「誠実で静か」ウインド・リバー myshaさんの映画レビュー(感想・評価)
誠実で静か
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脚本が優れており、台詞も物語も無駄が無い。描写は抑えが効いて重い。
かつて娘を失った主人公が今娘を失った友人に語りかける言葉
“時が経っても癒されはしない、でも痛みには慣れる。愛する者を失うと人は変質しもう元には戻れない。他の何ものも欠落を埋める事はできない。しかし事実を受け入れれば心の中で愛する者に会える。痛みから逃げては駄目なんだ、逃げれば思い出を失う。苦しめ、とことん悲しむんだ。”
耳障りの良い甘い慰めを与える事もできるのに、そうはしない誠実さ。
ただ主人公は“忘れない道”を選んだが為に失った娘と幾度も出会い直す事になる。
雪中で発見した若い女性の遺体に娘を見、その女性を死に追いやったであろう犯人達の暴力に、娘が残した冬服を着て事件を追うFBIの女性の姿に永遠に失った娘を見出す。
彼の妻は「縄で引きずられても(パインデールには)行かない」と言う。彼女も休み無く娘を思い己を呪い続けている。
監察医は“この娘の死因は肺出血だ、他殺とは言えない”との主張を曲げない。暴行とレイプの跡があるので、彼は(これは殺人である)と考えている。でもたとえ立件に有利に働かないとしても不正確な所見を述べる事はしない。
部族警察長は辛い歴史と不遇を受け入れながら言葉少なく任務を遂行している。
捜査のため軽装で飛び込んで来た南国のFBI捜査官も、終盤には事件と接して得た怒り悲しみを黙って噛み締める。
スノーモビルでの追跡や銃撃戦もあるが、全てが静かに進行する。
半旗を揚げて火を焚いていた人々は何を悼んでいたのだろうか。
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