凄まじかった。
ハンターのコリー(ジェレミー・レナー)は、16歳の娘を
惨殺された過去を持つ男。
ネイティブ・アメリカン保留地ワイオミング州のウインド・リバーで
起こった少女レイプ殺人事件。
殺害現場に呼ばれたのは新米のFBI捜査官ジェーン
(エリザベス・オルセン)は、いかにも頼りない若いお姉ちゃんだった。
しかしジェーンは見かけに寄らないガッツの持ち主で、
「警察権があるのは私(FBI)だけ・・・」
そして検視官が現れて、死因は、
マイナス30度の雪原を裸足で全速力で走った事により、
肺が冷気を吸い込み破裂した事で、
血を吐き、その血を吸い込んだことによる窒息死。
事故であって殺人ではないと所見を述べる。
「殺人事件と書いてくれないと、私(FBI)は上司に今すぐ帰される!」
ジェーンはそう粘る。
同じ女性として耐え難い事件だと思ったのだ。
なぜ少女は裸足でマイナス30度の雪原をで血を吐いて死んでいたのか?
真相は実に単純。そして許し難い。
ウインド・リバーはアメリカ政府がネイティブ・アメリカンを
作物も育たない辺境に追いやり、本来彼らのものだった土地を奪った。
奪われたのは「土地」だけではなく、「生き甲斐や、働く意欲」もだ。
見捨てられた土地と見捨てられた人々。
最後のテロップで「ネイティブ・アメリカンの女性失踪者の統計は
一切ない・・・統計を取ってていない」と明かされる。
見捨てられた人々、その飼いならされたネイティブ・アメリカンの
表情が悲しい・・、
ジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンの好演が
心に残る名作でした。
開かれた閉鎖空間における犯罪
静寂が降り雪に包まれた世界の悲しい事件。でもテンポ良し!
アメリカのインディアン居留地で野生動物のハンターの職に就くコリーは少女の死体を見つける。その捜査でFBI新人捜査官として配属されたジェーンに捜査協力を求められ共に不可解な殺人事件の捜査に身を投じる。
仕方なく始めるが、犯人追求の意思は次第に強くなり復讐は宿命に変わる。それには勿論理由が大アリなのだが、思惑が複雑になりがちな展開でも登場人物の少なさと"何もなさ過ぎる"土地のおかげで分かりやすく観られて良い。まぁそれが捻りのなさを感じる理由にもなってしまうのだが。
単純で王道な流れである故に終盤の展開も読めてしまうが、死の真相は実に現実的でそれは残酷で、土地や民族の歴史も絡み考えさせられる。ラスト、それが取ってつけたようだとしても意味のある映画にしていると感じた。
一面雪の映画は大体面白い
アメリカの闇をあぶり出すタイプの作品だということは知っていたし、ネイティブアメリカンの女性の遺体が発見されるという冒頭、そしてネイティブアメリカン居留地であるウィンドリバーという舞台。これはネイティブアメリカンと白人の対立に関するストーリーだろうと思っていた。
しかし表面的にはそのようなものはほとんどなく、自分の思い違いかなと感じた瞬間のラストでネイティブアメリカン女性の失踪についてのテキスト。あれ?やっぱりネイティブアメリカンは関係しているみたいだけどわからなかったなあ。という事で少しばかり調べてみた。
まずは、ネイティブアメリカンが僻地の居留地へ追いやられたという歴史。居留地の中は自治権のようなものが与えられ一見保護されているように思えるが要は連邦政府から放置されているのだ。
人がいなくなっても捜査はされない。アメリカのどこにいても受けられるはずの権利が受けられない。雪と静寂しかない土地に無理やり住まわせて、あとは知らんというわけだ。だから失踪者が増える。
アメリカでは居留地の現実を知り観客に衝撃が走ったようだが、日本人の自分にはあまりピンとこなくて、そういうものなのかと総スルーしてしまっていた。
適当に描いた死に化粧に二重で泣けるはずだったのに、知識不足でガツンとこなかったのは残念だったが、一つ賢くなったのでよしとしよう。
ここまでネイティブアメリカン居留地についてだけを書いたが、本作が素晴らしく巧妙な脚本なのはその事を無視してもサスペンス作品としてちゃんと面白いことにある。
