ウインド・リバーのレビュー・感想・評価
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全てを奪われ絶望の中で生きるという苦しみ
これは様々な問題提起をする素晴らしい映画だった
アメリカのワイオミング州にあるインディアン居留地 ウインド・リバーでネイティブアメリカンの少女の遺体が発見される
インディアン居留地の捜査権はFBIにあるため、ラスベガスに出張していたFBI捜査官のジェーン(エリザベス・オルセン)は、急遽、ウインド・リバーへと向かう
アメリカの中で、ワイオミング州というは、最も人口の少ない土地のうちの一つだという
なぜなら、切り立った山に囲まれた土地は、石炭が取れるわけでも、石油が取れるわけでもないため、町として発展せず、人が集まらなかったからである
逆に言えば、そこはアメリカの中で最も土地が余っている場所であり、アメリカ政府は、そこへネイティブアメリカンを強制的に住まわせ、インディアン居留地「ウインド・リバー」と命名した
それ以来、ネイティブアメリカンの人々は、絶望しかないその土地で、息をひそめて暮らすことを強いられてきた
この映画では、そのウインド・リバーで起きた殺人事件を描いているのだが
その背景からして、ただのサスペンス映画ではないことがわかる
かつて、アメリカの土地に侵略してきた白人たちは、彼らをその何もない土地に追い込んで住まわせたけれど
もしも、白人たちがその土地に強制的に住まわされることになったら、その白人たちはどうなってしまうのかを描いている
その、とても複雑な歴史を持つ土地を一匹の狼を使って表現しているのが、オープニングである
そこでは、ハンターのジェレミー・レナーが狼を殺すのだ
狼という生き物は、ネイティブアメリカンにとって、とても神聖な生き物なのだが、
かつて、ワイオミング州で暮らす牧場主たちによって「家畜を殺される」という理由で全滅されてしまったという
しかし、近年になってネイティブアメリカンたちのたっての願いで、再び狼たちをワイオミング州に住まわせることになったのだが、未だに、牧場主たちは反対しているのだという
(Wikipedia 調べ)
その中で、ジェレミー・レナーは、狼やプーマが増えすぎて家畜を食い荒らさないように、バランスを取る仕事をしているのだ
ネイティブアメリカンの女性と結婚し、息子はハーフというジェレミー・レナーは、その土地で長く生きていくために、白人たちと、ネイティブアメリカンたちの間に立って、バランスを取る役割をしているのだ
しかし、その土地の複雑さを知らず、仕事のために強制的に連れて来られた白人たちは、その「絶望しかない土地」に馴染めず、フラストレーションが溜まっていき、一触即発の状態にまでなってしまう
インディアン居留地の中で起きた事件は、よそ者のFBIにしか捜査権がなく、
その融通の利かなさが事態をさらに悪化させていく
これは、絶望という土地に強制的に追いやられ、その後、全く見放されてしまったネイティブアメリカンたちを白人の目を通して描かれ、彼らの実情を知るための映画であり
そのガイド役として、MARVELコンビが主役に選ばれたのだろう
多様性が叫ばれる時代の中で、未だに忘れられ、目を背けられている人たちがそこにはいるのだ
エンドロール前に字幕で語られた現実には、とても胸が痛くなった
低予算で製作され、小規模公開されたこの映画は、アメリカで異例のヒットとなり、拡大公開されたという
その事実だけでも、この映画を作った意義があったと思う
元々、アメリカの土地は彼らのものだったはずだ
そのことを、1人でも多くの人が思い出せると良いと思う
分からなくて当たり前
やるせない怒りや悲しみの風景
アメリカ原住民の保留地で起こった少女死亡事件を追うというサスペンスですが、原住民の置かれた厳しい環境や、子を失った親の心情も描かれ、社会派ドラマとしても人間ドラマとしても観ることが出来ました。
また、知的で冷静に的確に獲物を仕留める、主人公のハンター役のジェレミー・レナーが格好良い。
なおかつ、怒りや悲しみを内に秘めた表情など、演技も素晴らしかったと思います。
犯人を追うサスペンス展開の方も、クライマックスの構成など、とても緊迫感がありました。
事件の真相となる部分は意外性があるわけではないのですが、こういった構成で提示し、緊迫感のある容赦ない銃撃戦へ続く流れは圧倒されました。
真相は意外性はありませんが、やはり非情で残酷だと思います。
犯人に報いを与えても癒やされることのない子を失った親の心、把握されない原住民の女性の失踪者達、ラストはやるせなさが残ります。
荒涼とした雪原の風景も印象的で、やるせない怒りや悲しみの心象風景のように感じました。
アメリカの闇を抉った傑作!
観るべき映画
大好きな映画の一つです。
アメリカ・ワイオミング州のネイティブ・アメリカン保留区ウインド・リバーで実際に起きた凄惨な事件を映画化したもの。
なんというか… あまりに悲惨で、酷くて、まだ根深いアメリカの先住民問題と、冬の夜は-30℃という厳寒の雪に閉ざされたその町の閉塞感に息が苦しくなる内容だけど、観てよかったと思う。
主役のジェレミー・レナーの表情がすごくいい。
ハンターとしてとても男らしい姿とストイックで頼もしい存在感を醸し出しつつ、その心にはある深い悲しみを抱えている様がよく伝わって、そして彼はとても心優しい人なのだとわかります。
(そういえば「メッセージ」の彼も名助っ人役でいい味出してた)
犯人たち・・・逮捕じゃなくていい、どうか殺して・・・
誰もがそう思うでしょう。
ここほんとにアメリカだよね?司法はどうなってるの?どうしてこんなにも警察の目も行き届いてないの?FBIも渋々来るような所なの??