一面雪の町で女性の遺体が発見され、それを捜査する。いや、捜査というよりは獲物を追い詰めるハンターの狩り。そして大事な人を亡くした人間の心のあり方を描く。
最高とまではいかないけれど中々見応えのあるサスペンスでした。
あとは、マイナス20度で全力疾走してはいけないと学んだ。これは有益。
なんと書けばよいのか。
(私にとっては)「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」の10倍心に残った。
主人公の男の人は、私にとって理想の男性像に近いものかもしれない。強く正しくたくましく、そして優しい人だった。
〈追記〉
上記のレビューで、無制限に誉め称えた主人公だが、いろいろな方のレビューを読んでいたら、そう単純に考えてはいけないのかなと思えてきた。「ボーダーライン」では、法の下にない正義(?)について、考えることがあったのだが、この作品では、つい無批判に、法の下にない正義を認めてしまっていた。
特にU-3153さんのレビューに考えさせられた。
未だなく変わることの無い現実
テイラー・シェリダン監督・脚本のスリラー作品。
劇場に間に合わなかった作品で、忘れた頃にサブスクで巡り合うの嬉しいですね。
周りを厳寒の雪に囲まれた町を舞台に、ゆっくりと静かに進む物語。
ネイティブ・アメリカンとを取り巻く、米社会の闇を描いていました。
シェリダン脚本の「ボーダーライン」もそうだけど、やはりテーマに重さを感じますね。
エリザベス・オルセンは寒いだけの世界に華を添えてましたし、やはりジェレミー・レナーの存在感が大きいですね。
ここが閉ざされた厳しい世界である事を、その無骨な表情で伝えていました。
ネイティブアメリカンの少女の死によって始まる捜査。
ゆっくりと真実に近づいていくのですが、近づけば近づくほど物悲しさが増していくんですね。
中盤以降は緊張感が増して展開も早くなるので、緩急をうまく使っていたと思います。
そして起こるべきして起こった銃撃戦。
ここではハンターの本領も発揮して、恐ろしい戦闘力を見せます。もうハンターというよりスナイパーですね。
迎えたラストの背中には、少しだけ希望が見えた気がしました。
しかしエンドロールで流れる
「インディアンの失踪者の統計調査はなく、その数も不明のまま。」
この一文は本当に苦しかったです。
未だなく変わることの無い現実を突きつけられた、悲しさが残る作品でした。
雪に遺る足跡、銃声が響く
全世界の先住民は同じように侵害されている。
先住民とは移住者により侵略された人達。
アメリカはインディアンを
オーストラリアはアボリジニ
日本ではアイヌもそうだと、ユネスコに指摘されている。
(実際にはアイヌの場合は、その他と違って虐殺の歴史はないようだし、
そもそもアイヌは比較的新しい時代のロシア系難民が多く含まれ
先住民の定義から外れるらしい)
WIKIでは台湾やモンゴル、チベットなども先住民虐待があるとされている。
程度の差こそあれ この映画のように人間扱いされない。
もっと言えば
良心の呵責を覚える対象ですらない ≒ 虫けら同然、で、
インディアンやアポリジニに関して言えば、人間狩りまで行っていたらしい。
今後の歴史では、侵略者から虐殺される民族が 記録されないよう祈りたい。
さすが‼️
実話だと思うと悲しい
雪山の中で不自然死していた女性の死体の捜査を手伝うことになったハンター。
捜査を進めるうちに悲しすぎる事件の動機が見え、居た堪れない気持ちになった。
雪山の足跡から推理したり、射撃シーンで遠いところから獲物(犯人)を仕留める姿はハンターそのもので演出が綺麗だった。
ウインド・リバー・インディアン居留地への興味の方が本編の内容より強くなる。
アマプラにて無料鑑賞。
極寒の地に追いやられた先住民達は教育、衛生環境、犯罪など多くの問題を抱えながら生活しているが、米国でまだオフィシャルにネイティブアメリカンではなくインディアンという名称を使っていることを知りショックだった。
警察も容易に立ち入る事ができず、インディアン部族警察が数名いるだけのため、銃所持率も高く重大な犯罪も日常的に起こるが多くは見過ごされている状態である。
劇中でも原住民の若い女性が殺害され、捜査協力するハンターの娘も行方不明になったままで、狭いコミュニティではあるが誰もがなんらかの犯罪の被害者や加害者家族であり心に深い傷を負っている。
被害者の父親が警察からの連絡を受けても気丈に立ち振る舞っているシーンでは、こんな事は日常で今回はたまたま自分達の身に起こってしまっただけ、と自分自身に言い聞かせているかのようで観ていて辛かった。
昨年テイラー・シェリダンの「モンタナの目撃者」を鑑賞したが、過酷な自然環境を舞台に犯罪に立ち向かう強い女性と言う意味では本作とテーマが同じだが、本作のもう1人の主人公FBI捜査官のジェーンは当初専門外の捜査に消極的であったが、成り行きで事件解決に奔走するうちに徐々に強い女性へと成長していくので見比べて観るのも面白いと思う。
聞いたこともない映画だったので期待してなかった
目を背けてきた邪悪な歴史が、積雪を割り世界を揺るがす。 静寂さと猛々しさを併せ持つ、現代の西部劇。
インディアン居留地「ウインド・リバー」を舞台に、現地のハンターであるコリーと新米FBI捜査官バナーが、雪原で発見された少女の遺体の謎に迫るクライム・サスペンス。
監督/脚本は『ボーダーライン』『最後の追跡』(共に脚本のみ)のテイラー・シェリダン。
主人公であるハンターのコリー・ランバートを演じるのは「MCU」シリーズや『ミッション:インポッシブル』シリーズのジェレミー・レナー。
FBI捜査官ジェーン・バナーを演じるのは『GODZILLA』「MCU」シリーズのエリザベス・オルセン。
遺体で見つかった少女の恋人、マット・レイバーンを演じるのは 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『ベイビー・ドライバー』のジョン・バーンサル。
これは…かなり強烈だ。
鑑賞後、様々な感情が奔流のように流れ出した。
何者かから逃げる少女のシーンから物語は幕を開ける。
その後、場面が転換され、コリーがライフルで狼を狙撃し駆除をするというシーンが映し出される。
ここで描き出されるのは、このウィンド・リバーが力ある者が弱き者を排除することで成り立つ世界だということ。
牧畜を生業とする地方において、肉食獣の駆除は生きていくために必要な殺生である。
対して、原住民の女性を襲うという行為は自らの欲を満たすための醜悪な行為である。
この2点は確かに違う。だが、痩せ衰えた土地であるが故、それも人工的に作られた居住世界であるが故に発生した残酷さである点においては変わらない。
彼らは誰1人として、好き好んでこの世界に居を構えているわけではないのだから。
その行為が悪であろうが、必要悪であろうが、この限定された世界においては、システムとしての「暴力」が毅然として屹立している。
これは西洋人のアメリカ移住から今日に至るまで、ひたすらに積み重ねられた邪悪さが生み出したシステムであり、個人の悪意や差別意識といった感情とは違う、非常に根深い「何か」の存在を感じさせる。
FBI捜査官のバナーは、観客の意識が具現化したかのような存在だ。
彼女は何食わぬ顔でこのウインド・リバーに足を踏み入れる。
元を辿れば、彼女たち白人がこの悲惨な世界を作り出した訳だが、そのことについては目を背けている。いや、そのことに関して意識すらしていない。
コリーの義母がバナーに雪用の装備を貸し出す場面、「必ず返しなさい」と念を押す彼女の迫真さには、個人間の貸借を超えた「何か」が感じられる。
バナーは徐々にこのウインド・リバーの掟を、自分たちが暮らしている世界とは全く別のシステムを持った世界のルールを身をもって体感していく。
自らの非力さと、目を背けてきた歴史の重さが心に刻み込まれた彼女が、ベッドに横たわっているクライマックス・シーン。
あのバナーの姿は、無自覚に、そして安穏に、原住民から搾取した土地で暮らしている人々が、この映画を観て打ちのめされた姿そのものを表しているように思える。
それではこの映画、日本人には関係のない作品なのか?