繁栄大国アメリカ、その中に現代社会から文字通り置き去りにされている地域に、アメリカの深い闇の1つを見せつけられる。
正義とは?人権とは?
CIA新米エージェント役のエリザベス・オルセンとジェレミーはアベンジャーズでも一緒でしたが、今回はかなりハードでシリアスな内容での共演。彼女も上手かった。
最初は頼りなかったのに、すごい成長ぶりというか、実はとても強い人だった。
ラスト近く。重傷の彼女を見舞った時のジェレミー・レナーのセリフが感慨深い。
「私は運が良かった」という彼女に応えた言葉が忘れられない。ズン!と響いた。
ぜひ、映画の中で聞いてください。
すごかった
子どもを亡くした者どうしの共感がなんとも胸を打つ。インディアンのお父さんが「オレはもう戦う気力がない」と言っていたのが「がんばれ」とは口が裂けてもいえないようなただならぬ空気だった。奥さんは鬼のようにリストカットしていて地獄のようだった。
銃撃戦がアクション映画的な演出が全く無くて、かっこよくもなんともないリアルな殺し合いだった。突っ立ったまま撃ち合う。
最後の制裁も素晴らしかった。彼女が事件に巻き込まれる様子がひどくリアルでありえそうで恐ろしかった。
現状ある全ては自分の選択によるものだ、というメッセージが半端に語られたらうざいばかりなのだが、ここまでの作品で突きつけられると納得せざるを得ない。
映画館が混んでいて、前から二列目で、映画館の冷房が効きすぎて寒くて、ウィンドリバーに連れて行かれたような気分だった。見終わって体調が悪くなった。
強さの物語だと思います
良い…
他人事ではない哀しみ
ジェレミー・レナーかっこいいですね
投げかけられる作品
カウボーイを●すのが俺たちのヒーロー
カンヌ映画祭〈ある視点部門〉監督賞受賞作のクライム・サスペンス(バディもの)。
今作品は、ラジオ番組の町山智浩の映画評で知ったのだが、その際の前段階の予習が非常に重要だということを再確認させられた内容である。広大なアメリカの土地ならではの、西部開拓時代から進歩が止まってしまっている場所での非人道的な振る舞いとそれを根付かせてしまっている経済的、歴史的背景を、逆に自然の雄大さとの比較で際立たせている。
それにしても今作はアメリカの国の成り立ちや法律、歴史をある程度勉強していないと、ストーリーの深みが読み取れないのではないだろうか。その辺りをスルーしてしまうと、サスペンスドラマとして大事な“理由付け”が薄まってしまい、正に“アメリカン”コーヒーな訳だ。そうなると日本のテレビでの『2時間ドラマ』の域を出ず、単純に故人の怨恨が起因という形で終わってしまう。
アメリカは州そのものが国であり、国達が集まった“合衆国”という成り立ちである。そしてその州を跨がる事象だけの法律を連邦法に定め、その他の法律は州毎に制定している。今作品の舞台はワイオミング州にあるウィンドリバーインディアン保留地であり、そこは連邦の管轄であるのだが、連邦法では強○罪は制定されていない。そして正に征服され虐げられた先住民達の強制移住区であり、そこでは広大だが、痩せた土地に、たった6人の警察官しかいない。辺境の土地には夢はなく、『生き延びるか、諦めるか』の二者択一しか道はない。失業率、貧困率でトップランクのこの場所では、全てが死んでいるのだ。そんな中での暴行殺人事件なのである。当の先住民達ももはや先祖の儀式や矜持もズタズタに切り裂かれ、伝承が施されず、誇りも棄てられたまま、しかし気持は留まってしまっている。顔にペイントをすることさえ、もはや正統な方法が受け継がれていないからデタラメである。
そしてそれはまた、白人とて、同じだ。“ホワイトトラッシュ”も又、その境遇に苦しみ喘ぎ、その孤独を酒やドラッグで誤魔化し、現実を直視できずにいる。『酔って、孤独で、そして暴行』という悪循環だ。
プロット展開として、ミスリードを設ける意味合いで、土地の鼻つまみを登場させ、しかし実はこの土地から資源を奪っているエネルギー省管轄の警備員という連中に視点を変えていくのだが、そこの展開はもっと二転三転が欲しかったし、今の映画ではそれをやっている作品は枚挙に暇がない。勿論、『事実に基づく』作品だから、100%フィクションにはできないのだけど、しかしもう少しドラマティックさをストーリーに盛り込んでも良かったのではと、一寸残念だ。例えば、もっと鬼畜でサイコパスな登場人物が出て、このアメリカの法律網の盲点を予め理解しているとか、死んだ女の子は暴行死ではなく、直接死因は冷気を肺に吸い込んだことによる、窒息死であることも、もう少しそこをトリックに使うとかは、織込んでも良かったのではと思うのだが、そうなると意味合いが変わってしまうのだろうな。推理モノではなく、あくまでもヒューマン、そして現在社会問題を投影したテーマなのだろうから。
FBI捜査官のTバック、そして、女の子のTバック、その辺りに、もう一つのテーマである男女間の意識の違い、世代間の意識の違い、そして女性の社会的参画のあり方みたいなものを対比させるギミックとして、細かい小ネタも散りばめられている点も興味深い作品に仕上がっていた。きちんとカタルシスで帰着したところは制作者の良心として、受容れやすいのではないだろうか。現実はこんな“必殺仕事人”はいないけどね・・・
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