私はそうは思わない。
普段は目を背けている不都合な歴史、臭いものには蓋をするという態度で封じ込めた邪悪、そういったものは民族というマクロな視点でも、一個人というミクロな視点でも、確かに存在しているのだから。
そういう「邪悪」を意識させてくれるというだけで、本作を鑑賞する価値は多いにあると断言したい。
前半から中盤まではサスペンス調、後半一気に西部劇のようなクライム・アクションに変わる、というのが本作の持ち味である。
確かにあの緊迫感は素晴らしいのだが、いくら辺境の土地だからといってFBIを相手に銃撃戦が展開されるというのは、ちょっと飛躍しすぎているように思える。
最後までサスペンス映画として描いて欲しかった、というのが正直なところである。
英語を話し、西洋風な名前をつけられた原住民。
映画を見始めた直後にはなかった違和感が、見進めるにつれてどんどん湧き上がってくる。
彼らには自分たちの言語が、自分たちの名前があった筈なのだ。
死化粧という文化の伝承が無くなったため、想像で拵えた不出来で滑稽な面を、私たちは決して笑うことが出来ない。
夏の終わりの宵に観るマイナス21℃
意欲作ではある。
アメリカ人にとってはネイティブ・アメリカンの悲惨な境遇や帰還兵問題を描いた社会派ドラマかもしれないけど、それ以前に描かれる歪んだ倫理観に伴う、銃と腕力による衝撃的暴力の猛吹雪に阻まれて、すぐそこに見えていた正義感まで霞んでしまい、自分には、どうやってもその先にたどり着くことが出来なかった
つまり最後まで何処に感情移入するか迷ってしまった
主人公を見つめてると、自分自身も若い頃はタフな男に強く憧れ、そうなりたいと切に願ったが、今はそんな風にはなりたいとは微塵も思わない、日々、安全地帯に逃げ込むことばかりを考えてるヤワな自分を思うだけだ
見終わった後に、別に格段の気付きや目覚めは味わえなかった。この作品に描かれるリビドーの暴走的な暴力を振るう奴等への嫌悪感と不快感が身体の中に澱のように残ってしまい、監督が本当に描き出したかったモノも自分にはボヤけ飛び、晴天の氷点下でホワイトアウト(白けた!)(u_u)
55点
映画評価:55点
この作品は前々から興味があり、
気になってはいたのですが、
中々見る機会がなかったんです。
前は気がつかなかったのですが、
なんとメインキャラクターを演じるのが
アベンジャーズ!!
気がついた瞬間にすぐ見ていました(苦笑)
前置きが長くなりましたが、
ここから感想を書きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
実話に基づいた話し。
恐らく実話ではなく、
実話に基づいて面白い展開に変更した話し。
銃撃戦もないだろうし、
FBI捜査官の女が単独で捜査している事もない、
更には現地のハンターが捜査官と共に動く事もないだろう。
伝えたい事は1つ
ネイティブアメリカへの差別や扱いを
世界に発信したい。
それのみ。
だから、
少しねじ曲がっている。
パッと見は良い作品に見えるが
なんか、
伝えたい事意外が雑に感じる
それゆえに少し残念。
【2021.8.1鑑賞】
全285件中、21~40件目を表示